
「また痛みが出てしまった…」
痔の症状に悩む方から、こんな声をよく聞きます。薬を使っても、なかなか改善しない。その背景には、毎日の食事習慣が深く関わっていることが少なくありません。
痔は日本人の3人に1人が抱えているともいわれる、非常に身近な疾患です。いぼ痔(痔核)・切れ痔(裂肛)・あな痔(痔ろう)のいずれも、便秘や下痢といった排便の乱れが症状を悪化させる大きな要因となります。そして、その排便の状態を左右するのが、ほかでもない日々の食生活です。
消化器外科・肛門外科の医師として多くの患者さんを診てきた経験から、食事と痔の関係、そして症状を悪化させないための食習慣について、できるだけわかりやすくお伝えします。
辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科
食生活の見直しは痔の症状を落ち着かせる一助になることがあります。ただし、すでに症状がある場合は食事改善と並行して専門医への相談をお勧めします。当院では肛門外科専門医が対応しています。
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なぜ食生活が痔に影響するのか
まず、根本的な話から始めましょう。
痔が悪化する最大の原因は、肛門への過剰な負担です。便秘で硬い便を無理に出そうといきむ、あるいは下痢で勢いよく便が出る…どちらも肛門の粘膜や血管に大きなダメージを与えます。
腸内環境が乱れると、便の状態が不安定になります。善玉菌が減り、悪玉菌が増えると、腸のぜん動運動が低下して便秘になりやすくなります。逆に腸が過剰に刺激されると下痢を繰り返す。この悪循環が、痔の症状を慢性化させていくのです。
つまり、食事で腸内環境を整えること=肛門への負担を減らすこと、という図式が成り立ちます。食生活の改善は、痔の治療と並行して取り組むべき、非常に重要なアプローチです。
痔に良い食べ物・積極的に摂りたい栄養素
食物繊維〜不溶性と水溶性のバランスが鍵
食物繊維は、痔の改善において最も重要な栄養素です。
食物繊維には「不溶性」と「水溶性」の2種類があり、それぞれ異なる働きをします。不溶性食物繊維は水分を吸って膨らみ、便の量を増やしながら腸のぜん動運動を刺激します。水溶性食物繊維は水に溶けてゲル状になり、便をやわらかくする効果があります。この2種類を半々程度で摂取することが理想的とされています。
不溶性食物繊維が豊富な食品
- 玄米・雑穀米・ライ麦パン・全粒粉パン
- れんこん・さつまいも・じゃがいも・ブロッコリー
- えのき・しいたけ・しめじ・エリンギなどのきのこ類
- 納豆(食物繊維に加え、善玉菌の栄養にもなる)
水溶性食物繊維が豊富な食品
- 昆布・めかぶ・わかめなどの海藻類
- ごぼう・にんじん・大根・玉ねぎ・キャベツ
- 山芋・おくら・モロヘイヤなどのネバネバ食材
- あんず・いちじく・プルーン・りんご
和食中心の食事は、これらの食物繊維を自然と摂取しやすい食スタイルです。「和食が痔に良い」といわれる理由は、まさにここにあります。
乳酸菌〜腸内環境を整える善玉菌の代表
乳酸菌は悪玉菌の繁殖を抑え、腸内細菌のバランスを整えてくれます。
腸のぜん動運動を促す作用もあり、便通の改善に直結します。ヨーグルトや乳酸菌飲料はもちろん、味噌・しょう油といった発酵食品に含まれる植物性乳酸菌も効果的です。植物性乳酸菌は胃酸にも負けず、生きたまま腸に届きやすいという特徴があります。
ただし、乳酸菌は菌の種類によって相性があります。1週間ほど試してみて効果が感じられない場合は、別の種類の製品に変えてみることをお勧めします。
ビタミンP〜毛細血管を強くする果物の力
みかん・レモン・グレープフルーツなどの柑橘系果物に豊富に含まれるビタミンPは、毛細血管を強くする働きがあるとされています。痔の原因のひとつであるうっ血の予防に役立つ可能性があります。また、バナナやアセロラは食物繊維も豊富で、腸の調子を整えるのに役立ちます。
オレイン酸・オリゴ糖〜腸を動かすサポーター
オレイン酸はオリーブオイルやアボカドに多く含まれる不飽和脂肪酸で、腸の潤滑を助けて便の排出をスムーズにする効果が期待できます。オリゴ糖は善玉菌のエサとなり、腸内環境の改善をサポートします。玉ねぎ・バナナ・大豆などに多く含まれています。
食事改善と合わせて、現在の症状を確認しましょう
「食事に気をつけているのに症状が改善しない」という場合は、一度専門医にご相談ください。つくば市の肛門外科で診察を承っています。
痔を悪化させる食品・避けたい食習慣

アルコール〜うっ血を促進する大敵
アルコールは痔の大敵です。
飲酒によって肛門周囲の血管が拡張し、うっ血が起こりやすくなります。また、アルコールには利尿作用があるため、体内の水分が失われて便が硬くなり、便秘を招くこともあります。さらに、過度の飲酒は痔ろう(あな痔)の発症リスクを高める要因のひとつとして挙げられることもあります。
完全にやめる必要はないかもしれませんが、症状が強い時期は特に控えることが大切です。
香辛料・刺激物〜腸を過剰に刺激する
唐辛子などの香辛料は、日本人の腸ではほとんど吸収されず、便としてそのまま排出されます。そのため、肛門を直接刺激し、炎症を悪化させる可能性があります。
一方、わさびは体内でほぼ完全に吸収されるため、便への影響は少ないとされています。同じ「辛い食べ物」でも、種類によって腸への影響は大きく異なります。キムチや激辛料理が好きな方は、痔の症状が出ている時期は特に注意が必要です。
脂質の多い食事・加工食品
脂質の多い食事や加工食品は、腸内の悪玉菌を増やし、腸内環境を乱す原因になります。便の状態が不安定になりやすく、下痢や便秘を繰り返すリスクが高まります。揚げ物・ファストフード・インスタント食品などの摂りすぎには注意しましょう。
水分不足〜便を硬くする見落としがちな要因
水分が不足すると、便が硬くなって排便時に肛門に大きな負担がかかります。特に裂肛(切れ痔)の方は、硬い便が直接の原因となるため、水分補給は治療と同じくらい重要です。1日に1.5〜2リットル程度の水分摂取を目安にしてください。
便通を整える食事の実践的なポイント

朝食をしっかり食べる〜胃結腸反射を活用する
朝、空の胃に食べ物が入ると「胃結腸反射」が起こります。
眠っていた腸が動き出し、夜のうちに溜まっていた便を直腸へと送り出してくれます。この反射を利用することで、自然な排便リズムが生まれます。朝食を抜く習慣がある方は、まずここから見直してみてください。冷たい水や牛乳を飲むだけでも同様の効果が期待できます。
分食という考え方〜下痢体質の方に有効
下痢を繰り返す方には「分食」という方法が有効です。
通常3回の食事を5〜6回に分けて少量ずつ食べることで、胃に大量の食べ物が一度に入ることを防ぎ、腸の過剰な反応を抑えられます。早食いの習慣がある方も、分食によって食事ペースを調整しやすくなります。
夜遅い食事を避ける
就寝直前の食事は、睡眠中の胃腸に大きな負担をかけます。消化が十分に行われないまま腸に内容物が送られると、腸内環境が乱れる原因になります。夕食は就寝の2〜3時間前までに済ませることが理想的です。
下痢のときの食事〜「ABCD」を意識する
下痢が続く場合は、お粥・白身魚・湯豆腐など消化に良いものを選びましょう。
「下痢のABCD」という考え方があります。Apple(りんご)・Banana(バナナ)・Carrot(にんじん)・Diarrhea(下痢)の頭文字で、これらの食材には整腸作用があるとされています。りんごやバナナ、にんじんは下痢のときにも取り入れやすい食材です。
食事改善だけでは限界がある場合〜専門医への相談を

食生活の改善は、痔の予防・悪化防止において非常に重要です。
しかし、症状が進行している場合や、食事を見直しても改善が見られない場合は、専門医による診察と適切な治療が必要です。「恥ずかしい」「大したことない」と放置してしまうと、症状が慢性化・重症化するリスクがあります。
痔の治療には、症状の種類や程度に応じたさまざまな方法があります。いぼ痔(痔核)に対しては、メスを使わずに注射で治療するALTA療法(痔核硬化療法)や、結紮切除術などが選択肢として挙げられます。切れ痔(裂肛)には内括約筋側方皮下切開術、あな痔(痔ろう)には切開開放術など、それぞれの状態に合わせた治療法があります。
「手術は怖い」と感じる方も多いですが、日帰り手術に対応しているクリニックも増えており、仕事や家庭の都合で入院が難しい方でも治療を受けやすい環境が整ってきています。
また、「女性だから相談しにくい」というお声もよく聞きます。女性医師が在籍しているクリニックを選ぶことで、受診のハードルを下げることができます。
まとめ〜食事と治療の両輪で痔を改善する
痔と食生活の関係を整理すると、以下のポイントが重要です。
- 食物繊維(不溶性・水溶性)をバランスよく摂取し、便の状態を整える
- 乳酸菌・発酵食品で腸内環境を改善する
- アルコール・香辛料・刺激物は控える
- 水分を十分に摂り、便が硬くなるのを防ぐ
- 朝食をしっかり食べ、自然な排便リズムをつくる
- 夜遅い食事や早食いを避ける
食事の改善は、今日からすぐに始められる取り組みです。
ただし、症状が強い場合や長期間続く場合は、食事改善だけでなく専門医への相談が不可欠です。痔は適切な治療を受ければ改善できる疾患です。「恥ずかしい」という気持ちを乗り越えて、ぜひ一歩踏み出してみてください。
辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科クリニックでは、いぼ痔・切れ痔・あな痔の3種類すべてに対応した日帰り手術を実施しています。院内に専用の手術室を備え、プライバシーに配慮した環境で治療を受けていただけます。女性医師も在籍しており、女性の方も安心してご相談いただけます。入院が必要な場合は辻仲病院柏の葉と連携してフォローアップを行う体制も整えています。
痔の症状でお悩みの方、食事改善と合わせて専門的な治療を検討されている方は、ぜひ一度ご相談ください。
▶ 辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科クリニックの痔日帰り手術について詳しくはこちら
茨城県つくば市竹園
辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科
痔日帰り手術・大腸内視鏡・胃内視鏡・血便緊急外来
月〜土 9:00〜11:30 / 14:00〜16:30(日曜定休)
著者情報
院長
森田 洋平
Youhei Morita

略歴
2007年
杏林大学卒業、東京北社会保険病院で初期臨床研修、つくばメディカルセンター病院で外科研修、埼玉医科大学国際医療センターで消化器外科フェロー。その後、消化器内視鏡、肛門外科を専門とし辻仲病院柏の葉で勤務。勤務の傍ら、聖路加国際大学公衆衛生大学院で内視鏡の検査情報を効率的に伝えるための研究を行いMaster of Public Health(MPH)を取得。
資格
- 日本消化器内視鏡学会専門医
- Master of Public Health (MPH)
所属学会
- 日本外科学会
- 日本消化器外科学会
- 日本消化器内視鏡学会