便潜血陽性とは?

医療機関で「便潜血陽性」と判定されたことがある方がいるのではないでしょうか。しかし、どのような状態かよくわからない方もいるでしょう。 便潜血検査をおこなうと、陽性か陰性かがわかります。便潜血検査とは、おもに大腸がんの可能性の有無を調べる検査です。 便の中に血液が混じっていれば陽性、混じっていなければ陰性という結果が出ます。肉眼ではなかなか確認するのが難しい微量の血液も検出できるため、大腸がんなどの疾患の早期発見に貢献できます。 海外の臨床研究では、便潜血検査が陽性の場合に大腸内視鏡検査を行うことで、大腸がんによる死亡を減らすことができることが臨床研究で示されています。 ただし、100%信頼できるものとは限らないのが便潜血検査です。 なぜなら、大腸がんは必ずしも出血をともなう疾患ではないからです。 そのため、便潜血陰性だったとしても「大腸がんではない」とは言い切れません。したがって、目で見て出血が見える、便秘や下痢など便性状が変わるなどの場合は、大腸カメラで検査をおこない、より詳しく大腸をみていく必要があります。
便潜血陽性の原因となる疾患
便潜血陽性を調べる理由は大腸がんを発見することです。 大腸がんとは、大腸(結腸・直腸)に発生するがんです。 腺腫と呼ばれる大腸ポリープががん化して発生するものと、正常な粘膜から発生するものに分かれます。 日本人の場合、S状結腸と直腸にがんができやすいとされています。大腸の粘膜に発生した大腸がんは大腸の壁に侵入し、大腸の壁の外まで広がり、腹腔内に腹膜播種(悪性腫瘍が内臓の内側から臓器を侵食し、腹膜に飛び散って付着する状態)を引き起こすのが特徴です。 また、大腸の壁の中を流れるリンパ液を経由してリンパ節へ転移したり、血液の流れに乗って肝臓や肺などに遠隔転移したりするケースがあります。 大腸がんの初期段階では自覚症状がほとんど現れません。
大きな大腸ポリープについても出血の原因になりえます。大腸ポリープ、特に腺腫と呼ばれる腫瘍性のポリープは大腸がんの前病変として知られています。大腸内視鏡検査を行う際に30-50%程度の確率で見つかります。大腸ポリープを切除することで将来の大腸がんの発生を予防できることが知られており、便潜血検査で陽性となるようなポリープを発見して治療することも重要です。

便潜血検査陽性の原因の多くは痔です。いぼ痔や切れ痔(裂肛)により出血をきたすためです。報告によりまちまちですが、無自覚な人も含めると1/3程度の人に痔があることが知られており、肛門からの出血で便潜血検査陽性となることが多いです。
便潜血陽性の方が受けるべき検査

大腸内視鏡検査
便潜血検査の結果、陽性と判定された場合は、精密検査を受けなければなりません。精密検査では、大腸カメラをおこなう必要があります。便潜血検査は「出血を見つける検査」ではなく、「大腸内視鏡検査をやるべき人見つける検査」だからです。 大腸カメラでは、肛門から内視鏡を挿入し、腸の内部を直接観察する検査です。なかなか発見しにくい小さな病変や出血の状態などを詳しく調べることが可能です。

肛門鏡検査
肛門鏡検査も重要な検査です。便潜血検査は大腸がんを見つけるためのスクリーニング検査(大腸内視鏡検査をすべき人を見つける検査)ですので、大腸内視鏡検査を行う前提があるものの、大腸内視鏡検査では肛門診察が十分ではありません。いぼ痔や切れ痔が心配な場合は、肛門科医師による肛門鏡診察を行う必要があります。よく、「便潜血検査陽性で大腸内視鏡検査でいぼ痔を指摘された」とおっしゃる方がいますが、いぼ痔の診断には肛門科医師の行う肛門鏡という大腸内視鏡検査と別の検査が必要です。
便潜血陽性になった後の治療方法
大腸ポリープ切除
大腸内視鏡検査を始めて行った方については、30-50%程度の確率で大腸ポリープが見つかります。大腸ポリープを切除することで将来の大腸がんのリスクが減ることが知られています。当院ではクリーンコロンと呼ばれる、小さな大腸ポリープも徹底的に切除する方針をとっています。クリーンコロンが達成されると、86%の大腸がん発生を予防できることが国内の臨床研究で示されています。これを達成するために、内視鏡AI、無痛内視鏡検査、当日大腸ポリープ切除を基本方針としています。詳しくは下記の記事をご参照ください。
大腸がん
大腸がん検診で便潜血検査陽性の場合に大腸がんが見つかる可能性は3-5%程度とされています。便潜血検査陽性が1年目の場合は、早期大腸がんとして見つかることが多いです。早期大腸がんの場合は98%の確率で5年間以上生存できることが知られています。大腸がん以外でなくなる方も世の中にはいらっしゃるため、一般的な方と年齢などを合わせて比較すると、早期大腸がんで見つかった場合は大腸がんがない方と同等の寿命が得られることが知られています。早期大腸がんの場合は、内視鏡治療や腹腔鏡治療で済むことも多いです。便潜血検査陽性の際に、大腸内視鏡検査を受けずに大腸がんが見つかった際は、大腸がんによる死亡率が4倍に増えることが知られています。これは、早期癌ではない段階で見つかる方が多くなることを示しています。詳しくは下記の記事をご参照ください。
便潜血陽性でお困りの方は当院までご相談ください

便潜血検査は、おもに大腸がんの可能性を調べる検査です。 もともとの設定として3-5%程度の確率で大腸がんとなる方を見つけるための検査です。 そのため、便潜血検査の結果が出たら医師の判断に従い、必要に応じて精密検査を受けましょう。 注意点としては、陰性だからといって、100%信頼できるものではない点です。 陰性の状態で精密検査である大腸カメラや大腸CT検査を受けた結果、疾患が発見されるケースはあります。 症状がある場合は、便潜検査について信じすぎないように注意しましょう。 便潜血検査について不安なことや気になることがあれば、当院までご相談ください。
当院について
当院では、鎮静剤を使用した無痛で楽に受けられる大腸内視鏡検査を行っており、便潜血を指摘され、不安に感じている方にも、多くご相談をいただいています。特に肛門科診療にも力を入れており、お尻の症状についてもご相談にもお答えできます。 「苦しい検査は避けたいが大腸がんが不安」——そんなお悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください。 AIを活用した最新の内視鏡機器と消化器領域の専門医による丁寧な検査で、安心して受けていただける環境を整えています。
結果として、当院は医療ポータルサイトで「茨城県の便潜血検査 おすすめしたい6医院」として選出されています。
こういった背景もあり、つくば市をはじめ、土浦市、牛久市、つくばみらい市、常総市、石岡市、阿見町、守谷市、龍ケ崎市のみならず、茨城県外も含めて広い地域から多くの患者様が来院されています。
よくあるご質問
便潜血検査が1回陽性だったからといって必ず受診しなけければならないわけではないですね?
便潜血検査は、大腸癌が便潜血検査で検出できる状態になってから進行して症状が出るまでに7年間かかると想定して設計された仕組みです。したがって、7年間のうちに1度でも陽性になればよいという考えのもとできているものであるため、1度でも便潜血検査が陽性であれば、大腸内視鏡検査を行うことを強く推奨します。
便潜血検査が陽性の時に放置した場合にどうなりますか?
便潜血検査陽性の時に大腸がんがある可能性は3-5%程度と言われています。これは一般的な大腸がんのリスクよりも高い状態です。必ず大腸内視鏡検査を受けましょう。便潜血検査を放置した場合は、大腸がんによる死亡率が4倍になることが知られています。便潜血検査は大腸内視鏡検査とセットになっている検査と言えます。
痔があるので、便潜血検査が陽性であっても大腸内視鏡検査は必要ないですよね?
痔があるからといって、大腸内視鏡検査を受けない理由にはなりません。便潜血検査が陽性の時に、大腸がんや大腸ポリープが見つかる可能性は、痔があるかどうかによって違いがないことが報告されています。とはいえ、明らかに肛門の病変があることもあるので、当院のような肛門専門の医療機関で相談してもらうのも良いと思います。詳しくは以下の記事をご参照ください。
大腸内視鏡検査の必要性はわかりましたが、不安があります。
大腸内視鏡検査は不安ですよね?2024年の14100人の大規模アンケートで不安についていくつか取り沙汰されているものがあります。当院では特に、鎮静剤を用いた無痛内視鏡検査や豊富な下剤の選択肢、院内での下剤内服など不安を取り除くための施策を行っております。そういった施策についての評判を評価されて、医療ポータルサイトで「茨城県の大腸カメラ おすすめしたい9医院」に選ばれています。詳しく知りたい方は下記をご参照ください。
よくあるご質問
【作成・監修】
辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科クリニック 院長 森田 洋平(日本消化器内視鏡学会 専門医、MPH(公衆衛生大学院))
MPHは予防医学、疫学、統計のスペシャリストの学位です。今回のような疫学的なデータを実践するスペシャリストといえます。