
「マンジャロ(チルゼパチド)で何キロ痩せられますか?」
— 肥満外来で、いちばん多くいただく質問のひとつです。
その一方で、こうしたご質問も増えています。
「筋肉は落ちないですか?」「健康的に痩せたいのですが」
— 今回はこの視点からお話しします。
目次
この記事でお伝えすること
- マンジャロで体重が減るとき、筋肉はどうなるのか— SURMOUNT-1試験の体組成データ
- 減量の「質」とは何か(脂肪と筋肉のバランス、多く痩せた人ほど脂肪の割合が高い傾向)
- 体重減少とQOL・身体活動の改善— 論文が示すこと
- 中年世代にとってタンパク質と運動がなぜ重要か
- 当院の基本サポート:食事・タンパク質・運動についてのアドバイス
- さらにサポートを希望される方へ:連携する運動・食事の専門家への相談(初回無料)
「マンジャロを使えば、しっかり痩せられる」— そんな話を見聞きして、期待を寄せている方もいらっしゃるかもしれません。確かに、臨床試験では15〜21%程度の体重減少が報告されており、数字だけ見れば魅力的に感じられるのも無理はありません。
ただ、私が診察室でもう一歩踏み込んでお伝えしたいのは、「何キロ痩せるか」ではなく、「どう痩せるか」「その先の健康や生活のしやすさはどうなるか」 という点なのです。
当院——辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科クリニックのメディカルダイエット(肥満外来)にご相談いただく方の多くは、「ただ体重を落としたい」だけでなく、健康的に痩せたい、健康と減量を両立させたい、活動度を上げたいとおっしゃいます。特に40〜60代の方ほど、見た目の体重より「階段が楽に上れるか」「疲れにくいか」といった長期的なQOL(生活の質)を気にされる傾向があります。
また、メディカルダイエットは自費診療です。月々の費用もかかり、続けるには時間と覚悟が必要です。せっかく費用をかけて取り組むのであれば、しっかり効果を出してほしい。それを実現するためには、無理しない程度の努力で筋力を維持する必要があると考えています。
もちろん、薬剤だけで十分な効果が出ることもありますが、長期的に効果を強く出すためにはポイントがあります。
本記事では、マンジャロの大規模臨床試験 SURMOUNT-1 における体組成データを中心に、論文が示す事実と、当院のメディカルダイエットにおけるサポートの考え方について解説します。
メディカルダイエットで大切なのは「体重」だけではない
肥満は「脂肪の病気」である
肥満は、単に体重が多い状態ではなく、脂肪の過剰蓄積が健康リスクを高める慢性疾患と考えられています。糖尿病、高血圧、脂肪肝、睡眠時無呼吸など、さまざまな疾患との関連が知られています。
したがって大切なのは「何キロ痩せたか」だけでなく、体の中の脂肪がどれだけ減ったかです。体重計の数字だけでは、それは分かりません。
減量には脂肪と筋肉の両方が含まれる
「体重が減った」と聞くと、その分だけ脂肪が落ちたように思いがちです。けれども実際には、減った体重がすべて脂肪というわけではありません。一般的な減量では、落ちた体重の約75%が脂肪、残りの約25%は筋肉などの除脂肪量に相当するとされています。
筋肉は筋力の源であり、基礎代謝や日常動作にも深く関わります。過度に筋肉が減ると、長期的な筋力低下やQOLの低下につながりうるため、減量の「質」が問われます。
SURMOUNT-1の体組成データ—マンジャロで何が減るのか
体組成を詳しく調べた追加研究
SURMOUNT-1試験は、マンジャロ(チルゼパチド)の効果を検証した大規模な臨床試験です。この試験の参加者のうち160名を対象に、72週間(約1年半)で体重・脂肪量・筋肉量がどう変化したかを詳しく調べた研究が2025年に発表されました(Look M, et al.)。
本記事で紹介する数値は、この研究に基づくものです。
| 項目 | マンジャロ群 | 薬なし群 |
|---|---|---|
| 体重 | -21.3% | -5.3% |
| 脂肪量 | -33.9% | -8.2% |
| 筋肉量(除脂肪量) | -10.9% | -2.6% |
マンジャロ群では、薬なし群と比べて体重・脂肪量・筋肉量いずれも明らかに減少しました。特に脂肪量の減少幅が大きいことが分かります。
では、落ちた体重のうち、どれだけが脂肪で、どれだけが筋肉だったのか
— これが本記事の核心です。
| 群 | 脂肪が占める割合 | 筋肉が占める割合 |
|---|---|---|
| マンジャロ群 | 約75% | 約25% |
| 薬なし群 | 約75% | 約25% |
減量が大きい人ほど、脂肪の割合が高い傾向
さらに重要なのが、マンジャロ群を減量の大きさで3つのグループに分けて比較した結果です。
表3. 減量の大きさ別—落ちた体重に占める脂肪の割合(マンジャロ群)| 72週間の減量 | 脂肪が占める割合 | 筋肉が占める割合 |
|---|---|---|
| 15.3kg以下 | 70% | 30% |
| 15.3〜25.9kg | 73% | 27% |
| 25.9kg超 | 76% | 24% |
この表から読み取れるのは、多く痩せた人ほど、落ちた体重に占める脂肪の割合が高くなる傾向がある、ということです。逆に言えば、しっかり減量できた人ほど、減量の「質」— 脂肪中心の減量— に近づいている可能性が示唆されます。
ただし、これはあくまで研究データ上の傾向であり、当院での治療でも同様の結果が得られるとは限りません。個人差も大きい点にご留意ください。
読者が誤解しやすい点—「割合」と「絶対量」は別
ここで、ぜひ知っておいていただきたいことがあります。それは、「割合」と「絶対量」は別物だということです。
- 割合:多く痩せるほど、落ちた体重のうち脂肪が占める割合は高くなる傾向がある
- 絶対量:減量が大きいほど、失われる筋肉の量も多くなる
たとえば、10 kg痩せた場合と25 kg痩せた場合では、筋肉の「割合」は後者のほうが低くても、25 kg痩せた場合のほうが筋肉の「絶対量」は多く失われている可能性があります。
だからこそ、特に中年以降の方ほど、タンパク質摂取と運動への配慮が重要になります。これは後ほど詳しくお伝えします。
SURMOUNT-1本試験が示したQOL・身体活動の改善
体組成の話だけではありません。SURMOUNT-1本試験全体では、健康アンケート(生活の質=QOLを評価する調査) において、マンジャロ群は薬なし群と比べて、身体の動きやすさや日常動作が改善したと報告されています。
筋肉量が減少しているにもかかわらず、患者自身が感じる身体の動きやすさは改善した— 体重や脂肪の減少が、日常のしやすさにつながった可能性が考えられます。
私の臨床現場でも、「ただ痩せたい」より**「痩せて、動ける体になりたい」「健康にコミットしたい」**とおっしゃる方が確実に増えています。論文のデータは、体重を減らすことと、活動度・QOLの向上が両立しうることを示唆していると私は考えています。
なぜ中年世代ほど「筋力・タンパク質」が重要なのか
加齢と筋肉量の低下
年齢とともに、筋肉量は自然に減少していきます。加齢に伴う筋肉・筋力の低下は、転倒や骨折のリスク、日常生活のしにくさと深く関係しています。
長期的なQOLを考えるとき、筋力量は非常に重要な指標です。階段の昇降、買い物かごを持つ、長時間の立ち仕事— これらはいずれも筋力と密接に関わっています。
マンジャロで食欲が落ちたときの落とし穴
マンジャロをはじめとするGLP-1系薬剤は、食欲を抑える作用があります。そのため治療中は全体の食事量が減りやすくなります。
ここに落とし穴があります。食べる量が減ると、タンパク質の摂取量も一緒に不足しやすいのです。総カロリーだけを気にしていると、「痩せているのに筋力が落ちた」「疲れやすくなった」という経験につながることがあります。
薬で「楽に痩せる」一方で、栄養、とくにタンパク質への意識はむしろ高まる。 これが臨床現場での実感です。
論文が示す方向性—生活習慣介入も組み込まれていた
SURMOUNT-1試験では、薬剤投与に加え、週150分以上の身体活動といった生活習慣介入も組み込まれていました。つまり論文の結果は「薬だけ」の効果ではなく、薬と生活習慣の組み合わせの成果でもあります。
薬だけに頼り切らず、運動と栄養を組み合わせることの重要性は、エビデンスの面からも支持されています。
「せっかく費用をかけるなら」— 質の高い減量を目指す
つくばでマンジャロを処方している当院の肥満外来では、マンジャロの月額費用は2万円台〜です。正直なところ、続けるほどにそれなりのご負担になります。
だからこそ、私は患者さんにいつも次のようにお伝えしています。
「とにかく数字を落とす」だけでなく、脂肪を中心に減らし、筋力とQOLを守り、活動度を上げる減量を目指しましょう。
SURMOUNT-1の体組成研究は、減量の「質」— 脂肪と筋肉のバランス— にも目を向けるべきだという示唆を与えてくれます。同時に、本試験のQOLデータは、健康にコミットした減量が、日常のしやすさにつながりうることを示しています。
もちろん、過度な食事制限や、続けられないハードな運動を無理に勧めるつもりはありません。大切なのは、現実的で、日常に取り入れられる範囲での最大化です。
当院でのサポート
消化器専門クリニックとしての強み
当院は胃と大腸内視鏡・肛門外科クリニックとして、日々消化器疾患に向き合っています。マンジャロをはじめとするGLP-1系薬剤では、飲み始めの時期に、吐き気や下痢、嘔吐といった消化器症状が起こることがあります(臨床試験では悪心12〜24%、下痢12〜22%、嘔吐2〜13%と報告)。お腹の不調は、毎日の生活に直結するつらさです。
実際に、他院でマンジャロを開始した後に消化器症状でお困りになり、当院にご相談にいらっしゃる方も少なくありません。副作用で治療を中断するとリバウンドのリスクが高まります。副作用のコントロールこそが、メディカルダイエットを継続し、質の高い減量を達成するための鍵だと私は考えています。
食事・タンパク質のアドバイス
マンジャロの処方と医学的フォロー — これが当院メディカルダイエットの基本です。薬剤の管理のみならず、食事面や運動の目安の実践的な提案を行っています。
具体的には、次の2点をお渡ししています。
- 1日のタンパク質摂取の目安
- 高タンパクで、コンビニでもサッと食べられる食材リスト
マンジャロで食欲が落ちたとき、「何を食べればよいか分からない」という声をよく耳にします。理論だけでなく、今日から手に取れる選択肢を渡すことで、タンパク質不足、ひいては筋力の低下のリスクを減らしたい— それが当院の方針です。
マンジャロの効果を最大限にしつつ、健康的に痩せてほしい、この両立を目指しています。
運動・体組成のサポートを希望される方へ
マンジャロの治療は、薬剤の処方と医学的フォロー、運動、食事アドバイスだけでも進められます。
運動・食事面でもう一段手厚いサポートを希望される方には、茨城県内(守谷・つくば・研究学園)のパーソナルジム fan’s へつながる導線をご案内しています。運動指導や食事面のフォローを専門家にお任せしたい方に向けた提携で、当院からの紹介には特典もあります。
体重だけでなく脂肪量や筋肉量の変化を数値で追いたい方には、fan’sジムでのInBody(体組成計)も選択肢のひとつです(2026年7月〜導入予定)。
fan’s連携の詳細・料金・体験談は、別記事でご紹介する予定です。
まとめ
本記事の要点を3点にまとめます。
- マンジャロは強力な減量効果がある。 SURMOUNT-1本試験では身体機能(QOL)の改善も報告されている。
- 体組成の観点では、減量の質が重要。 落ちた体重の約75%が脂肪、約25%が筋肉。多く痩せた人ほど脂肪の割合は高くなる傾向があるが、筋肉の絶対量のケアも必要。
- 当院ではマンジャロの医学的フォローと看護師による食事アドバイスを基本に。 運動・体組成のさらなるサポートを希望される方には、fan’sへの導線もご案内しています(詳細は別記事予定)。
「健康的に痩せたい」「活動度を上げたい」「せっかく費用をかけるなら質の高い減量を」— そうお考えの方は、ぜひ辻仲つくばのメディカルダイエット(肥満外来)へご相談ください。つくば市はもちろん、守谷市・研究学園からもお気軽にお越しください。
よくある質問
減量の一部に筋肉(除脂肪量)が含まれることは事実です。ただし、SURMOUNT-1のデータでは、マンジャロによる減量の構成比は一般的な減量と同程度の比率でした。「筋肉だけが異常に落ちる」わけではありません。タンパク質摂取と運動で配慮することが重要です。
はい。当院ではマンジャロの処方と医学的フォロー、看護師による食事アドバイスを基本としており、運動を無理に勧めることはありません。運動・食事面のサポートを希望される方には、fan’sとの連携をご案内しています(詳細・特典は別記事でご紹介予定)。
マンジャロを肥満治療目的で用いる場合、国内では承認外使用のため自費診療となります。なお、BMIや疾患などによっては、マンジャロ(ゼップバウンド)、ウゴービなどのGLP-1製剤も保険適応になることがあります。当院受診後に保険適応の可能性がある場合はその旨をお伝えするので、ご自身が保険適応かわからない場合でもご相談いただけます。
マンジャロは初回は原則対面診察ですが、2回目以降はオンライン診療が可能な場合があります。詳しくはオンライン肥満外来のご案内をご覧ください。
当院では測定できません。2026年7月から連携ジムfan’s(守谷・つくば・研究学園)で導入予定で、減量の「質」を数値で追いたい方向けの選択肢です。詳細は別記事でご紹介する予定です。
茨城県つくば市竹園
辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科
マンジャロにご興味のある方は、まずはお気軽にご相談ください。
月〜土 9:00〜11:30 / 14:00〜16:30 日曜休診
著者情報
院長
森田 洋平
Youhei Morita

略歴
2007年
杏林大学卒業、東京北社会保険病院で初期臨床研修、つくばメディカルセンター病院で外科研修、埼玉医科大学国際医療センターで消化器外科フェロー。その後、消化器内視鏡、肛門外科を専門とし辻仲病院柏の葉で勤務。勤務の傍ら、聖路加国際大学公衆衛生大学院で内視鏡の検査情報を効率的に伝えるための研究を行いMaster of Public Health(MPH)を取得。
資格
- 日本消化器内視鏡学会専門医
- Master of Public Health (MPH)
所属学会
- 日本外科学会
- 日本消化器外科学会
- 日本消化器内視鏡学会
【参考文献】
SURMOUNT-1試験におけるマンジャロの体重減少効果(本試験) 論文名: Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity. 著者: Jastreboff AM, Aronne LJ, Ahmad NN, et al. 掲載誌: N Engl J Med. 2022;387(3):205-216.
https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2206038
SURMOUNT-1試験の体組成研究(脂肪量・筋肉量の変化) 論文名: Body composition changes during weight reduction with tirzepatide in the SURMOUNT-1 study of adults with obesity or overweight. 著者: Look M, Dunn JP, Kushner RF, et al. 掲載誌: Diabetes Obes Metab. 2025;27(5):2720-2729.
https://doi.org/10.1111/dom.16275