
トイレで便器が真っ赤に染まっているのを見て、驚いたことはありませんか?
血便は多くの方が不安を感じる症状です。特に便秘が続いているときに血が混じると、「何か重大な病気では?」と心配になるのは当然のことです。
実は、血便と便秘には深い関係があります。便秘によって硬くなった便が肛門や直腸の粘膜を傷つけることで出血が起こるケースは珍しくありません。しかし、すべての血便が一時的なものとは限らず、大腸がんや炎症性腸疾患など、見逃してはいけない病気のサインである可能性もあります。
本記事では、消化器外科・内視鏡専門医として多くの患者様を診てきた経験から、血便と便秘の関係性、その原因となる疾患、そして適切な対処法について詳しく解説していきます。
辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科
血便・便秘の症状でお悩みの方はお気軽にご相談ください
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目次
血便と便秘の基本的な理解
血便と便秘は、それぞれ独立した症状として現れることもあれば、同時に起こることもあります。まずは、これらの症状について正しく理解しましょう。
便秘とはどのような状態か
便秘とは、排便が順調に行われない状態を指します。
「毎日排便がないと便秘」と考える方もいますが、実は排便の頻度には個人差があります。医学的には、週に3回未満の排便、排便時に強くいきむ必要がある、便が硬くて出しにくい、残便感があるなどの状態が続く場合に便秘と判断することが多いです。
便秘は腹部膨満感や腹痛、食欲不振など、さまざまな不快な症状を引き起こします。さらに、硬い便が肛門や直腸を通過する際に粘膜を傷つけ、出血の原因となることがあります。
血便とは何か
血便とは、便に血液が混じっている状態のことです。
血液の色や量、混じり方によって、出血している場所や原因をある程度推測できます。便の色が鮮血の場合は肛門や直腸からの出血、暗赤色の場合は大腸や回腸からの出血、黒色の場合は胃や十二指腸からの出血が疑われます。ただし、出血量や腸の動きによって色も変わるため、一概には言えません。
目で見て分かる鮮血や暗赤色の血便だけでなく、肉眼では見えないものの便潜血検査で検出される場合もあります。大腸がんなど重大な病気の早期発見には、この便潜血検査が非常に重要な役割を果たします。
なぜ便秘と血便が関連するのか
便秘の際には、硬くなった便が肛門や直腸を通過する際に粘膜を傷つけ、出血することがあります。これが便秘と血便が関連して起こる典型的なパターンです。
硬い便による物理的な刺激は、切れ痔や痔核からの出血を引き起こす主な原因となります。排便時に強くいきむことも、肛門周辺の血管に負担をかけ、痔の悪化や出血につながります。
しかし、それ以外にも消化管のさまざまな病気が原因で血便が生じることもあり、注意が必要です。
血便を伴う便秘の主な原因

便秘の際に血便が見られる原因は多岐にわたります。硬い便による物理的なものから、消化管の病気まで、さまざまな要因が考えられます。
硬い便による物理的な刺激
便秘によって便が硬くなると、排便時に肛門や直腸の粘膜を傷つけやすくなります。これは血便の最も一般的な原因の一つです。
切れ痔(裂肛)は、硬い便が肛門の皮膚を通過する際に裂けてしまう状態です。排便時に強い痛みを感じ、トイレットペーパーに鮮血が付着することが多いです。痛みのため排便を我慢してしまい、さらに便秘が悪化するという悪循環に陥ることもあります。
いぼ痔(痔核)は、肛門周辺の血管がこぶ状に腫れたもので、排便時のいきみなどで出血しやすくなります。内痔核の場合、痛みは少ないものの排便時に出血したり、痔核が肛門の外に脱出したりすることがあります。外痔核では血豆(血栓性外痔核)ができて強い痛みを伴うこともあります。
消化管の炎症や潰瘍
消化管の粘膜に炎症や潰瘍ができると、そこから出血して血便となることがあります。
虚血性大腸炎は、大腸の血流が悪くなることで粘膜に炎症や潰瘍が生じる病気です。突然の腹痛とともに下痢や血便が見られます。高齢者や動脈硬化のある方に多いですが、若い方でも便秘で強くいきんだ後などに発症することがあります。
潰瘍性大腸炎やクローン病は、炎症性腸疾患と呼ばれ、免疫の異常などが関与して消化管に慢性の炎症や潰瘍を起こす病気です。下痢や血便、腹痛、体重減少などが主な症状で、若い世代にも発症し、長期的な治療が必要になります。潰瘍性大腸炎では炎症が悪化すると粘液と血が混じる粘血便になります。
大腸ポリープや大腸がん
大腸ポリープや大腸がんは、初期には自覚症状がないことが多いですが、進行すると出血して血便の原因となることがあります。
大腸ポリープは、大腸の粘膜にできるいぼ状の隆起です。多くは良性ですが、一部はがん化する可能性があります。ポリープが大きくなると、便が通過する際に擦れて出血することがあります。
大腸がんは、早期には自覚症状がほとんどありません。症状が現れるのは、がんが進行して腫瘍が大きくなってからです。肛門に近い部位のがんでは鮮血便として発見されることが多いですが、早期はほとんど症状がないため、血便を自覚した時点ではがんが進行している場合もあります。
近年、大腸がんは日本で最も多いがんとなっています。早期発見・早期治療が非常に重要であり、40歳以上の方は年に1回、便潜血検査を受けることが推奨されています。
血便を伴う便秘の診断と検査
血便が見られた場合、その原因を正しく把握することが治療の第一歩となります。自己判断せずに専門医に相談することが大切です。

医療機関を受診する目安
以下のような症状がある場合は、速やかに医療機関を受診してください。
- 便器の水が真っ赤になるほどの大量出血
- 血便が繰り返し見られる
- 痛みのない血便が続く
- 血便とともに腹痛や発熱がある
- 体重減少や貧血症状がある
- 便の形状や排便習慣が急に変化した
「痔だから大丈夫」「少しの血なら問題ない」といった自己判断は危険です。血便は大腸がんのような重大な病気のサインである可能性も否定できません。
血便の原因を確認するには大腸内視鏡検査が選択肢のひとつです
便秘・血便など排便の変化が続く場合、内視鏡による確認が検討されることがあります。当院の大腸内視鏡検査についてご案内しています。
診断に必要な検査
血便の原因を特定するために、以下のような検査が行われます。
問診と身体診察では、症状の詳細、排便習慣、既往歴、家族歴などを確認します。腹部の触診や肛門の視診・触診も重要な情報源となります。
便潜血検査は、肉眼では見えない微量の血液を検出する検査です。大腸がん検診として広く行われており、早期発見に有効です。
大腸内視鏡検査は、最も正確な検査方法です。肛門から内視鏡を挿入し、大腸全体を直接観察します。検査中に異常が見つかった場合は、組織を採取して病理検査に出したり、ポリープを切除したりすることも可能です。
辻仲病院グループでは、年間21,000件以上の内視鏡検査を実施しており、そのうち大腸内視鏡検査は年間11,000件以上に達します。「無送気軸保持短縮法」という特殊な検査手法を採用しており、従来の検査法と比べて腸への負担が少なく、不快な異物感や苦痛をほとんど感じない検査を実現しています。
CT検査や腹部超音波検査は、大腸の状態や周辺臓器の異常を確認するために行われることがあります。
辻仲つくばクリニックの診療体制
辻仲つくばクリニックは、辻仲病院グループの一員として、茨城県つくば市において胃・大腸内視鏡検査および肛門外科の専門診療を提供しています。
当クリニックの特徴は、消化器内科医だけでなく肛門外科医も内視鏡検査を実施している点です。これにより、肛門疾患についても同時に評価することができます。血便の原因の多くが肛門疾患であるため、内視鏡検査のみで終わらないことが重要と考えています。。
血便を伴う便秘の対処法と治療
血便を伴う便秘の治療は、原因となっている疾患によって異なります。適切な診断に基づいた治療が重要です。

生活習慣の改善
便秘の改善には、生活習慣の見直しが基本となります。
食事療法では、食物繊維を多く含む野菜、果物、海藻類、豆類などを積極的に摂取することが推奨されます。水分摂取も重要で、1日1.5〜2リットルを目安に水分を補給しましょう。
運動習慣は、腸の蠕動運動を促進します。ウォーキングや軽いジョギング、腹筋運動などが効果的です。
排便習慣の確立も大切です。毎朝決まった時間にトイレに行く習慣をつけ、便意を我慢しないようにしましょう。
薬物療法
便秘の治療には、さまざまな種類の薬剤が使用されます。
浸透圧性下剤は、腸内に水分を引き込んで便を柔らかくする薬です。酸化マグネシウムやラクツロースなどがあり、比較的安全に使用できます。
粘膜上皮機能変容薬には、ルビプロストンやリナクロチドなどがあります。腸管からの水分分泌を促進し、便を柔らかくして排便を促します。
胆汁酸トランスポーター阻害薬であるエロビキシバットは、大腸への胆汁酸流入を増やすことで腸の蠕動運動を促進します。
刺激性下剤は、腸の蠕動運動を直接刺激する薬ですが、長期使用は避けるべきです。
痔の治療
切れ痔や痔核による出血の場合、まずは保存的治療が行われます。
軟膏や坐剤による局所治療、便を柔らかくする薬の内服などが基本です。保存的治療で改善しない場合は、注射療法や手術療法が検討されます。
炎症性腸疾患の治療
潰瘍性大腸炎やクローン病の場合、長期的な治療が必要です。
5-アミノサリチル酸製剤、ステロイド、免疫調整薬、生物学的製剤などが使用されます。症状に応じて適切な薬剤を選択し、定期的な経過観察が重要です。
大腸ポリープ・大腸がんの治療
大腸ポリープは、内視鏡検査時に切除することが可能です。早期の大腸がんも、内視鏡的切除で治療できる場合があります。
進行した大腸がんの場合は、外科手術、化学療法、放射線療法などを組み合わせた治療が行われます。早期発見・早期治療が予後を大きく左右するため、定期的な検診が重要です。
血便を放置するリスク

血便を放置すると、原因となっている病気が進行してしまう恐れがあります。
大腸がんの場合、早期発見・早期治療が非常に重要です。早期であれば内視鏡的切除で治癒可能ですが、進行すると手術や化学療法が必要となり、予後も悪化します。最悪の場合、命を落とす可能性もあります。
炎症性腸疾患も、適切な治療を受けずにいると症状が悪化し、生活の質を大きく低下させる可能性があります。貧血が進行したり、緊急手術が必要な状態になったりすることもあるため、軽視は禁物です。
「痔だから大丈夫」と自己判断せず、血便が見られた場合は必ず専門医に相談してください。
まとめ
血便と便秘には深い関係があり、硬い便による物理的な刺激が出血を引き起こすことは珍しくありません。
しかし、血便は大腸がんや炎症性腸疾患など、重大な病気のサインである可能性もあります。「痔だから大丈夫」と自己判断せず、血便が見られた場合は速やかに専門医に相談することが大切です。
辻仲つくばクリニックでは、豊富な経験と高度な技術を持つ専門医が、大腸内視鏡検査をはじめとした精密な診断と適切な治療を提供しています。無送気軸保持短縮法による苦痛の少ない検査、消化器内科医と外科医の連携による迅速な治療対応など、患者様の負担を最小限に抑えた診療体制を整えています。
血便や便秘でお悩みの方は、どうぞお気軽にご相談ください。早期発見・早期治療が、あなたの健康を守る最善の方法です。
茨城県つくば市竹園
辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科
血便・便秘など排便の変化でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
月〜土 9:00〜11:30 / 14:00〜16:30 日曜休診
著者情報
院長
森田 洋平
Youhei Morita

略歴
2007年
杏林大学卒業、東京北社会保険病院で初期臨床研修、つくばメディカルセンター病院で外科研修、埼玉医科大学国際医療センターで消化器外科フェロー。その後、消化器内視鏡、肛門外科を専門とし辻仲病院柏の葉で勤務。勤務の傍ら、聖路加国際大学公衆衛生大学院で内視鏡の検査情報を効率的に伝えるための研究を行いMaster of Public Health(MPH)を取得。
資格
- 日本消化器内視鏡学会専門医
- Master of Public Health (MPH)
所属学会
- 日本外科学会
- 日本消化器外科学会
- 日本消化器内視鏡学会