
「マンジャロを始めたら吐き気がつらい」「下痢が続いて不安」「このまま続けて大丈夫なのか」——肥満外来や消化器外来で、こうしたご相談をよくいただきます。
副作用が出ると「自分には合わないのかも」「すぐやめた方がいいのでは」と心配になりますよね。実際、マンジャロを使う多くの方が、程度の差はあれ消化器症状を経験します。決して珍しいことではなく、あなただけが弱いわけでも、使い方を間違えたわけでもありません。
結論を先に申し上げると、マンジャロの副作用の多くは胃腸の症状で、増量期に出やすく、時間とともに楽になることが多いです。そして、ほとんどは食事の工夫や増量ペースの調整で対処できます。一方で、まれに見逃してはいけないサインもあります

大切なのは、「我慢して耐える」のでも「すぐにあきらめる」のでもなく、つらさを上手に減らしながら、危険なサインだけは確実に拾うことです。
目次
この記事でお伝えすること
- マンジャロの副作用は吐き気・下痢・便秘など消化器症状が中心で、増量期に出やすい
- 多くは軽度〜中等度で一過性。数か月で落ち着くことが多い
- 症状別に、家庭でできる工夫と医療機関でできる対処がある
- つらいときは「無理に増量しない・同じ量で待つ・一時的に休む」という選択がある
- まれに膵炎・胆石・脱水・低血糖など、すぐ受診すべきサインがある
- 他院で始めた方でも、副作用の相談・評価や、当院への処方の切り替えも受けられる
マンジャロの副作用は「消化器症状」が中心——なぜ起こるのか
マンジャロ(チルゼパチド)は、GLP-1とGIPという2種類のホルモン受容体に作用する週1回の注射薬です。食欲を抑え、減量を助ける効果が知られています。
その仕組みのひとつが、胃からの排出(胃の内容物が腸へ送られる速度)をゆっくりにすることです。食べたものが胃に長くとどまるため満腹感が続き、自然と食事量が減ります。ただし、この「胃の動きがゆっくりになる」働きは、同時に吐き気・胃もたれ・便通の変化といった消化器症状の原因にもなります。
臨床試験では、マンジャロでよくみられる副作用として、悪心(吐き気)、下痢、便秘、嘔吐などが報告されています。肥満を対象とした試験では、おおよそ次のような頻度です(用量が上がるほど増える傾向があります)。
- 吐き気:約20〜30%(プラセボでは約10%)
- 下痢:約17〜23%
- 便秘:約11〜17%
- 嘔吐:約6〜13%

【ポイント①】
副作用の多くは「増量期」に集中します
マンジャロは、少ない量から始めて段階的に増やしていく設計です。胃の動きの変化は増やした直後に最も強く出やすく、同じ量を続けるうちに体が慣れていく(タキフィラキシー)ことが知られています。
そのため、つらいのは増量の直後で、その後は落ち着いてくるという経過をたどる方が多いです。「ずっとこのつらさが続く」わけではない、と知っておくだけでも、対処の見通しが立てやすくなります。
症状別の対処法——家庭でできる工夫
副作用は、症状ごとに対処のコツが少しずつ違います。まずは家庭でできる工夫から見ていきましょう。吐き気・胃もたれ
- 少量ずつ、ゆっくり食べる。一度にたくさん食べると胃に負担がかかります
- 脂っこいもの・甘すぎるもの・においの強いものを控える
- 水分はこまめに少しずつとる
- 食後すぐに横にならない(就寝の2〜3時間前には食事を済ませる)
- どうしてもつらいときは、吐き気止め(制吐薬)を一時的に使う方法もあります(医師に相談)
下痢
- 水分と電解質をこまめに補う(脱水を防ぐのが最優先)
- 脂質・刺激物・カフェイン・アルコールを控えめに
- 続くようなら、整腸薬や止瀉薬の使用を相談する
- 水のような下痢が何日も続く、ぐったりする、尿が少ないときは受診を
便秘
- 水分と食物繊維を意識してとる
- 適度に体を動かす
- 改善しなければ、**便をやわらかくする薬(緩下剤)**を相談する
胸やけ・呑酸(胃酸の逆流)
- 胃の動きがゆっくりになることで、胸やけが出たり悪化したりすることもあります。食事の工夫や、必要に応じた胃酸を抑える薬で対処できることが多いです。逆流性食道炎がもともとある方は、別記事「逆流性食道炎があり、マンジャロで減量したい——胸やけは悪くなる?」もあわせてご覧ください。
「やめる前に」できること——増量を急がないという選択
副作用がつらいと、「もうやめるしかないのかな」と感じるかもしれません。けれど、その前にできる調整がいくつかあります。
最も大切なのは、つらいときに無理して次の量へ進まないことです。マンジャロは用量を上げるほど減量効果が大きくなりますが、消化器症状も用量に応じて強くなりやすいことがわかっています。症状が出ている間に増量を急ぐと、つらさだけが先に大きくなってしまいます。
具体的には、次のような選択肢があります。
- 同じ用量のまま様子を見る(体が慣れるのを待つ)
- 増量のペースをゆっくりにする
- 症状が強ければ、一時的に量を減らす・休む

【ポイント②】
「我慢しすぎも、あきらめすぎも、もったいない」です!
「効果を早く出したいから」と症状を我慢して増量を続けると、嘔吐や脱水で治療そのものを中断せざるを得なくなることがあります。逆に、増量直後の一過性の吐き気だけで「合わない」と早々にやめてしまうのも、もったいない判断です。
「もう少し工夫すれば続けられそうか」「これは受診すべきサインか」——その見きわめに迷ったら、処方医や消化器を診てもらえる医療機関に相談してください。判断を一人で抱え込まないことが、いちばんの近道です。
見逃してはいけないサイン——すぐに受診・検査を
副作用の多くは一過性ですが、まれに、すぐに対応が必要な症状もあります。次のような場合は、自己判断で様子を見ず、早めに医療機関を受診してください。- 激しい腹痛が続く(特にみぞおち〜背中に抜けるような痛みに、吐き気・嘔吐を伴う)——膵炎の可能性
- 右上腹部の痛み、発熱、皮膚や白目が黄色くなる——胆石・胆嚢炎の可能性
- 嘔吐や下痢が続き、水分がとれない・尿が出ない・立ちくらみがする——脱水のサイン
- 冷や汗、動悸、手のふるえ、強い空腹感——低血糖のサイン(特にインスリンやSU薬という別の糖尿病薬を併用している方)
- 吐血、黒色の便、貧血、飲み込みにくさ、意図しない急激な体重減少——胃カメラでの確認が望ましいサイン
マンジャロの添付文書でも、膵炎・胆石症・胆嚢炎・低血糖などは注意すべき副作用として挙げられています。とくに、嘔吐を伴う持続的な激しい腹痛は、すぐに使用を中止して受診すべきサインとされています。
「胸やけや胃の不調=マンジャロの副作用」と決めつけてしまうと、まれに隠れている別の病気(胃潰瘍や腫瘍など)を見逃すことがあります。症状が長引くとき、いつもと違うと感じるときには、上部消化管内視鏡(胃カメラ)や腹部エコーで原因を確かめる価値があります。検査の流れや受け方は、マンガでわかる胃内視鏡検査の受け方もあわせてご覧ください。
関連記事 【漫画】胃内視鏡検査の受け方 つくばの専門医解説他院でマンジャロを始めた方へ——副作用の相談も、処方の切り替えも
最近は、オンライン診療や他のクリニックでマンジャロを始める方が増えています。手軽に始められる一方で、いざ副作用が出たときに「対面で相談しづらい」「お腹の不調をきちんと診てほしい」「処方元では副作用まで診てもらえなかった」と感じる方も少なくありません。
当院は消化器内科・内視鏡を専門としており、他院(オンライン診療を含む)でマンジャロを始めた方の副作用のご相談も承っています。たとえば、次のような形でご利用いただけます。
- いまの吐き気や下痢が「様子を見てよいもの」か「受診すべきもの」かの評価
- 食事の工夫や、症状を抑える薬(制吐薬・整腸薬・胃酸を抑える薬など)の相談
- 必要に応じた胃カメラ・腹部エコーなどの検査
- 増量ペースや今後の方針についての助言
マンジャロは「副作用が出たときに対面で診てもらえる場所」で
これから始める方や、処方元の変更を検討している方にお伝えしたいのは、マンジャロは、副作用が出たときに対面で診てもらえる医療機関で処方を受けるのが安心だということです。
オンライン診療は便利ですが、基本ルールとして「必要なときに対面診察へ切り替えられること」が前提になっています。お腹の症状が出たときに、すぐ顔を合わせて診てもらえる体制があるかどうかは、安全に続けるうえで意外と大切なポイントです。
当院では、この考え方から、まず対面で何度かマンジャロを処方し、副作用がコントロールできることを確認できた方に限って、オンライン診療での処方を行っています。最初から完全オンラインで完結させるのではなく、「困ったときは対面で診られる」関係をつくったうえでオンラインを活用する、という方針です。少し手間に感じるかもしれませんが、副作用への対応とご本人の安全を第一に考えた運用だとご理解いただければと思います。
まとめ——つらいときの判断の目安
マンジャロの副作用で悩んでいる方へ、要点を整理します。- 副作用の多くは吐き気・下痢・便秘などの消化器症状で、増量期に出やすい
- 多くは軽度〜中等度で一過性。体が慣れて数か月で落ち着くことが多い
- 症状別の工夫(少量ずつ食べる、水分・電解質、刺激物を控える、必要なら薬)で対処できることが多い
- つらいときは無理に増量しない。同じ量で待つ・ペースを落とすことが、続ける近道
- 激しい腹痛、脱水、低血糖、吐血・黒色便などは、すぐ受診すべきサイン
- 他院で始めた方でも、副作用の相談・評価や、当院への処方の切り替えも受けられる
副作用は「合わないサイン」ではなく、多くは「体が慣れるまでの一時的な反応」です。上手に乗り切れば、減量という大きなメリットにつながります。一人で我慢せず、つらいときは相談してください。
つくば(研究学園)や守谷をはじめ、土浦市・石岡市・つくばみらい市など近隣の市町村からも、マンジャロの副作用や肥満治療について、他院で始めた方も含めてご相談いただいています。詳しくは当院のマンジャロ・肥満外来のページもご参照ください。
関連記事 【つくば市でマンジャロを処方】 最新の「痩せる薬」で安全な医療ダイエットよくある質問
可能ですが、当院では条件を設けています。まず対面で何度か処方し、副作用がコントロールできることを確認できた方に限って、オンライン診療での処方を行っています。オンライン診療は「必要なときに対面へ切り替えられること」が前提のため、副作用が出たときにすぐ診られる関係をつくったうえで活用する方針です。これから始める方は、副作用が出たときに対面で診てもらえる医療機関で処方を受けることをおすすめします。
茨城県つくば市竹園
辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科
マンジャロにご興味のある方は、まずはお気軽にご相談ください。
月〜土 9:00〜11:30 / 14:00〜16:30 日曜休診
著者情報
院長
森田 洋平
Youhei Morita

略歴
2007年
杏林大学卒業、東京北社会保険病院で初期臨床研修、つくばメディカルセンター病院で外科研修、埼玉医科大学国際医療センターで消化器外科フェロー。その後、消化器内視鏡、肛門外科を専門とし辻仲病院柏の葉で勤務。勤務の傍ら、聖路加国際大学公衆衛生大学院で内視鏡の検査情報を効率的に伝えるための研究を行いMaster of Public Health(MPH)を取得。
資格
- 日本消化器内視鏡学会専門医
- Master of Public Health (MPH)
所属学会
- 日本外科学会
- 日本消化器外科学会
- 日本消化器内視鏡学会
【参考文献】
- チルゼパチドの消化器耐容性(SURMOUNT試験の解析) 種別: 論文 論文名: Gastrointestinal tolerability and weight reduction associated with tirzepatide in adults with obesity or overweight with and without type 2 diabetes in the SURMOUNT-1 to -4 trials. 著者: Rubino DM, Pedersen SD, Connery L, et al. 掲載誌: Diabetes Obes Metab. 2025;27(4):1826-1835. 本文との関係: 消化器症状の頻度、増量期への集中、多くが軽度〜中等度で中止は少数であることの根拠。
https://doi.org/10.1111/dom.16176
- GLP-1/GIP受容体作動薬の消化器への影響と管理(Mayo Clinic Proceedings) 種別: 総説 論文名: GLP-1 and GIP Receptor Agonists: Effects on the Gastrointestinal Tract and Management Strategies for Primary Care Physicians. 掲載誌: Mayo Clin Proc. 2025. 本文との関係: 消化器症状が起こる機序(胃排出遅延など)と、食事・薬剤による対処法の根拠。
https://www.mayoclinicproceedings.org/article/S0025-6196(25)00551-8/fulltext
- GLP-1受容体作動薬の消化器副作用マネジメントに関する専門家コンセンサス 種別: コンセンサス(専門家提言) 論文名: Clinical Recommendations to Manage Gastrointestinal Adverse Events in Patients Treated with GLP-1 Receptor Agonists: A Multidisciplinary Expert Consensus. 掲載誌: J Clin Med. 2023. 本文との関係: 増量を急がない・用量調整・一時休薬など、症状が出たときの対処方針の根拠。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9821052/
- マンジャロ皮下注 電子添付文書(日本イーライリリー) 種別: 添付文書 資料名: マンジャロ皮下注アテオス 電子添付文書(重大な副作用:膵炎、胆石症・胆嚢炎・胆管炎、低血糖等). 本文との関係: 膵炎・胆石症・低血糖などの重大な副作用と、嘔吐を伴う持続的な激しい腹痛での中止など、受診・中止すべきサインの根拠。
https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00070640