「血液検査で大腸がんは分かりますか?」
外来でこの質問を受けるたびに、私は少し立ち止まります。検査への不安を抱えながら、できれば楽な方法で確認したいという気持ちは、とても自然なことだと思うからです。
結論から言うと、血液検査だけで大腸がんを「ある・ない」と断定することはできません。大腸内視鏡検査と血液検査は、それぞれ役割がまったく異なります。どちらが優れているという話ではなく、「何を知りたいか」によって使い分けるものです。
この記事では、消化器外科・消化器内視鏡を専門とする医師の立場から、大腸内視鏡検査と血液検査それぞれで「分かること」「分からないこと」を整理します。正しい理解が、適切な検査選択につながります。
辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科
血液検査と大腸内視鏡検査は、確認できる内容がそれぞれ異なります。「どの検査を受ければよいかわからない」という方も、当院では受診時に症状や目的に合わせてご説明しています。
目次
大腸内視鏡検査で「分かること」
大腸内視鏡検査は、肛門から内視鏡を挿入し、直腸から盲腸まで大腸全体の粘膜を直接観察する検査です。
「直接見る」という点が、この検査の最大の強みです。
発見できる主な病変
- 大腸ポリープ(腺腫・過形成性ポリープなど)
- 大腸がん(早期〜進行がん)
- 潰瘍性大腸炎・クローン病などの炎症性腸疾患
- 虚血性腸炎
- 直腸カルチノイド(神経内分泌腫瘍)
- 過敏性腸症候群(他疾患の除外診断として)
大腸がんの精密検査として最初に行われるのは、全大腸内視鏡検査です。病変を直接観察できるだけでなく、必要に応じて組織を採取して病理診断を確定できます。さらに、画像強調観察や拡大観察を組み合わせることで、粘膜の表面構造や血管の様子まで詳細に評価することが可能です。
内視鏡検査だからこそできること
検査と治療を同時に行えるのも、大腸内視鏡の大きな特徴です。
一般的に大腸内視鏡検査中にポリープが発見される確率は50%とされています。ポリープが見つかった場合、入院が不要なケースであればその場で切除できます。ポリープのない状態を作ることで、大腸がんを約86%予防できることが示されています。「検査しながら治療まで完結できる」のは、他の検査にはない大腸内視鏡だけの強みです。
また、画像だけでは診断が難しい疾患も、組織を採取して病理検査を行うことで初めて確定診断できるケースがあります。これは血液検査やCT検査では代替できない機能です。
大腸内視鏡検査で「分からないこと」・限界について
優れた検査にも、限界はあります。
大腸内視鏡検査の感度は、大腸がんおよび1cm以上の腺腫を対象とした場合で79〜100%とされています。つまり、ごくまれに見逃しが生じる可能性があります。腸のヒダの裏側や屈曲部はカメラの死角になりやすく、特に平坦な病変は発見が難しいことがあります。
内視鏡検査が難しいケース
- 腸の走行が複雑で挿入が困難な場合
- 狭窄部位がある場合(その先の観察ができない)
- 腸管の準備(下剤服用)が不十分な場合
- 全身状態によって検査自体が難しい場合
また、大腸内視鏡検査は「大腸の中」を見る検査です。大腸の外側への浸潤や他臓器への転移・遠隔転移の評価は、CT検査やMRI検査が担います。大腸がんが疑われる場合、内視鏡で病変を確認した後に、CT検査などで病期(ステージ)を評価するのが一般的な流れです。
さらに、検査前に下剤で腸内をきれいにする必要があること、検査時間が15〜30分程度かかること、鎮静剤を使用する場合は検査後に休息が必要なことなど、身体的な準備と時間の確保が求められます。
血液検査で「分かること」〜腫瘍マーカーの正しい理解〜
血液検査で大腸がんに関連して調べられる代表的な項目が、「腫瘍マーカー」です。
腫瘍マーカーとは、主にがん細胞によって作られるタンパク質などの物質で、血液中の濃度を測定することで評価します。大腸がんの腫瘍マーカーには、CEAとCA19-9があります。
CEA(癌胎児性抗原)…
大腸がんをはじめ、肺がん・胃がん・乳がんなど多くのがんで上昇することがある腫瘍マーカーです。大腸がんの経過観察や治療効果の判定に用いられます。
CA19-9(糖鎖抗原19-9)…
膵臓がん・胆道がんで特に上昇しやすい腫瘍マーカーですが、大腸がんでも上昇することがあります。CEAと組み合わせて評価されることが多い指標です。
腫瘍マーカーが活用される場面
- 大腸がん診断後の経過観察
- 治療(手術・化学療法)の効果判定
- 再発の早期察知
腫瘍マーカーの値は、体の中にあるがんの量を反映する指標として用いられます。治療後に値が下がれば効果が出ている可能性があり、再び上昇してきた場合は再発の兆候として注意が必要です。このように、腫瘍マーカーは「治療中・治療後の経過を追う」ことに大きな価値があります。
血液検査(腫瘍マーカー)で「分からないこと」〜最も重要な注意点〜
ここが最も誤解されやすいポイントです。
腫瘍マーカーの値だけでは、がんかどうかを診断することはできません。
腫瘍マーカーの限界を理解する
CEAやCA19-9は、がんがあっても正常範囲内に収まることがあります。特に早期大腸がんでは、腫瘍マーカーが上昇しないケースが少なくありません。逆に、がんがなくても喫煙・肝疾患・炎症性疾患・糖尿病などによってCEAが上昇することがあります。
つまり、「腫瘍マーカーが正常だからがんはない」とも、「腫瘍マーカーが高いからがんだ」とも言えないのです。
腫瘍マーカーの値は、画像検査や病理検査などその他の検査結果と合わせて、医師が総合的に判断するものです。単独での診断ツールとしては使えません。
健診などでも行われることもある腫瘍マーカーですが、基本的にはがんの発見のために用いるのは妥当ではなく、癌があることがわかっている人にとって、治療経過を見るために必要なマーカーということになります。
血液検査で分かる「間接的な情報」
腫瘍マーカー以外にも、血液検査で得られる情報があります。
- 貧血(ヘモグロビン値の低下)…大腸からの慢性的な出血を示唆することがある
- 炎症反応(CRP・白血球数)…潰瘍性大腸炎・クローン病などの炎症性腸疾患で上昇する
- 肝機能・腫瘍マーカー…大腸がんの肝転移を疑う際の補助情報となる
これらはあくまで「何かが起きているかもしれない」という間接的なサインです。原因を特定するためには、大腸内視鏡検査などの精密検査が必要になります。
大腸内視鏡検査と血液検査〜それぞれの役割を整理する〜
ここまでの内容を整理します。

大腸がんを「見つける」ための検査は大腸内視鏡検査であり、血液検査はその補助的役割を担います。この役割分担を正しく理解することが、適切な検査選択の第一歩です。
大腸内視鏡検査を受けるべきタイミング〜こんな症状・状況は要注意〜
「いつ受ければいいの?」という疑問は、多くの方が持っています。
こんな症状がある方は早めに相談を
- 便に血が混じる・黒い便が出る
- 原因不明の下痢・便秘が続く
- 腹痛・腹部の張りが持続する
- 便が以前より細くなった
- 急な体重減少がみられる
- 便潜血検査が陽性だった便潜血検査で「陽性」と判定された場合は、必ず大腸内視鏡検査を受けてください。大腸がんは毎日出血しているわけではないため、1日分でも陽性になったら精密検査が必要です。「痔があるから」と自己判断して精密検査を先延ばしにするのは、非常に危険です。
症状がなくても受けてほしい方
- 50歳以上で一度も大腸内視鏡検査を受けたことがない方
- 家族に大腸がん・大腸ポリープの方がいる方
- 以前にポリープを切除したことがある方
- 高カロリー食・飲酒・喫煙習慣がある方
大腸がんの罹患率は40歳代から増加します。早期の大腸がんは自覚症状がないことが多く、症状が出てから受診した時には進行しているケースも少なくありません。定期的な検査が、命を守ることに直結します。
辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科クリニックの大腸内視鏡検査について
「検査は怖い」「下剤がつらい」…そういった声を、日々の診療の中でよく耳にします。
辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科クリニックでは、患者さんの不安や負担を少しでも軽減できるよう、さまざまな取り組みを行っています。
苦痛の少ない検査環境
検査時には鎮静剤を使用し、半分眠ったようなリラックスした状態で受けていただけます。検査後は専門のリカバリールームでしっかりと休息をとっていただける環境を整えており、プライバシーが守られた半個室スペースを完備しています。下剤についても、患者さんの体質やご希望に合わせて複数の種類からお選びいただけます。
高精度な検査技術
光の波長を変えて腸粘膜の表面や色調を明確に観察できる「画像強調」技術、腸への負担を軽減する「自動送水」技術を導入しています。最新のAIシステムを活用することで、これまで発見が難しかった微細な早期がんや炎症、SSLと呼ばれる平坦な病変の早期発見にも対応しています。
また、無送気軸保持短縮法という検査方法を採用しており、従来の空気注入方式と比べてお腹の張りや痛みを大幅に軽減できます。患者さんの腸の形状や状態に合わせて、細径内視鏡・拡大内視鏡など豊富な機器を使い分けています。
検査と治療を1回で完結
入院が不要なケースでは、検査中にポリープが発見された場合もその日のうちに切除まで対応します。通常は2回以上の検査・治療が必要になるところを、1回で完結できる利便性を提供しています。また、患者さんのご希望と医師の判断により、胃内視鏡と大腸内視鏡の同日検査にも対応しており、通院回数や身体的負担を抑えることができます。
2023年度の法人実績として、大腸内視鏡検査数は25,093件に達しています。経験豊富な日本消化器内視鏡学会専門医が検査から治療まで担当し、女性医師も在籍しているため、女性の患者さんも安心してご来院いただけます。
まとめ〜正しい検査選択が早期発見につながる〜
大腸内視鏡検査と血液検査の役割の違いを、改めて整理します。
- 大腸内視鏡検査…大腸の粘膜を直接観察し、ポリープ・がん・炎症性腸疾患などを発見・診断・治療できる。大腸がんの早期発見に最も有効な検査。
- 血液検査(腫瘍マーカー)…がんの診断補助・治療効果の判定・経過観察・再発察知に活用される。単独での診断には使えない。
「血液検査で異常がなかったから大丈夫」は、大腸がんに関しては成り立ちません。症状がある方はもちろん、40歳を過ぎたら定期的な大腸内視鏡検査を検討することをお勧めします。
検査への不安や疑問があれば、ぜひ一度専門医にご相談ください。正しい知識と適切な検査が、あなたの健康を守ります。
つくば市で大腸内視鏡検査をお考えの方は、ぜひ下記よりご確認ください。
【辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科クリニック】大腸内視鏡検査の詳細はこちら
茨城県つくば市竹園
辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科
大腸内視鏡・胃内視鏡・血便緊急外来・痔日帰り手術
月〜土 9:00〜11:30 / 14:00〜16:30(日曜定休)
著者情報
院長
森田 洋平
Youhei Morita

略歴
2007年
杏林大学卒業、東京北社会保険病院で初期臨床研修、つくばメディカルセンター病院で外科研修、埼玉医科大学国際医療センターで消化器外科フェロー。その後、消化器内視鏡、肛門外科を専門とし辻仲病院柏の葉で勤務。勤務の傍ら、聖路加国際大学公衆衛生大学院で内視鏡の検査情報を効率的に伝えるための研究を行いMaster of Public Health(MPH)を取得。
資格
- 日本消化器内視鏡学会専門医
- Master of Public Health (MPH)
所属学会
- 日本外科学会
- 日本消化器外科学会
- 日本消化器内視鏡学会