「便潜血検査が陽性だったけど、痔もあるから内視鏡で両方わかるかな?」
当院には、こうしたご相談で来院される方が多くいらっしゃいます。
大腸内視鏡検査を受ければ、お尻の症状もすべて解決するとお考えの方も少なくありません。
しかし、実は大腸内視鏡検査と痔の診察は、それぞれ目的が異なる専門的な検査であり、お互いを完全にカバーできるわけではありません。
この記事を読めば、お尻の症状があったり、痔があるかが気になる場合には大腸内視鏡検査だけでは十分ではないことがわかるようになります。

目次
1. 大腸内視鏡検査の目的と、痔の診断における限界
大腸内視鏡検査の主な目的は、大腸全体(盲腸から直腸まで)の粘膜を詳細に観察し、大腸がん、ポリープ、炎症性腸疾患などの病変を早期に発見・診断することです。
特に、便潜血陽性の方や、お尻からの出血がある方にとって、出血の原因が大腸からのものなのか、それとも痔によるものなのかを正確に区別するためには、大腸内視鏡検査は非常に重要な検査です。
痔の出血だと自己判断してしまい、大腸の病気の発見が遅れることは避けなければなりません。
しかし、大腸内視鏡検査は、肛門の病気である「痔」を正確に診断する検査ではありません。
大腸内視鏡検査は、そもそも大腸内部の病変を診るための検査であり、肛門の外側や肛門管の細部を専門的に観察するものではありません。
大腸内視鏡のスクリーニングガイドラインにおいても、肛門部の詳細な観察は必須とされておらず、大腸の病変の確認が主な目的であると明確に示されています。
切れ痔(裂肛)や外痔核は、肛門の外側や非常に浅い部分に発生するため、大腸内視鏡ではほとんど観察できません。
内痔核についても存在の診断は可能なこともありますが、治療の必要性について評価するには後述する肛門鏡が必須です。
実際に、大腸内視鏡検査で痔核についてのみ指摘を受け、かえって不安を感じて当院にいらっしゃる方も少なくありません。
つまり、特に出血などがある場合には、大腸内視鏡検査だけでは、検査として不十分であるということです。
2. 痔の正確な診断には「肛門科医による専門診察」が不可欠
では、痔を正確に診断し、適切な治療方針を決めるためには何が必要なのでしょうか?
それは、肛門科医による「肛門鏡検査」を含む専門的な診察です。
肛門疾患ガイドラインでも、
「下部内視鏡検査における直腸内反転でも内痔核を観察することはできるが、外痔核を含めた痔核の全体像を捉えることはできないのであくまでも肛門鏡で診察することが望ましい」
と明記されており、いぼ痔を含む肛門疾患を正確に観察するためには肛門鏡を用いることが推奨されています。
肛門鏡は直接肛門の状態を観察する道具です。
これにより、痔核がどの程度外に脱出しやすいのか、裂痔(切れ痔)などで肛門上皮がどの程度傷ついているのかなど、手術を含む治療の適応を検討するのに必須の情報を得ることができます。
肛門鏡があることで、ご本人がいぼ痔と思っている症状が、実は皮膚のシワ(肛門皮垂)で治療が不要であったり、手術を検討するような切れ痔だったりなどがわかるわけです。
3. まずは肛門科受診を推奨するケース
「出血や便潜血陽性の場合、すぐに大腸内視鏡検査を受けるべき?」と迷われる方もいらっしゃるでしょう。
もし「痔の症状がある」とご自身で感じているのであれば、まずは肛門科専門医を受診し、肛門鏡による診察を先に行うことをおすすめします。
大腸内視鏡検査と異なり、肛門科の診察(視診・触診・肛門鏡検査)は、事前の準備(食事制限や下剤服用など)が一切不要です。
そのため、比較的気軽に、すぐに検査を受けられます。
特に、以下のような方は、まず肛門科医の診察で、出血が痔によるものかを確認することから始めても良いでしょう。
・直近で大腸内視鏡検査を受けており、大腸がんのリスクが高くないと診断されている方
・明らかに痔の症状(排便時の鮮血、いぼ痔の脱出、肛門の痛みなど)がある方
肛門科の診察で「明らかに痔からの出血」と診断され、かつ大腸がんのリスクが低いと判断されれば、不要な大腸内視鏡検査を省略できる可能性もあります。
4. 出血・便潜血陽性は「大腸の病気」のサインの可能性も
「痔の症状があるから」と自己判断して、大腸の検査をしないのは大変危険です。
出血や便潜血陽性は、痔だけでなく、大腸がんやポリープ、炎症性腸疾患など、より重篤な大腸の病気のサインである可能性も十分にあります。
一方で、同ガイドラインでは
「痔核の診断は痔核を肛門鏡診察で視認することと、他の直腸肛門疾患を除外することで確定診断を行う。」
とあり、大腸内視鏡検査で大腸がんなどの進行性の疾患でないことを確認することは、肛門疾患を見るうえでベースとなることも忘れてはいけません。
以下の項目に当てはまる場合は、痔の有無にかかわらず、大腸内視鏡検査も行うことを強くおすすめします。
・便潜血検査が陽性である場合
・出血以外の症状がある方(便が細くなった、便秘と下痢を繰り返す、粘液が混じる、体重が減った、貧血があるなど)
・出血の色が黒っぽい、または便に混じっている場合
特に、便潜血検査はそもそも大腸内視鏡検査を前提とした検査ですので、痔があるからというのは、大腸内視鏡検査を行わない理由にはなりません。
まとめ
痔の診断と治療において、大腸内視鏡検査だけでは不十分であること、そして肛門科専門医による診察の重要性についてご説明しました。
出血や便潜血陽性で「どこに相談したら良いか分からない」「大腸の検査と痔の診察、両方必要?」とお悩みの方は、ご自身で判断せずに、ぜひ当院にご相談ください。
当院では、鎮静剤を用いた無痛大腸内視鏡検査、AIを搭載した内視鏡機器、豊富な種類から選べる下剤などの前処置対策で、苦痛の少ない大腸内視鏡検査を実践しています。
また、専門的な苦痛の少ない大腸内視鏡検査が評価され、茨城県の大腸内視鏡おすすめクリニックとして掲載されています。
同時に、肛門科医が、肛門鏡による詳細な診察を含め、痔に特化した専門的な診断を行います。これにより、大腸からの出血なのか、痔による出血なのかを正確に診断し、最適な治療法をご提案できます。
一つのクリニックで、大腸から肛門までのトータルな診断・治療が可能なことが、当院の大きな強みです。
患者様が複数の医療機関を回る負担を軽減し、安心・安全・スピーディーな診断・治療を提供いたします。
「大腸もお尻も、専門的に診てほしい」とお考えの方は、お気軽に当院へご相談ください。
当院には、つくば市をはじめ、土浦市、牛久市、つくばみらい市、常総市、石岡市、阿見町、守谷市、龍ケ崎市のみならず、茨城県全域の広い地域から多くの患者様が来院されています。
1. 日本消化器内視鏡学会 大腸内視鏡スクリーニングとサーベイランスガイドライン
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gee/62/8/62_1519/_html/-char/ja
2. 日本大腸肛門病学会 肛門疾患・直腸脱診療ガイドライン2020年版 改定第2版
https://www.coloproctology.gr.jp/uploads/files/journal/koumonshikkan_guideline2020.pdf