経鼻内視鏡なら痛くないの限界、つくばの内視鏡クリニック院長が鎮静剤をおすすめする理由|辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科クリニック|茨城県つくば市の大腸・肛門外科 消化器内科 内視鏡検査

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経鼻内視鏡なら痛くないの限界、つくばの内視鏡クリニック院長が鎮静剤をおすすめする理由

経鼻内視鏡

「胃の検査は受けたいけれど、できるだけ楽な方法で…」 「鼻からの内視鏡なら大丈夫って聞いたから、それなら受けてみようかな」

そう思って経鼻内視鏡を選択される方が増えています。

しかし、本当にすべての方にとって「楽な検査」と言えるのでしょうか?

胃内視鏡検査は、胃がんをはじめとする消化器の病気を早期に発見し、命を守る上で極めて重要な検査です。

しかし、「つらい」「苦しい」といった漠然としたイメージから、検査をためらってしまう方も少なくありません。

特に近年では、「鼻から入れる経鼻内視鏡は楽」「痛くない」という言葉を耳にする機会が増え、実際にこの方法を選ぶ方も増えています。

確かに経鼻内視鏡検査は有用な検査ではあるものの、楽な検査かと言われると疑問が残ります。

大規模アンケートの結果を参考に、経鼻内視鏡検査が本当に楽なのかどうかを検証し、内視鏡検査が不安な方、以前の検査がつらかった方の参考になるような記事となっています。

※後述するように、経鼻内視鏡検査で苦痛の少ないかたも一定数いらっしゃるし、経鼻内視鏡を選択せざるを得ない方もいらっしゃるので、その価値を否定するものではありません。一方で、経鼻内視鏡検査であればつらくないという言説についての実態をご説明する意図です。


1. なぜ「経鼻内視鏡は痛くない」と思われているのか?

多くの患者様が「経鼻内視鏡は痛くない」というイメージを持つようになった背景には、いくつかの要因があります。

  • 細径内視鏡の登場: 口から入れる経口内視鏡に比べて、鼻腔を通る非常に細い内視鏡(細径内視鏡)が開発されました。その「細さ」から、「体への負担が少ない=楽」というイメージが浸透しました。

  • 咽頭反射の起こりにくさ: 舌のつけ根に触れにくいため、口から挿入する際に起こりやすい「オエッ」となる強い咽頭反射(吐き気)が少ないという利点が強調されました。これにより、「苦しくない」という認識が広がりました。

  • メーカーや医療機関の積極的な宣伝: 各内視鏡メーカーや、一部の医療機関が「細い・苦しくない・楽」といったメリットを前面に出して積極的に宣伝したことも、このイメージを定着させる大きな要因となりました。

これらの情報が広まることで、「経鼻内視鏡=痛くない」という認識が社会的に形成されていったのです。


2. オリンパスの大規模調査が示す「経鼻内視鏡のつらさ」という現実

実際に、経口内視鏡検査(口からの胃カメラ)よりも苦痛が少ないことは確かです。

しかし、そうしたイメージとは裏腹に、実際の患者さんの体験はどうだったのでしょうか?

私も何千件と経鼻内視鏡検査を行ってきましたが、経口内視鏡検査より苦痛が少ないのは確かですが、検査後に「きつかった」とおっしゃる方を何人も見てきました。
また、検査前に経鼻内視鏡をみて、泣き出してしまう方もいらっしゃいました。

私の技術が足りないからだと主張することは簡単ではありますが、内視鏡医の技量で片付けて良いものでしょうか?

内視鏡メーカーであるオリンパスが実施した、14,100人を対象とした大規模なウェブアンケート調査(リアルワールドエビデンス=RWE)の結果は、私たちに「現実」を突きつけます。

この調査では、実際に内視鏡検査を受けた方が「検査がつらかった」と感じた割合が示されています。

結果は以下の通りです。

  • 経口内視鏡で検査を受けた人のうち、63.8%が「つらかった」と回答。

  • そして、経鼻内視鏡で検査を受けた人でも、実に49.1%(約半数)もの方が「つらかった」と回答。

つまり、「細いから痛くない」「鼻からだから楽」といったイメージとは裏腹に、経鼻内視鏡を選んだとしても、約半数の方が検査中につらさや不快感を感じているのが現実なのです。

しかも、この調査では、鎮静剤を用いている人は除かれているため、実際に経鼻内視鏡が辛くて鎮静剤を用いた内視鏡検査に変更した方などは入っていません。

おそらく半数以上の方にとっては経鼻内視鏡検査は辛い検査であるといえます。

この大規模なRWEは、単なる主観ではなく、実際の患者様の体験を反映した、極めて重要な情報であると私たちは考えています。

胃がん、食道がんによる死亡率を少しでも減らしていくという使命を達成するためには、机上の理論や謳い文句を信じるのみでなく、臨床医としての感覚やこういった患者さんの声を臨床に反映させる必要があると考えているわけです。




3. 日本消化器内視鏡学会のガイドラインの矛盾

内視鏡検査における鎮静剤の使用については、経鼻内視鏡検査に対するスタンスの違いも含めて、日本消化器内視鏡学会が複数のガイドラインで異なる提言がなされています。


3-1. 「消化器内視鏡鎮静に関するガイドライン第2版」について

このガイドラインでは、上部消化管内視鏡検査における鎮静の有用性が高く評価されています。

患者様の苦痛軽減や検査中の安全性の向上に寄与することが明確に述べられており、適切な実施と管理のもとで鎮静剤を用いることが、患者様の満足度を高め、検査の質を向上させる有効な手段であるという認識が示されています(Clinical question 8 エビデンスレベルA)。


3-2. 「早期胃癌の内視鏡診断ガイドライン」における鎮静記述の背景について

一方で、日本消化器内視鏡学会の「早期胃癌の内視鏡診断ガイドライン」においては、鎮静剤の使用に関する表現が、検査がつらかったり、不安である場合には鎮静剤を使用しても良いという記載になっています(Clinical Question 2-3 エビデンスレベルD)。

詳細にガイドラインを読み解くと、「使用を考慮する」と一度は規定する方向だったが「使用してもよい」という、やや弱い表現に変更された経緯があったことがわかります。

その背景には、「細径内視鏡などの内視鏡機器の開発や内視鏡技術の向上により、鎮静剤・鎮痛剤の使用を減少させることも可能である」という、当時の期待や仮説があったと記載されています。

つまり、「内視鏡や技術の進化によって、鎮静剤の必要性は減るだろう」という見方があったということです。


3-3. ガイドラインの期待と、オリンパスRWEが示す「現実」の乖離

しかし、この早期胃癌の内視鏡診断ガイドラインが想定していたことと、前述のオリンパスRWEが示す「現実」には大きな乖離があります。

細径内視鏡が普及し、技術が向上した現代においても、経鼻内視鏡で検査を受けた約半数の方が「つらい」と感じているという事実は、ガイドラインの期待通りに鎮静剤の必要性が大幅に減ったわけではないことを強く示唆しています。

加えて、オリンパスのRWEでは、経口内視鏡検査を受けた人の約40%以上が鎮静剤を使用する選択をしていると報告されています。

これは、ガイドラインが想定する以上に、多くの方が検査の苦痛軽減を求めており、鎮静剤を使った内視鏡検査がすでに一般的になっていることを示しています。

実際に、当クリニックでも90%以上の方が鎮静剤を使った内視鏡検査をご希望されています。

こういった、実際の現場での胃内視鏡検査に対しての苦痛感や不安感の強さ、大規模データなどに真摯に耳を傾け、机上の議論や過去の期待だけでなく、目の前の患者様が本当に苦痛を感じているのか、どのようにすれば楽に検査を受けていただけるのか、という事実を何よりも重視しています。



4. 当院が胃内視鏡検査で鎮静剤をおすすめする理由

上記のわれわれの苦痛のない内視鏡の目指す理念や現実認識を踏まえ、当院が胃内視鏡検査において「鎮静剤」をおすすめする理由がここにあります。

私たちが最も大切にしているのは、目の前の患者様の苦痛を本当に軽減し、安心して質の高い医療を提供することです。

鎮静剤を使用することで、患者さんの「苦痛」や「不安」を大幅に軽減し、恐怖心なくリラックスした状態で検査を受けていただくことが可能になります。

患者様が楽に検査を受けられることは、単に快適なだけでなく、医療の質にも直結します。


4-1. 当院の実績と患者さんの満足度

当クリニックでは、90%以上の患者様が鎮静剤を選択されています。

これは、患者様ご自身が「楽な検査」を求めていることの何よりの証拠であり、当院の鎮静を用いた内視鏡検査が実際に高い満足度を得ている証拠でもあります。

Google口コミでも、鎮静剤を用いた内視鏡検査が非常に高く評価されており、多くの患者様から感謝の声を頂いております。

つくばの内視鏡クリニックである当院では、「痛くない」という幻想ではなく、本当に「楽な検査」を通じて、皆さまが安心して定期的な検査を受けられる未来を築きたいと考えています。


4-2. 経鼻内視鏡が適している方もいらっしゃいます

ただし、誤解のないよう申し上げますと、経鼻内視鏡検査が全く意味のない検査というわけではありません。

実際に、経鼻内視鏡で「楽だった」と感じられる方も一定数いらっしゃいます。

特に以下のような方には、経鼻内視鏡も有効な選択肢となります:

・仕事や家庭の事情で、検査後すぐに車の運転が必要な方 ・鎮静剤に対してアレルギーや強い不安をお持ちの方


・過去に経鼻内視鏡で問題なく検査を受けられた経験がある方


当院では、患者様お一人おひとりの状況やご希望をお聞きし、最適な検査方法をご提案いたします。

経鼻内視鏡をご希望の場合も、豊富な経験を持つ専門医が、できるだけ苦痛の少ない検査を心がけております。

重要なのは、「どの検査方法を選ぶか」ではなく、「安心して、確実に検査を受けていただくこと」です。


▶大規模アンケートからみる胃内視鏡検査5つの不安についてつくばの専門が答えます。

5. まとめ

胃の不調や健康への不安を感じながらも、「検査がつらそう」という理由で検査を先延ばしにしていませんか?

過去に経鼻内視鏡で「思ったより苦しかった」という経験をお持ちの方も、どうぞあきらめないでください。

来院してくださった患者様に全力を尽くすのは医師として当然のことです。

しかし、私がもう一つ強く思っているのは、過去のつらい経験や不安から内視鏡検査を受けることができず、医療機関にすら到達できていない方々についてです。

「以前受けた検査がつらすぎて、もう二度と受けたくない」 「検査が怖くて、症状があっても病院に行けない」 「楽だと聞いて経鼻内視鏡を受けたけれど、結局つらくて検査嫌いになってしまった」

そのような方々にも、「内視鏡検査は安心して受けられるものなんだ」ということを知っていただき、再び検査を受ける勇気を持っていただきたいのです。

胃がんは早期発見できれば治る病気です。しかし、検査への恐怖心から発見が遅れてしまうことは、医師として最も避けたい事態です。

当院がこのような情報発信を続けているのは、医療機関にアクセスしていないかたも含めて、一人でも多くの方に「安心して検査を受けられる選択肢がある」ことをお伝えし、皆様の健康を守る一助となりたいからです。

鎮静剤を用いた快適な検査から、経鼻内視鏡まで、豊富な経験を持つ医師が、お一人おひとりに寄り添った医療を提供いたします。

つくば駅近くの好立地で、つくばのみならず、土浦市、牛久市、つくばみらい市、常総市、石岡市、阿見町、守谷市、龍ケ崎市のみならず、茨城県外も含めて広い地域から多くの患者様が来院されています。

症状があるけれど検査自体に不安をお感じの方、定期的な内視鏡検査が必要だけれどご不安な方は、まずはお気軽にご相談ください。

 


6. よくある質問

Q. 鎮静剤は安全ですか?副作用が心配です。
A. 当院では経験豊富な担当医が、患者様の体調や既往歴を十分に確認した上で、適切な量の鎮静剤を使用いたします。検査中は専用の監視装置で呼吸や心拍数を常時モニタリングし、万全の安全管理体制を整えております。軽度の眠気が残ることがありますが、重篤な副作用はほとんどありません。

Q. 鎮静剤を使った胃内視鏡検査の費用はどのくらいですか?
A. 胃内視鏡検査は保険適用となります。鎮静剤の使用についても保険適用内で行えますので、追加費用はかかりません。詳しい費用については、お気軽にお問い合わせください。

Q. 鎮静剤を使うと、検査後はどのくらい安静が必要ですか?
A. 検査後30分~1時間程度、院内でお休みいただき、意識がはっきりしたことを確認してからお帰りいただきます。当日の車の運転については、タマゴ・大豆アレルギーのない方は6時間後から可能です。それまでは公共交通機関のご利用をお願いいたします。

▶つくばの内視鏡クリニックである当院での鎮静剤使用後の運転制限について


Q. 人間ドックや胃がん検診などではバリウムとどちらがよいでしょうか?
A. 胃内視鏡検査を行うことを強くおすすめします。残念ながら、胃がん検診などの無症状の方に対するバリウムの効果は内視鏡に比べてかなり低いか、ほとんどありません。バリウムによる胃がん死亡リスクの抑制効果は8%程度と見込まれていますが、内視鏡検査では胃がん・食道がんによる死亡率を43%下げることが質の高い研究で示されています。特に人間ドックなどでは鎮静剤の選択肢もあるため、胃内視鏡検査を行うことを強くおすすめします。

▶つくばの内視鏡クリニックである当院が胃がん検診、人間ドックで胃内視鏡検査をおすすめする理由

▶胃内視鏡検査による胃がん検診で死亡率43%減の衝撃!2025年の最新論文解説


参考文献:

日本消化器内視鏡学会内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン委員会: 内視鏡診療における鎮静に関するガイドライン(第2版). 日本消化器内視鏡学会雑誌 2020; 62(9): 1635-1703.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gee/62/9/62_1635/_article/-char/ja/

日本消化器内視鏡学会早期胃癌の内視鏡診断ガイドライン委員会: 早期胃癌の内視鏡診断ガイドライン. 日本消化器内視鏡学会雑誌 2019; 61(6): 1283-1331.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gee/61/6/61_1283/_html/-char/ja

オリンパス株式会社: 胃・大腸がん検診と内視鏡検査に関する意識調査白書2024. 2024年8月.
https://www.olympus.co.jp/csr/social/survey/2024/


【作成・監修】  

辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科クリニック   院長 森田 洋平(日本消化器内視鏡学会 専門医・MPH(公衆衛生大学院修士))

MPHとは、臨床研究で得られた知見をを現実に落とし込む修練過程を経たスペシャリストです。