「前回の下剤がつらかった」「味が合わず飲めなかった」「水分を大量に飲むのがきつい」 そんな理由で大腸内視鏡検査から遠ざかってしまっている方も少なくありません。
実際、過去の経験から「下剤がつらくて検査を途中で断念した」「もう二度と受けたくない」とおっしゃる方もいます。
14100人の方にWEBアンケートを行ったオリンパスの研究では、ほかの項目については3年以内に検査を経験した人の方が大腸内視鏡検査に対してよいイメージを持っていましたが、検査の準備が大変だという項目のみ、経験者の方が43.5%、未経験者が26.0%で経験者の方が大変だと考えている実態があります。
本記事では、当院が採用する5種類の下剤とその選び方の工夫、ライフスタイルに合わせた検査提案、緊急検査やポリープ切除への対応力まで、患者さん一人ひとりに合わせた“快適な検査体験”のための取り組みをご紹介します。
下剤以外にも大腸内視鏡検査について不安だと感じる方は下記の記事もご参照下さい
➡【医師監修】14100人のアンケートからみた大腸内視鏡5つの不安について、つくばの専門医が解説します。
目次
1. 大腸内視鏡検査で下剤が重要な理由とは?
大腸内視鏡検査では、腸の中をきれいにしておくことが大切です。
下剤で腸内の便をしっかり排出しないと、病変が見つけづらくなり、診断の精度が下がる可能性があります。
「検査より準備の方が大変だった」と感じる方も多く、特に下剤に対するハードルが高いと検査自体を敬遠してしまう方もいます。
しかしながら、実際にはCT検査、カプセル内視鏡検査などのほかの大腸を見る検査でも、大腸内視鏡検査以上に腸をきれいにする必要があること、大腸内視鏡検査以外の検査については病変があった際は再度検査が必要になるなど、下剤という観点においては、大腸内視鏡検査が大腸の検査の中で、最も苦痛が少ない検査です。
実際に、大腸検査の選択肢として、下剤などが面倒だから他の方法を希望される方もいらっしゃいますが、検査自体のつらさ以外の面では大腸内視鏡検査が優れていると言えます。
稀ではありますが、CTで大腸の検査を行って、病変を疑う結果となったので、大腸内視鏡検査をしてほしいと当院を受診される方もいらっしゃいました。
検査のつらさも当院のように鎮静剤や技術がある診療機関では特に問題になることはほとんどありません。
2. 下剤がつらい…よくある不安や悩みとは?
- 味が合わない、苦みや塩気がきつい
- 飲む量が多く、途中で気持ち悪くなった
- 飲んでも便が出なかった
- 前回の体験がトラウマになっている
こうした不安は決して珍しいことではありません。
「本当にこれ全部飲まなきゃいけないの?」と、カップを手にしたまま固まってしまう患者さんもいらっしゃいます。
そんなとき、私たち看護師はまずその方の不安に耳を傾け、「飲み方に工夫もできますよ」「少しずつでも大丈夫ですからね」と優しく声をかけることを心がけています。
3. 当院の5種類の下剤とその特徴
当院では、下剤(腸管洗浄剤)として5種類を採用しています。それぞれに特長があり、便秘傾向や味の好み、水分摂取の得手不得手などを踏まえて選定します。
モビプレップやサルプレップの場合2時間30分程度で腸管がきれいになるため、最も早いですが、ほかのものでも3時間前後ぐらいできれいになります。
下剤名 | 種類 | 味・風味 | 飲む量 | 特徴・向いている方 |
---|---|---|---|---|
ニフレック | PEG製剤 | 無味(冷やすと◎) | 約2,000 ml | 基本タイプ。便秘の方にも対応可 |
モビプレップ | PEG製剤 | レモン風味(苦味) | 約2,000 ml | 腹部膨満感が少なく、早く効く |
サルプレップ | 硫酸Mgなど | 梅しそ風味(塩気) | 約480〜960 ml | 少量で済む。 |
マグコロール | クエン酸 Mg | スポドリ風味 | 約1,800 ml | 飲みやすさあり。洗浄力は中程度 |
ビジクリア | 錠剤 | 味なし(錠剤) | 水2 L+錠剤50錠 | 味が苦手な方へ。洗浄力はやや低め |
3-1. PEG製剤(ニフレック・モビプレップ)
PEG(ポリエチレングリコール)製剤は、洗浄力が高く、腸をしっかりきれいにすることができます。
当院では、内服量の少なさ、きれいになる早さなどから、モビプレップを標準的な検査薬としています。
便秘がある方はニフレックを用いることが多いです。
ニフレックは等張液で体の負担が少なく、下剤を追加したりなど、容量の調整がしやすいためです。
3-2. サルプレップ
臨床試験でPEG製剤と同等の洗浄力が示された腸管洗浄剤です。内服量が最もすくないことと、ボトルタイプで調剤の手間がないという点で、簡便性が高いです。
3-3. マグコロール
比較的飲みやすく、味も好まれやすいタイプです。
ただし、PEG製剤に比べると洗浄力がやや弱いため、PEG製剤を飲むのが難しい方にご提案しています。
また、便秘の方には、ニフレックをメインとしつつ、高張液として、前日にマグコロールを服用していただくこともあります。
3-4. ビジクリア
錠剤タイプで、液体の味やにおいが苦手な方に好まれます。
洗浄効果はやや弱いため、前日の食事制限や下剤併用が必要なケースもあります。
また、意外と味のない水を2L 飲む方が辛いことも多いため、そのほかの下剤がどうしても合わない方にのみご提案しています。
4. 下剤は「あなたに合ったもの」を選ぶ時代へ
当院では、診察時に排便習慣、便の硬さ、水分摂取量、既往歴、前回の下剤の様子などを丁寧に確認した上で、看護師・医師が最適な下剤を提案します。
「下剤でつらい思いをしたことがある」とお話しされる方には、その経験を踏まえて飲みやすい製剤や調整法を一緒に考えていきます。
「今回は前より楽でした」と言っていただけることが、私たちの大きな励みです。
5. 院内で下剤を飲める安心感とそのメリット
当院では、院内で下剤を服用することができます。
下剤内服スペースは、パーテーションで区切られた半個室型で、トイレは8基設置しています。
アメニティーについても、Google口コミなどで、アメが良かったと評価していただいています。
初回でご自宅での服用が不安な方、高齢者の方、体調の変化が心配な方には特におすすめです。医師・看護師が近くにいる環境で、安全に検査準備が可能です。
実は、当院の院内下剤は院内で飲めるだけがポイントではありません。
検査数が多いクリニックですので、下剤がうまく飲めなくても焦らずに済みます。
どうしてかというと、件数が多いため、予定通り内服が進まなくても順番を入れ替えるなどで焦って飲む必要がないからです。
Google口コミでも、この点を評価していただいているコメントもいただいています。
さらに、当院には洗腸室と言われる、腸管洗浄を行えるスペースがあります。
下剤を頑張って飲んだけれど、十分に便が出なくて、検査できないなどの状態にならないように、どうしても便が出ない方には洗腸室で腸管洗浄を行うなどのサポートを行っています。
「せっかく頑張って下剤を飲んだのに、検査できない」、そんな不安を少しでも減らせるように我々がサポートします。
便秘だからきれいにならないかもと二の足を踏んでいらっしゃる方もご相談ください。
大腸内視鏡検査の最後の砦だと、我々は自負しています。
6. 緊急の大腸カメラや治療内視鏡にも対応できる体制
当院では、緊急の大腸内視鏡検査にも対応しています。
この際、ポリープ切除などで万一、後日出血したとしても、院内下剤などを利用できます。
出血が多い中、ご自宅で下剤を内服するのはご不安だと思います。
そういった点についても、8か所トイレのある当院であれば対応可能です。
院内で下剤を服用しているからこそ、他の患者さんの協力のもと、時間調整なども柔軟に行えるのが当院の強みです。
肛門科としても最後の砦と我々は考えており、下血などの緊急で内視鏡検査が必要なかたに多くご相談いただいている現状があります。
下血などにも不安なく過ごしていただくために努力しています。
7. 午前検査にも対応!ライフスタイルに合わせた下剤スケジュール
当院では9:30〜16:00まで大腸内視鏡検査の枠を設けています。
これにより、午前に検査を終えて午後は仕事や予定に充てたい方、午後にゆっくり準備をしたい方など、それぞれのライフスタイルに応じた提案が可能です。
特に当院では、作用時間の短い鎮静剤を用いており、検査後6時間後から体調がよければ運転可能としています。
午前から内視鏡検査を行うことで、どうしても自家用車で来院しないといけない方についてもご対応できる範囲が広がると考えています。
※午前から内視鏡検査を行う場合はご自宅で下剤内服していただくことになります。
8. 症例豊富な当院だからできる、きめ細やかな下剤調整|看護師による丁寧なサポート
看護師は、診察前の問診で便通の頻度や傾向、これまでの下剤使用歴を詳細に把握し、医師と連携して最適な下剤の選定をサポートします。
数多くの症例を見てきた経験から、「このタイプの方にはこの下剤が合いやすい」といった判断ができ、個別にきめ細かく調整することが可能です。
「飲み切れるか不安」「便が出るか心配」などの気持ちにも寄り添い、下剤の味のアドバイスや飲み方の工夫まで、しっかりとフォローいたします。
実際に、「丁寧に説明してもらったから不安はなかった」と口コミでコメントをいただくことも多いです。
当日の下剤内服を成功させるポイントとして、前日からの食事などもあります。
このあたりのご不安を少しでも解消できるように、当院では動画での説明も行っています。
私達看護師と院長の森田が作成した動画です。
9. 当院で大腸カメラを受ける方へ|最適な準備と安心の検査のために
大腸カメラの成功には、下剤の選択が極めて重要です。
当院では、医師と看護師がチームとなって、患者様の生活・体質・不安に寄り添いながら準備段階から丁寧に対応いたします。
下剤の内服タイミング、量、方法の調整だけでなく、院内でのサポート体制や緊急時対応まで含めて、万全の体制でお迎えしています。
また、検査の準備そのものに不安がある方についても、動画の説明などでご自宅で簡単に確認できるような体制を整えています。
「前回の下剤がつらかった」「初めてで不安がある」という方も、ぜひ一度ご相談ください。
当院では、AIを活用した最新の内視鏡機器、無痛内視鏡検査、消化器領域の専門医による丁寧な検査で、安心して受けていただける環境を整えています。
つくば市をはじめ、土浦市、牛久市、つくばみらい市、常総市、石岡市、阿見町、守谷市、龍ケ崎市のみならず、茨城県外も含めて広い地域から多くの患者様が来院されています。
よくある質問
Q1:下剤は最後の一滴まで飲まないと検査できませんか?
A:モビプレップやサルプレップを使用する場合は、便の具合で内服終了となります。ニフレックなどの場合については、病変を確実に見つけるには規定量の服用が基本ですが、途中でつらくなった場合は飲めた範囲で検査を行う、洗腸などで対応するなど無理がない範囲で検査を行います。。院内服用なら順番を入れ替えるなど無理なく対応できますので、遠慮なくお声かけください。
Q2:味が苦手です。飲みやすくするコツはありますか?
A:冷やすと飲みやすいことが多く、院内で下剤内服の際は冷えたものをお渡しします。また、サルプレップについては紅茶と飲み合わせがよいという話もあるので少量であれば紅茶を間に挟むなど工夫をしています。無糖でない紅茶については、成分の変化が伴うので、その場合は無糖の紅茶を用いるようにしてください。
Q3:飲んでも便が出ない、または途中で止まってしまったら?
A:排便が進まない場合は追加下剤や腸管洗浄を行います。院内下剤ならスタッフが排便状況を確認しながら対応するため、「飲んだのに検査できない」という事態を極力防げます。
Q4:吐き気や腹痛が強いときは中止すべきですか?
A:我慢できない吐き気や強い腹痛が出たら直ちに服用を中止し、スタッフへお知らせください。特に注意が必要なのは、進行大腸がんで腸管がつまっているのに下剤を服用しすぎてしまい、閉塞性の大腸炎となってしまうことです。多くの場合は、再開して検査ができることが多いです。
Q5:服用中に水分を2 Lも飲めるか不安です…
A:サルプレップは480 mL、ビジクリアは錠剤+水2 Lなど量が少ない選択肢もあります。便秘傾向や体格を考慮して最適量を決定するので、飲めるか不安な方もご相談ください。
Q6:持病の薬(糖尿病薬・高血圧薬など)はどうしたら良い?
A:多くの薬は通常通り服用できますが、糖尿病薬は低血糖回避のため休薬または減量が必要な場合があります。診察時にすべての服薬内容をお知らせください。
Q6:つくば地域でお勧めの大腸内視鏡検査クリニックはありますか?
A:大腸内視鏡検査は専門性の高い検査であるため、専門医がいること、院内下剤対応可能であること、AIが搭載された内視鏡を使用していること、症例が多いこと、日帰りポリープ切除がその場でできることなどが重要であると言えます。当院ではそういったことに加えて、胃内視鏡検査の同時検査や24時間WEB予約なども評価されて、お勧めクリニックとして評価されています。
▶当院がお勧めクリニックとして掲載されました。
【作成・監修】
辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科クリニック
無痛内視鏡検査を目指すグループ 看護師
院長 森田 洋平(日本消化器内視鏡学会 専門医・MPH)