肛門出血はいつ病院へ行くべき?専門医が教える受診の目安|辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科クリニック|茨城県つくば市の大腸・肛門外科 消化器内科 内視鏡検査

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肛門出血はいつ病院へ行くべき?専門医が教える受診の目安

公開日:2025年10月24日 / 更新日:2025年10月14日

1.肛門出血を見つけたときの正しい対応

トイレで排便後、便や紙に血がついているのを見つけると、誰でも不安になるものです。肛門からの出血は、痔による出血が最も多いですが、中には命に関わる疾患が隠れていることもあります。肛門出血を見つけたとき、どのように対応すべきなのでしょうか。

肛門出血を見つけたら、まずは冷静になることが大切です。パニックになると適切な判断ができなくなります。血の色や出方、量、痛みの有無などをよく観察しましょう。

鮮やかな赤色の血液は肛門や直腸からの出血を示唆し、黒っぽい血は消化管の上部からの出血の可能性があります。また、排便時のみの出血なのか、それ以外でも出血があるのかも重要な情報です。

2.血便と下血の違い

肛門からの出血には、「血便」と「下血」の2種類があります。これらは出血の場所によって区別されます。

血便とは、便に血液が混じっている状態を指します。肛門に近い位置からの出血で、鮮やかな赤色をしているのが特徴です。いぼ痔(内痔核)や切れ痔(裂肛)などの肛門疾患が原因であることが多いですが、直腸やS状結腸の病変でも起こります。

一方、下血は血便よりは赤黒い出血です。肛門に近くない部位からの出血であることが多いです。胃や十二指腸など消化管上部、口側の大腸にあたる上行結腸、横行結腸、下行結腸などからの出血です。血液そのもののような出血ではなく、黒っぽい便になっていることがおおいです。

どちらの場合も、原因となる疾患は多岐にわたります。痔のような良性疾患から大腸がんのような悪性疾患まで、様々な可能性があるため、自己判断せずに専門医の診察を受けることが重要です。

3.肛門出血の主な原因疾患

肛門出血を引き起こす主な疾患について解説します。これらの疾患は症状が似ていることもあり、専門医による正確な診断が必要です。

痔核(いぼ痔)

肛門出血の最も一般的な原因が痔核、いわゆる「いぼ痔」です。肛門周辺の粘膜下には血管が集まってクッションのような部分があり、これが肛門を閉じる働きをしています。

便秘や下痢などで肛門への負担が重なると、このクッションを支える組織が引き伸ばされて血管が膨らみ、痔核が形成されます。痔核は発生場所により内痔核と外痔核に分類されます。

内痔核は歯状線より上(直腸側)に発生し、通常は痛みを伴いませんが、出血や脱出などの症状があります。Goligher分類によりⅠ度からⅣ度まで分類され、Ⅲ度以上になると手術が必要になることが多いです。出血だけの段階はI度に分類され、ほとんどの場合は手術が不要です。 I

外痔核は歯状線より下(肛門側)に発生し、激しい痛みを伴うことが特徴です。肛門近傍に硬いしこりとして触れることもあります。

裂肛(切れ痔)

裂肛は、硬い便などにより肛門上皮が裂けた状態で、「切れ痔」とも呼ばれます。排便時に激しい痛みや出血を伴うのが特徴です。肛門の後方(背側)に好発しますが、前方(腹側)にもできやすいです。

急性の裂肛であれば、適切な治療で比較的早く治りますが、慢性化すると治療が難しくなります。慢性裂肛がひどくなると肛門が固く脆くなるため症状がなかなか改善しなくなります。また、固くなった結果として肛門が狭くなり、細い便しか出なくなることがあります。この段階では手術が必須となります。

大腸がん

肛門出血の原因として見逃してはならないのが大腸がんです。特に直腸やS状結腸にできたがんは、便が擦れることで出血することがあります。

初期には自覚症状がほとんどないため、出血に気づいたときには進行していることもあります。がんの組織は壊れやすく、周囲に血管を集める性質があるため、進行すると持続的に出血しやすくなります。

大腸がん検診による便潜血検査による早期発見が重要です。指摘された際はかならず大腸内視鏡検査を行いましょう。

血便があった場合は、痔があるからと自己判断せず、大腸がんの可能性も考えて、できるだけ早く消化器内科や肛門科を受診することが大切です。

その他の疾患

肛門出血の原因となる疾患は他にも多くあります。大腸ポリープも便が擦れて出血することがあります。良性でも将来がん化する可能性があるため、内視鏡検査で発見した場合はその場で切除することが一般的です。

また、潰瘍性大腸炎やクローン病といった炎症性腸疾患、虚血性腸炎、大腸憩室出血なども血便の原因となります。これらは専門的な検査と治療が必要な疾患です。

4.肛門出血で病院を受診すべきタイミング

肛門出血があった場合、どのようなタイミングで病院を受診すべきでしょうか。基本的には、肛門出血を認めたら、まずは肛門科や消化器内科を受診することをお勧めします。

特に以下のような場合は、早急に受診することが重要です。

すぐに受診すべき症状

出血量が多い場合は、迷わず早急に受診してください。便器が真っ赤になるほどの大量出血は、大量に出血している可能性があり、その日のうちに内視鏡的な止血や手術が必要な憩室出血などの可能性があります。できれば、肛門鏡を用いた診察を早急に行い、緊急性のチェックを行うことが重要です。できれば、緊急で内視鏡止血ができるような施設を受診することがおすすめです。

 

また、排便時以外にも出血がある場合も要注意です。痔による出血は主に排便時に起こりますが、排便と関係なく出血する場合は、大腸がんなど命に関わる疾患の可能性があります。

我慢できないほどの激しい痛みを伴う出血も、すぐに受診すべき症状です。切開して膿を出したり、血栓を除去したりする必要がある場合があります。

数日以内に受診すべき症状

出血量が少なく、痛みもそれほどない場合でも、繰り返し出血する場合は数日以内に受診することをお勧めします。特に40歳以上の方は、大腸がんのリスクが高まる年齢ですので、一度は内視鏡検査を受けることが大切です。

便秘と下痢を繰り返す、残便感がある、便に粘液が付着している、便が細くなった、腹痛があるなどの症状が血便と一緒にある場合も、できるだけ早く受診してください。

自己判断の危険性

肛門出血があっても、「痔だから大丈夫」と自己判断して市販薬で対処する方が多いのが現実です。しかし、これには大きな危険が潜んでいます。

痔と大腸がんは症状が似ていることがあり、痔があるからといって大腸がんではないとは言えません。実際、痔の症状で受診した患者さんの中に大腸がんが見つかるケースは少なくありません。

そもそも痔がある人が全体の半分ぐらいであることを考えれば、痔があるからといって大腸がんからの出血ではないということ自体が難しいです。
【痔があるから大丈夫は危険。大腸がんのリスク。】

「痔には手遅れはないが、大腸がんには手遅れがある」という言葉があります。痔だと思って放置していたら、実は大腸がんで、発見が遅れてステージが進行していたというケースも報告されています。

5.肛門出血の検査と診断

肛門出血の原因を特定するためには、いくつかの検査が必要です。どのような検査が行われるのか見ていきましょう。

問診と視診・触診

まず医師は、出血の状況(量、色、タイミングなど)や痛みの有無、便通の状態、既往歴などについて詳しく質問します。その後、肛門の外観を観察し、指診(医師が指を肛門に挿入して内部を触る検査)を行います。

これらの基本的な診察だけでも、痔核や裂肛などの診断がつくことが多いです。しかし、出血の原因が肛門よりも奥にある場合は、さらに詳しい検査が必要になります。

肛門鏡診察

肛門鏡という器具を用いてお尻の診察を行うことが重要です。肛門鏡を用いることで直接、いぼ痔や切れ痔の状態を観察するとともに、脱出の具合、慢性化の具合などを調べることができます。

実は、大腸内視鏡検査は大腸を調べる検査であり、肛門を調べる検査ではありません。したがって、大腸肛門病学会の第2版ガイドラインでも、肛門鏡での肛門診察は必須の事項として記載されています。出血の原因を調べるために大腸内視鏡検査を行って、痔だと診断されたとおっしゃる方も多いですが、痔の診断には肛門鏡診察が必須です。
【大腸内視鏡検査だけでは痔の診断ができない。肛門鏡が必須な理由。】

大腸内視鏡検査と肛門診察について

内視鏡検査

肛門出血の原因を確実に診断するためには、内視鏡検査が最も有効です。特に大腸内視鏡検査は、大腸全体を観察できるため、大腸がんやポリープなどの発見に欠かせません。

内視鏡検査というと痛みや苦しさを心配される方も多いですが、現在では鎮静剤を使用した「苦痛の少ない内視鏡検査」が一般的になっています。辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科クリニックでは、法人全体での鎮静剤使用率が92%(2023年度実績)と高く、患者さんの負担を最小限に抑える工夫をしています。実際、2024年の14100人の大規模アンケート調査でも多くの方が同様の不安を抱えています。
【大規模アンケート調査からみる大腸内視鏡検査5つの不安】

2025年6月24日に初めて、内視鏡検査検査に対しての鎮静剤としてアネレムという薬剤が保険収載されました。これにより、正式に苦痛の少ない大腸内視鏡検査が保険診療として認められたことになります。当院ではいち早く2025年9月1日から実際に使用を開始しております。

【アネレムが告げるつらい内視鏡の終焉】

また、内視鏡検査中にポリープが見つかった場合は、その場で切除することも可能です。これにより、将来的な大腸がんのリスクを減らすことができます。

その他の検査

肛門疾患の診断には、デジタル肛門鏡や肛門エコーなどの専門的な検査機器も使用されます。これらにより、肛門の状態をより詳細に観察することができます。

また、血液検査では貧血の有無や炎症の程度を調べることができます。長期間にわたる少量の出血でも貧血を起こすことがあり、その場合は早急な対応が必要です。

6.肛門出血の治療法

肛門出血の治療は、原因となる疾患によって異なります。ここでは主な疾患の治療法について解説します。

痔核(いぼ痔)の治療

内痔核の治療は、症状の程度(Goligher分類)によって異なります。Ⅰ度やⅡ度の軽度の内痔核では、生活習慣の改善や薬物療法が中心となります。便秘の改善や入浴による局所の清潔保持、坐剤や軟膏の使用などが基本的な治療です。

Ⅲ度以上の内痔核では手術が必要になることが多いですが、痛みの少ない日帰り手術も可能になっています。硬化療法(ジオン注射、ALTA療法)は、注射一本で治療できる方法として注目されています。

外痔核は、急性期には保存的治療(冷却や痛み止め)が行われますが、血栓化した外痔核は切開して血栓を除去することもあります。

裂肛(切れ痔)の治療

急性の裂肛は、便を柔らかくする薬や痛み止め、局所の炎症を抑える薬などの保存的治療で改善することが多いです。入浴によって肛門を清潔に保ち、局所の血行を良くすることも大切です。

慢性化した裂肛では、肛門括約筋の緊張を緩める手術(側方皮下内括約筋切開術)が行われることがあります。これにより、痛みが軽減し、裂肛の治癒が促進されます。

進行して狭窄した場合は、肛門の筋肉を一部切開するなど大きな手術が必要になることがあります。早めに受診しましょう。

大腸がんの治療

大腸がんが見つかった場合は、がんの進行度(ステージ)に応じた治療が行われます。早期がんであれば内視鏡的切除が可能ですが、進行がんでは手術、抗がん剤治療、放射線治療などが必要になります。

大腸がんは早期発見・早期治療が非常に重要です。定期的な検診や、血便などの症状があった場合の速やかな受診が大切です。

7.肛門出血の予防と日常生活での注意点

肛門出血を予防するためには、日常生活での注意が大切です。特に痔の予防と再発防止に焦点を当てた生活習慣の改善が効果的です。

食生活の改善

便秘や下痢は肛門への負担を増やし、痔の原因となります。バランスの良い食事と十分な水分摂取を心がけましょう。特に食物繊維は便の量を増やし、便通を整える効果があります。

辛い食べ物や刺激物、アルコールの過剰摂取は肛門部の血流を増やし、痔核の症状を悪化させることがあるため、控えめにすることをお勧めします。

排便習慣の見直し

トイレでの長時間の読書やスマートフォン使用は避けましょう。長時間座ることで肛門への圧力が増し、痔の原因となります。

また、便意を感じたらなるべく我慢せず、適切なタイミングでトイレに行くことが大切です。便が硬くなると排便時の負担が増え、裂肛などのリスクが高まります。

適度な運動と体重管理

適度な運動は腸の蠕動運動を促進し、便通を良くする効果があります。特にウォーキングなどの有酸素運動がお勧めです。

また、肥満は腹圧を上げ、痔のリスクを高めます。適正体重を維持することも予防につながります。

清潔保持

肛門部の清潔を保つことも重要です。排便後はやさしく拭き、可能であれば温水で洗浄するとよいでしょう。ただし、強くこすると刺激になるため注意が必要です。

入浴は血行を促進し、肛門部の緊張を緩和する効果があります。毎日の入浴習慣を心がけましょう。

まとめ:肛門出血は自己判断せず専門医へ

肛門出血は、痔による出血が最も多いですが、大腸がんなどの重大な疾患が隠れていることもあります。出血の色や量、タイミング、痛みの有無などをよく観察し、適切なタイミングで専門医を受診することが大切です。

特に、大量の出血、排便時以外の出血、激しい痛みを伴う出血、発熱を伴う出血などがある場合は、早急に受診してください。また、40歳以上の方は、一度は大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。

「痔には手遅れはないが、大腸がんには手遅れがある」という言葉があるように、自己判断で市販薬に頼るのではなく、専門医による適切な診断と治療を受けることが重要です。

辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科クリニックでは、鎮静剤を使用した苦痛の少ない内視鏡検査や、専門的な肛門診察を提供しています。肛門出血でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

肛門の健康は生活の質に直結します。日常生活での予防と、異常を感じたときの早めの受診で、快適な毎日を送りましょう。

詳しい情報や受診のご予約は、辻仲つくば 胃と大腸内視鏡・肛門外科クリニックのウェブサイトをご覧ください。


【作成・監修】
辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科クリニック
院長 森田 洋平(日本消化器内視鏡学会 専門医、MPH(公衆衛生大学院))

MPHは予防医学、疫学、統計のスペシャリストの学位です。大腸がんの予防的なデータを実践するスペシャリストといえます。


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