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血便の緊急度判断〜すぐ受診すべき症状と様子を見てよい場合

公開日:2026年02月23日 / 更新日:2026年02月23日

血便の緊急度判断〜すぐ受診すべき症状と様子を見てよい場合

トイレで便器が赤く染まっているのを見たとき、誰もが驚き、不安を感じるものです。

「これは痔だろうか」「それとも何か重大な病気なのだろうか」と、様々な考えが頭をよぎります。血便は体からの重要なサインであり、その緊急度を正しく判断することが、適切な対応への第一歩となります。

消化器内科・内視鏡・肛門外科を専門とする医師として、日々多くの患者さんの血便に関する相談を受けています。中には「もっと早く受診していれば」と思うケースもあれば、「様子を見ても問題なかった」というケースもあります。血便の緊急度は、その色や量、随伴症状によって大きく異なるのです。

本記事では、血便が出たときにどのように緊急度を判断すればよいのか、すぐに医療機関を受診すべき症状と様子を見てもよい場合の違い、そして大腸内視鏡検査が必要となるケースについて、専門医の視点から詳しく解説します。

血便の色と量から分かる緊急度の目安

血便の緊急度を判断する上で、最も重要な手がかりとなるのが「色」と「量」です。

これらの要素は、出血している部位や出血量を推測する上で非常に有用な情報となります。

鮮やかな赤色の血便が示すもの

便器の水が真っ赤に染まるような鮮血便は、肛門や直腸など、消化管の出口に近い部分からの出血を示唆します。

トイレットペーパーに少量の血が付着する程度であれば、痔や裂肛(切れ痔)の可能性が高いと考えられます。排便時に痛みを伴う場合は、特にこの可能性が高まります。しかし、痛みがないのに大量の鮮血が出る場合は、大腸憩室出血や大腸ポリープ、大腸がんなどの可能性も考慮する必要があります。

便の表面にうっすらと血が混じる程度で、他に腹痛や発熱などの症状がなく、数日以内に出血が止まった場合は、緊急性はそれほど高くないと判断できます。ただし、繰り返し出血する場合は、背後に隠れた病気を見逃さないためにも受診をお勧めします。

暗赤色や黒色の便が意味すること

暗赤色の血便は、大腸の奥の方で出血し、時間が経過してから排出されている可能性を示します。

血液が腸内を通過する間に変色するため、鮮血よりも暗い色になるのです。潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患、あるいは大腸の奥の方にできたポリープや腫瘍が原因となることがあります。

一方、イカスミや海苔の佃煮のような真っ黒でドロッとした便(タール便)が出た場合は、胃や十二指腸などの上部消化管からの出血が疑われます。血液が胃酸と混ざることで黒く変色し、粘り気のあるタール状になった状態です。胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がん、食道静脈瘤破裂などが原因となることがあり、早急な受診が必要です。

出血量による緊急度の違い

便器が真っ赤に染まるほどの大量出血がある場合は、緊急性が高いと判断すべきです。

短時間で出血量が増える場合や、排便後も出血が続く場合は、大腸や直腸の異常が疑われます。特に、めまいやふらつき、動悸などの貧血症状を伴う場合は、体内で慢性的な出血が続いている恐れがあるため、ためらわずに受診してください。

少量の出血であっても、数日以上続いている場合や、出血の量が徐々に増えてきている場合は、早めに医療機関を受診することをお勧めします。

すぐに受診すべき危険なサイン

血便の中には、命に関わる深刻な出血の恐れがあるものも存在します。

以下のような症状がある場合は、今すぐ医療機関を受診してください。

大量出血と貧血症状

便器が真っ赤に染まるほどの大量出血は、緊急性の高いサインです。

このような状態では、短時間で大量の血液が失われている可能性があります。さらに、めまい、立ちくらみ、動悸、冷や汗、顔面蒼白などの症状を伴う場合は、急性の貧血やショック状態に陥っている恐れがあります。意識がもうろうとする場合は、出血性ショックの可能性もあるため、家族や近くにいる人に助けを求め、すぐに救急車を呼んでください。

激しい腹痛や高熱を伴う血便

血便に加えて強い腹痛や発熱がある場合は、感染性腸炎や炎症性腸疾患の可能性があります。

腸内の炎症や感染症の影響が考えられるため、放置せずに診察を受けることが重要です。特に、腹痛が徐々に強くなっている場合や、高熱(38度以上)が続いている場合は、早急な対応が必要となります。

黒色便(タール便)の出現

真っ黒でドロッとした便が出た場合は、上部消化管からの出血が疑われます。

胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がん、食道静脈瘤破裂などが原因となることがあり、これらは命に関わる可能性のある疾患です。タール便が出た場合は、夜間や休日であっても救急外来を受診することをお勧めします。

様子を見てもよい場合の判断基準

すべての血便が緊急性を持つわけではありません。

以下の条件がすべて当てはまる場合は、緊急性はそれほど高くなく、痔などが原因である可能性が考えられます。

軽度の血便の特徴

トイレットペーパーに少し血がつく程度の出血で、便の表面にうっすらと血が混じる程度であれば、様子を見ることも選択肢の一つです。

お腹の痛みや発熱など、他の体調不良がなく、数日以内に血が出なくなった場合は、痔や軽度の裂肛が原因である可能性が高いと考えられます。ただし、これらは「今すぐ救急車を呼ぶ必要はない」という意味であり、何度も繰り返す場合は、背後に隠れた病気を見逃さないためにも一度ご相談ください。

食べ物による便の色の変化

イチゴやトマトなど、赤い食べ物を摂取した後に赤い便が出た場合は、血便ではない可能性があります。

普段通りに元気な様子で、他に気になる症状がない場合は、食べ物の影響である可能性が高いでしょう。ただし、違う症状が出るようなら、すぐに医療機関を受診することをお勧めします。

様子見の期間と注意点

様子を見る場合でも、数日以内に改善しない場合や、症状が悪化する場合は受診が必要です。

また、40歳を過ぎて初めて血便を経験した場合や、健康診断で貧血を指摘されたことがある場合は、大腸ポリープや大腸がんなどの可能性も考慮し、早めに受診することをお勧めします。

血便を伴う主な疾患と特徴

血便の原因となる疾患は多岐にわたります。

ここでは、代表的な疾患とその特徴について解説します。

痔と裂肛(切れ痔)

血便の最も一般的な原因は、痔や裂肛です。

排便時に肛門の内部または外部の皮膚が裂け、排便時やその直後に痛みと血の付いた便が出ます。便が硬い場合や大きい場合、または頻繁な軟便のために、肛門が傷つくことが原因です。治療は軟膏で肛門を保護し、便秘を改善することが中心となります。

大腸ポリープと大腸がん

大腸ポリープは、大腸の粘膜にできる隆起性の病変で、一部はがん化する可能性があります。

便の表面に血が付着する程度の出血が特徴で、痛みを伴わないことが多いです。40歳以上で初めて血便を経験した場合や、家族に大腸がんやポリープを患った方がいる場合は、大腸内視鏡検査を強くお勧めします。早期発見により、内視鏡的にポリープを切除することで、がんへの進行を防ぐことができます。

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)

潰瘍性大腸炎は大腸に症状が出る疾患で、再発する下痢、血便、腹痛などが特徴です。

クローン病は炎症が消化管の粘膜に潰瘍やただれができる疾患で、症状は多様です。下痢、血便、腹痛などに加えて、体重減少や成長障害などの消化器系以外の症状も報告されています。これらの疾患は慢性的な経過をたどることが多く、長期的な管理が必要となります。

大腸憩室出血

大腸憩室は、大腸の壁が外側に袋状に突出したもので、加齢とともに増加します。

憩室内の血管が破れると、痛みを伴わない大量の鮮血便が突然出現することがあります。多くの場合は自然に止血しますが、繰り返す場合や大量出血の場合は、内視鏡的止血術や血管造影下塞栓術が必要となることもあります。

虚血性大腸炎

虚血性大腸炎は、大腸への血流が一時的に低下することで炎症が生じる疾患です。

突然の腹痛で発症し、その後に下痢や血便が生じます。便秘がちな高齢の女性に多く見られますが、若い方にも増えている病気です。ほとんどの場合は一過性の症状で、絶食と点滴による腸管の安静で改善しますが、腸管が壊死している場合は緊急手術が必要となることもあります。

大腸内視鏡検査が必要となるケース

血便の原因を正確に突き止めるには、大腸内視鏡検査が最も有効な手段です。

以下のような場合は、検査を強く検討することをお勧めします。

原因不明の血便が続く場合

原因がはっきりしない血便が続いている場合は、大腸内視鏡検査によって原因を特定することが重要です。

特に、出血の量が徐々に増えてきている場合や、腹痛、下痢、便秘などの便通の異常を伴っている場合は、大腸ポリープや大腸がん、炎症性腸疾患などの可能性を確認する必要があります。

便潜血検査で陽性反応が出た場合

健康診断の便潜血検査で陽性反応が出た場合は、必ず大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。

便潜血検査は、目に見えない微量の出血を検出する検査で、陽性の場合は大腸ポリープや大腸がんの可能性があります。早期発見により、内視鏡的治療で完治できる可能性が高まります。

40歳以上で初めて血便を経験した場合

40歳以上で初めて血便を自覚した場合は、大腸がんのリスクが高まる年齢であることを考慮し、検査を検討すべきです。

家族に大腸がんやポリープを患った方がいる場合は、さらにリスクが高まるため、定期的な検査が推奨されます。

当院での対応

当院では、消化器内科・内視鏡・肛門外科を専門とする医師が、血便の原因を正確に診断し、適切な治療を提供しています。

大腸内視鏡検査は、苦痛に配慮した方法で実施しており、必要に応じて鎮静剤を使用することも可能です。検査の結果、ポリープが見つかった場合は、その場で切除することもできます。血便でお悩みの方は、一人で悩まず、まずは気軽にご相談ください。

受診の予約はこちらから、お電話でのお問い合わせはこちら、LINE/WEBでの相談はこちらから可能です。

まとめ

血便は体からの重要なサインであり、その緊急度を正しく判断することが適切な対応への第一歩です。

鮮やかな赤色の大量出血、黒色のタール便、激しい腹痛や高熱を伴う血便、貧血症状を伴う血便などは、すぐに医療機関を受診すべき危険なサインです。一方、トイレットペーパーに少量の血が付く程度で、他に症状がなく、数日以内に改善する場合は、様子を見ることも選択肢の一つとなります。

ただし、繰り返し出血する場合や、40歳以上で初めて血便を経験した場合、健康診断で便潜血陽性を指摘された場合などは、大腸内視鏡検査を受けることをお勧めします。早期発見により、多くの疾患は治療可能です。血便でお悩みの方は、一人で悩まず、専門医にご相談ください。

【作成・監修】
辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科クリニック
院長 森田 洋平(日本消化器内視鏡学会 専門医、MPH(公衆衛生大学院))

MPHは予防医学、疫学、統計のスペシャリストの学位です。大腸がんの予防的なデータを実践するスペシャリストといえます。