肛門出血の原因となる6つの病気〜専門医が教える見分け方|辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科クリニック|茨城県つくば市の大腸・肛門外科 消化器内科 内視鏡検査

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肛門出血の原因となる6つの病気〜専門医が教える見分け方

肛門出血を見逃さないで!専門医が解説する原因と対処法

トイレの後、便器が真っ赤になっていたり、トイレットペーパーに血が付いていたりして驚いた経験はありませんか? 肛門からの出血は、多くの方が一度は経験する症状です。

実は肛門からの出血は、単なる痔だと思って放置すると取り返しのつかないことになる可能性もあるのです。大腸がんなどの重篤な疾患が隠れていることもあります。

私は消化器外科医として長年、肛門疾患の診療に携わってきました。この記事では、肛門出血を引き起こす7つの主な病気とその見分け方について、専門的な立場から解説します。

出血の状態や特徴を知ることで、いつ病院を受診すべきか、どんな検査が必要かの判断材料になるでしょう。

1. 内痔核(いぼ痔)による出血

肛門からの出血で最も多いのが、内痔核(いぼ痔)によるものです。肛門の内側にできる痔で、排便時に力むことで肛門内部の血管がうっ血し、いぼ状に膨らんだ状態です。

内痔核からの出血には、以下のような特徴があります。

  • 鮮やかな赤色の血が出る
  • 排便時に出血することが多い
  • 痛みをほとんど伴わない
  • 便器が血で染まるほどの大量出血の場合もある
  • トイレットペーパーに付着する程度の少量出血の場合もある

内痔核は痛みを感じにくい場所にできるため、出血して初めて気づくことが多いのです。
便秘や下痢が続いたり、長時間のトイレでのスマホ使用など、排便時に過度な力みが続くと悪化します。

出血量が多くても、内痔核自体は命に関わる病気ではありません。しかし、大量出血が続くと貧血を起こすことがあります。
また、内痔核が破れて大出血することもあり、その場合はすぐに医療機関を受診する必要があります。

どうですか? あなたも排便時に血が出た経験はありませんか?

2. 裂肛(きれ痔)による出血

裂肛は、いわゆる「切れ痔」と呼ばれる状態です。硬い便が通過する際に肛門の粘膜が裂けてしまうことで起こります。

裂肛による出血の特徴は以下の通りです。

  • 鮮血が少量出る(トイレットペーパーに付く程度)
  • 強い痛みを伴う(排便時に特に痛い)
  • 排便後も痛みが続くことがある
  • 便秘と下痢を繰り返すことで悪化する

裂肛は内痔核と異なり、痛みが主な症状です。「排便が怖い」と感じるほどの激痛を伴うこともあります。


裂肛を繰り返すと慢性化し、治りにくくなります。慢性裂肛になると、お通じの後1日中痛いといった状況が続くこともあります。
さらに悪化すると肛門が狭くなり、大きな手術が必要になることがあります。
したがって、早めの治療が大切です。
一時的な裂肛は適切な治療で改善することが多いですが、慢性化すると手術が必要になることもあります。

3. 大腸がんによる出血

肛門からの出血で最も注意が必要なのが大腸がんです。特に直腸がんは肛門に近い部位に発生するため、肛門からの出血として症状が現れることがあります。

大腸がんによる出血の特徴は以下の通りです。

  • 排便時以外にも出血することがある
  • 血液が便に混じる(血便)
  • 暗赤色の血が出ることもある
  • 徐々に進行し、便が細くなる、便秘と下痢を繰り返すなどの症状を伴うこともある
  • 貧血の症状(めまい、倦怠感など)を伴うこともある


大腸がんは早期には症状がほとんどないため、出血などの症状が現れた時にはある程度進行している可能性があります。
しかし、早期に発見できれば内視鏡治療や腹腔鏡手術で完治が可能な疾患です。

「痔には手遅れはないが、大腸がんには手遅れがある」という言葉があります。
痔を患っている人で大腸がんが見つかった時は、すでにステージが進んでいることが多いのです。出血を痔だと思って放置してしまうことが原因です。

40歳を過ぎたら、一度内視鏡検査を受けることをお勧めします。
当院では鎮静剤を使用した苦痛の少ない内視鏡検査を提供しており、検査への不安や恐怖感が大きい方でもリラックスした状態で検査を受けていただけます。

4. 潰瘍性大腸炎による出血

潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜にびらんや潰瘍ができる炎症性腸疾患です。原因は完全には解明されていませんが、自己免疫の異常や腸内細菌、食生活習慣が関与していると考えられています。

潰瘍性大腸炎による出血の特徴は以下の通りです。

  • 血液に粘液が混じる
  • 下痢を伴うことが多い
  • 腹痛を伴うことが多い
  • 症状が良くなったり悪くなったりを繰り返す
  • 体重減少や発熱などの全身症状を伴うこともある

潰瘍性大腸炎の発症者数は年々増加しており、男女比は1:1で性別による差はありません。重症化すると高度の貧血や穿孔(腸に穴があく)を起こすこともあるため、症状が気になる場合は早期に医療機関への受診が必要です。

私は消化器内視鏡専門医として、多くの潰瘍性大腸炎患者さんを診てきました。早期発見と適切な治療により、多くの患者さんが症状をコントロールしながら日常生活を送れるようになっています。

5. 大腸憩室出血による出血

大腸憩室とは、大腸の壁の一部が外側に向かって袋状に飛び出した状態です。この憩室から出血することがあり、これを大腸憩室出血と呼びます。

大腸憩室出血の特徴は以下の通りです。

  • 突然、大量の暗赤色の血が出る
  • 腹痛を伴わないことが多い
  • 自然に止まることが多いが、再発することもある
  • 高齢者や便秘気味の方に多い

日本では高齢化や食事の欧米化に比例して、憩室出血と診断される患者さんが増えてきています。特に日本人ではS状結腸からの出血が多いと言われています。

大腸憩室出血は多くの場合、自然に止まりますが、出血が続く場合は内視鏡的止血術などの治療が必要になることもあります。また、憩室炎を併発すると腹痛や発熱などの症状が現れることもあります。

私の臨床経験では、大腸憩室出血は痔による出血と間違えられることが多いです。突然の大量出血があった場合は、自己判断せずに医療機関を受診することをお勧めします。

6. 虚血性大腸炎による出血

虚血性大腸炎は、大腸への血流が一時的に減少または途絶えることで、大腸の粘膜や粘膜下層に虚血性の障害が起こる疾患です。

虚血性大腸炎による出血の特徴は以下の通りです。

  • 強い腹痛の後に血便が出る
  • 左側腹部の痛みを伴うことが多い
  • 下痢を伴うことが多い
  • 高齢者に多い
  • 便秘や下痢などの排便習慣の急激な変化がきっかけになることもある

虚血性大腸炎は、多くの場合1〜2週間で自然に治癒しますが、重症例では腸管壊死や穿孔を起こすこともあるため、強い腹痛と血便がある場合は早急に医療機関を受診する必要があります。

必ずしも高齢者の疾患とはいえず、若い方でも虚血性腸炎を発症することも多いです。原因について、はっきりわかっておらず、偶然という他ないのが現状です。

肛門出血を見分けるポイントと受診の目安

肛門からの出血があった場合、どのような点に注意して見分け、いつ病院を受診すべきかをまとめます。

出血の見分けポイント

  • 出血の色:鮮やかな赤色なら肛門近くからの出血、暗赤色や黒色なら大腸や上部消化管からの出血の可能性
  • 出血のタイミング:排便時のみか、排便と関係なく出血するか
  • 痛みの有無:痛みを伴うなら裂肛や血栓性外痔核の可能性、痛みがなければ内痔核や大腸がんの可能性
  • 出血量:少量か大量か、持続的か一時的か
  • 随伴症状:腹痛、下痢、便秘、発熱などの症状があるか

すぐに受診すべき症状

  • 大量の出血がある場合
  • 排便時以外にも出血する場合
  • 出血が1週間以上続く場合
  • 強い痛みを伴う場合
  • 発熱や腹痛などの全身症状を伴う場合
  • 40歳以上で初めて肛門出血がある場合(大腸がんのリスクが高まる年齢)
  • 便潜血検査陽性

肛門からの出血は、多くの場合は痔が原因ですが、大腸がんなどの重篤な疾患が隠れていることもあります。また、いぼ痔の方が50%程度、切れ痔の方が10%程度はいることが知られており、痔がある人の方が多いことを考えれば、痔があるからといって大腸がんがないとは全く言えない現状もあります。特に40歳を過ぎたら、出血の原因をしっかり特定するために、一度内視鏡検査を受けることをお勧めします。

何も検査をせずに「自分は大腸がんではない」とおっしゃる方が多いのですが、診察や検査をせずに判断することは大変危険です。便潜血検査のデータですが、自分が痔があると思っているかどうかと大腸がん、大腸ポリープの発見については、差がないことが知られており、ご自身の感覚が当てにならないことも知られています。

【参考】「痔だから大丈夫」は危険!便潜血検査陽性で見過ごされがちな大腸がんのリスク


当院では、鎮静剤を使用した苦痛の少ない内視鏡検査を提供しており、検査への不安や恐怖感が大きい方でもリラックスした状態で検査を受けていただけます。また、女性医師による診察・検査日も設けており、女性の患者さんでも安心して受診いただけます。

まとめ

肛門からの出血は、その状態によって様々な病気が考えられます。出血を自己判断で痔だと思い込まず、特に以下のような場合は専門医の診察を受けることが重要です。

  • 出血が続く場合
  • 40歳以上の方
  • 大腸がんの家族歴がある方
  • 便通の異常(便秘や下痢)が続く方

辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科クリニックでは、痔の日帰り手術にも対応しており、専門的な診断と治療を受けることができます。また、女性医師による診察日も設けており、女性の方も安心して受診できる環境が整っています。

痔は早期治療が何よりも大切です。少しでも気になる症状があれば、ためらわずに専門医に相談してください。

痔の症状でお悩みの方は、専門医による適切な診断と治療を受けるために、辻仲つくば 胃と大腸内視鏡・肛門外科クリニックにご相談ください。豊富な治療実績と専門性の高い医師による診療で、あなたの症状改善をサポートします。



【作成・監修】
辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科クリニック
院長 森田 洋平(日本消化器内視鏡学会 専門医、MPH(公衆衛生大学院))

MPHは予防医学、疫学、統計のスペシャリストの学位です。大腸がんの予防的なデータを実践するスペシャリストといえます。


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