肛門出血の原因と考えられる病気〜専門医が解説|辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科クリニック|茨城県つくば市の大腸・肛門外科 消化器内科 内視鏡検査

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肛門出血の原因と考えられる病気〜専門医が解説

肛門出血を見つけたときの対処法と受診の目安

1.肛門出血を見つけたときの対処法と受診の目安

トイレで用を足した後、トイレットペーパーに鮮やかな赤色が付いているのを見つけたことはありませんか?あるいは、便器の水が赤く染まっているのを目にして驚いた経験はないでしょうか。

肛門からの出血は、多くの方が一度は経験する症状です。その原因はさまざまで、軽度の痔から重篤な疾患まで幅広く考えられます。出血の状態(色、量、タイミングなど)によって、考えられる疾患が異なってくるのです。

本記事では、肛門科専門医の立場から、肛門からの出血の原因となる疾患と、それぞれの特徴、受診の目安について詳しく解説します。出血を見つけたときの正しい対処法も併せてご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

2.肛門出血の特徴から考えられる病気

肛門からの出血は、その特徴によって原因となる疾患をある程度推測することができます。出血の色、量、タイミング、痛みの有無などが重要な手がかりとなります。

まず、出血の色ですが、鮮やかな赤色の場合は肛門や直腸など下部消化管からの出血が考えられます。一方、黒っぽい血や暗赤色の場合は、胃や十二指腸などの上部消化管からの出血が疑われます。胃や十二指腸からの出血で便が黒い場合は多量な出血であるため、体調は問題なく色のみの変化の場合は出血ではないことも多いです。

次に、出血のタイミングも重要な情報です。排便時にのみ出血する場合と、排便とは関係なく出血がある場合では、考えられる疾患が異なります。

いぼ痔(内痔核)からの出血

いぼ痔、医学的には内痔核と呼ばれる疾患は、肛門出血の最も一般的な原因の一つです。無症状の方に対しても診察すると比較的頻度が高くいぼ痔を指摘することができ、有病率としては30-50%程度とされています。

内痔核からの出血には、以下のような特徴があります。

  • 鮮やかな赤色の出血
  • 排便時に「シャーッ」と出血することが多い
  • トイレットペーパーに付着する程度から、便器の水が赤く染まるほどの量まで様々
  • 通常は痛みを伴わない
  • 排便後に肛門から何かが出てくる感覚(脱出感)を伴うことがある

内痔核は肛門内の静脈が拡張してできるもので、便秘や下痢、長時間のいきみなどが原因で発症します。特に硬い便が通過する際に、拡張した静脈の表面が傷つき出血することが多いのです。

切れ痔(裂肛)からの出血

切れ痔、医学的には裂肛と呼ばれる疾患も、肛門出血の主要な原因です。国内のガイドラインでは11%程度の頻度で切れ痔になると言われています。裂肛からの出血には、以下のような特徴があります。

  • 鮮やかな赤色の出血
  • 排便時に鋭い痛みを伴う
  • トイレットペーパーに付着する程度の少量の出血が多い
  • 排便後もしばらく痛みが続く
  • 肛門が狭くなっている感覚がある

裂肛は、肛門管の粘膜が裂けてできる傷のことです。硬い便や下痢を排出する際に肛門に不可がかかるが過度に伸展されることで発生することが多く、排便時の強い痛みが特徴的です。

痛みのために排便を我慢してしまうと便秘になり、さらに硬い便となって裂肛を悪化させるという悪循環に陥りやすいのが特徴です。

3.痔以外で考えられる肛門出血の原因疾患

肛門出血というと多くの方が「痔だろう」と自己判断してしまいがちですが、実は痔以外にも様々な疾患が原因となることがあります。中には早急な対応が必要な重篤な疾患もあるため、注意が必要です。国内のガイドラインでは、痔と診断するためには、大腸カメラで以下のような疾患でないことを確認することが必要とされており、肛門科医であっても肛門診察だけでは痔を診断することができません。

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大腸がん・大腸ポリープ

大腸ポリープや大腸がんも、肛門出血の原因となることがあります。これらの疾患からの出血には、以下のような特徴があります。

  • 鮮血または暗赤色の血液
  • 便に血液が混じることがある
  • 粘液を伴うことがある
  • 通常は痛みを伴わない
  • 便が細くなる、残便感がある、便通異常などの症状を伴うことがある

特に40歳以上の方で、痔のような症状がないにもかかわらず肛門出血がある場合は、大腸 直腸がんの可能性も考慮する必要があります。

また、2024年のアメリカ消化器病学会のガイドライン改定では、検査の質を担保するために45歳以上では42%以上の方で大腸ポリープが見つかるように検査することが推奨されています。日本では大腸がん検診に大腸内視鏡検査が組み込まれておらず、症状があれば積極的に検査を行うことが重要となります。

国内の健診データでも、便潜血検査陽性だった方について、痔があると自分で思っているかどうかと大腸内視鏡検査で大腸がんが発見される確率に違いがないことが報告されています。つまり、自分では大腸がんからの出血か痔からの出血かを判断することができないわけです。

大腸憩室出血

大腸憩室とは、大腸壁の一部が外側に袋状に飛び出した状態のことです。この憩室から突然大量の出血が起こることがあります。大腸憩室出血の特徴は以下の通りです。

  • 突然の大量出血(便器が真っ赤になるほど)
  • 通常は痛みを伴わない
  • 暗赤色から鮮紅色の血液
  • 繰り返し出血することがある

大腸憩室は加齢とともに増加する傾向があり、日本人の23%が大量出血の場合は緊急処置が必要となることもあるため、大量の血便を認めた場合は速やかに医療機関を受診してください。

突然の下痢と出血が症状として出ることが多く、緊急での内視鏡検査が必要な場合も多いです。

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虚血性腸炎

大腸の血流が一時的に低下することにより、炎症や潰瘍が生じる病気です。 主な症状は腹痛、下痢、血便で、動脈硬化や便秘による腹圧の上昇が原因とされていますが、若い方にも多い疾患です。

基本的には外来で経過観察することで改善する疾患ですが、憩室出血と区別がつかないことも多いので、緊急で大腸内視鏡検査を行うこともあります。

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)

潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患も、肛門出血の原因となることがあります。これらの疾患からの出血には、以下のような特徴があります。

  • 血液と粘液が混じった便(粘血便)
  • 下痢や腹痛を伴うことが多い
  • 発熱や体重減少などの全身症状を伴うことがある
  • 若年層に多い

炎症性腸疾患は、腸管の慢性的な炎症を特徴とする疾患で、遺伝的要因や環境要因、免疫系の異常などが関与していると考えられています。完治は難しいものの、適切な治療によって症状をコントロールすることが可能です。

ポイントとして、10代や20代など、若い方に多い疾患です。また、先述したように潰瘍性大腸炎としての治療を行わないと症状が改善しないため、若い方であっても、肛門からの出血が続く際は大腸内視鏡検査で診断することが非常に重要になります。

4.肛門出血を見つけたときの正しい対処法

肛門から出血を認めた場合、どのように対処すべきでしょうか。出血の状況によって対応が異なりますので、以下のポイントを参考にしてください。

緊急受診が必要な場合

以下のような場合は、緊急で医療機関を受診する必要があります。

  • 大量の出血がある(便器の水が真っ赤になるほど)
  • 出血が止まらない

先ほどご説明した憩室出血や虚血性腸炎などの緊急で大腸内視鏡検査が必要な場合もあります。

早めの受診が望ましい場合

以下のような場合は、緊急ではないものの、早めに医療機関を受診することをお勧めします。

  • 少量でも繰り返し出血がある
  • 出血に加えて痛みがある
  • 40歳以上で初めての肛門出血
  • 便通異常(便秘や下痢)を伴う
  • 体重減少や食欲不振などの全身症状がある

特に40歳以上の方の肛門出血の場合は、大腸がんの可能性も考慮して、大腸内視鏡検査などの精密検査を受けることが重要です。昔から同様の症状があるといって放置していて、実際は大腸がんがあるというケースは非常に多いため、繰り返す場合はかならずご相談ください。

5.肛門出血の診断方法

肛門出血の原因を特定するためには、適切な診断が必要です。肛門科医はどのような方法で診断を行うのでしょうか。

問診と視診

まず、医師は詳細な問診を行います。出血の状況(量、色、タイミングなど)や、痛みの有無、便通の状態、既往歴などを確認します。これらの情報から、考えられる疾患をある程度絞り込むことができます。

次に、肛門周囲の視診を行います。外痔核や裂肛、痔ろうの外口などが確認できることがあります。また、肛門周囲の皮膚の状態や、炎症の有無なども確認します。

指診と肛門鏡検査

肛門内部の状態を確認するために、指診(肛門内に指を挿入して触診する検査)と肛門鏡検査(専用の器具を用いて肛門内部を直接観察する検査)を行います。

指診では、肛門括約筋の緊張度や、内痔核、腫瘤などの有無を確認します。また、指を抜いた際に血液が付着しているかどうかも重要な情報となります。

肛門鏡検査では、肛門管内部を直接観察し、内痔核や裂肛、ポリープなどの有無を確認します。出血部位を特定できることもあります。

内視鏡検査

肛門出血の原因が肛門部だけでは特定できない場合や、大腸疾患が疑われる場合には、大腸内視鏡検査を行うことがあります。大腸内視鏡検査では、肛門から大腸全体を観察することができ、ポリープや炎症、腫瘍などの有無を確認できます。

当院では、鎮静剤を使用した苦痛の少ない大腸内視鏡検査を行っています。検査中に眠っている状態で検査を受けることができるため、痛みや不快感を感じることなく安心して検査を受けていただけます。

また、検査中にポリープが見つかった場合は、その場で切除することも可能です。早期大腸がんであっても、内視鏡的に切除できる場合があります。

6.肛門出血の治療法

肛門出血の治療法は、原因となる疾患によって異なります。ここでは、主な疾患ごとの治療法について解説します。

いぼ痔(内痔核)の治療

内痔核の治療は、症状の程度によって異なります。軽度の場合は、生活習慣の改善や薬物療法が中心となります。

  • 生活習慣の改善:便秘の解消、十分な水分摂取、食物繊維の摂取、適度な運動など
  • 薬物療法:坐薬、軟膏、内服薬など
  • ジオン注射(ALTA療法):内痔核に薬剤を注射して硬化・縮小させる治療
  • 手術療法:結紮切除術(LE)など

当院では、患者さんの症状や希望に合わせて最適な治療法を提案しています。特に日帰り手術(ジオン注射や結紮切除術)にも対応しており、入院の必要なく治療を受けることが可能です。

切れ痔(裂肛)の治療

裂肛の治療も、症状の程度によって異なります。

  • 生活習慣の改善:便を柔らかくする、排便習慣の改善など
  • 薬物療法:軟膏、坐薬、内服薬など
  • 手術療法:難治性の場合は側方皮下内括約筋切開術など

裂肛は適切な治療を行えば治癒する疾患ですが、慢性化すると治療が難しくなることがあります。早期の受診と適切な治療が重要です。


7.肛門出血を予防するための生活習慣

肛門出血の多くは、日常生活の中での予防が可能です。特に痔による出血は、適切な生活習慣によって予防・改善できることが多いのです。

便通の管理

便秘や下痢は、肛門疾患の大きな原因となります。規則正しい排便習慣を身につけることが重要です。

  • 十分な水分摂取:1日2リットル程度の水分を摂りましょう
  • 食物繊維の摂取:野菜、果物、全粒穀物などを積極的に摂りましょう
  • 規則正しい食事:決まった時間に食事をとることで、腸の働きを整えましょう
  • 適度な運動:ウォーキングなどの軽い運動は腸の働きを活発にします

また、便意を感じたら我慢せずにトイレに行くことも大切です。便意を我慢すると、便が硬くなり排便時の負担が増えます。

一方で、生活改善のみでの便秘コントロールには限界があります。内服治療を行うことに対して強い罪悪感を感じるかたも多いですが、便秘を放置することで痔だけでなく、生活の質を落とすこと、将来の心血管疾患の発症、パーキンソン病や腎疾患の発症リスクを増やすことが知られています。生活習慣の改善は重要ですが、コントロールできない場合は内服治療を積極的に行いましょう。

トイレでの注意点

トイレでの姿勢や習慣も、肛門疾患の予防に重要です。

  • 長時間のいきみを避ける:いきむと肛門周囲の血管に負担がかかります
  • 適切な姿勢:前かがみの姿勢で、リラックスして排便しましょう
  • トイレでのスマホ使用を控える:長時間座ることで肛門周囲の血流が悪くなります
  • 清潔を保つ:排便後は優しく拭きましょう。赤ちゃんのおしりふきでトイレに捨てられるタイプのものもあるので、必要に応じて使うようにしましょう。ウォシュレットは皮膚炎の原因となるため、毎回使うことはさけて、使う際は水圧を下げたるようにしましょう。、必要に応じてビデやウォシュレットを使用しましょう

特に洗浄については、過度に行うと肛門周囲の皮膚を傷めることがあります。優しく洗い、清潔を保つことが大切です。

生活習慣の改善

その他、以下のような生活習慣の改善も肛門疾患の予防に効果的です。

  • 適正体重の維持:肥満は肛門周囲の血管に負担をかけます
  • アルコールの過剰摂取を避ける:アルコールは血管を拡張させ、出血リスクを高めます
  • 辛い食べ物の過剰摂取を避ける:辛い食べ物は肛門を刺激し、痛みや出血を悪化させることがあります
  • ストレスの管理:ストレスは腸の動きに影響を与えます

これらの生活習慣の改善は、肛門疾患だけでなく、全身の健康にも良い影響を与えます。日常生活の中で少しずつ取り入れていきましょう。

8.まとめ:肛門出血を見つけたら

肛門からの出血は、多くの場合は痔などの良性疾患が原因ですが、中には大腸がんなどの重篤な疾患が隠れていることもあります。特に40歳以上の方で初めての出血の場合は、大腸がんの可能性も考慮して専門医による診察を受けることが重要です。

出血の特徴(色、量、タイミングなど)や、痛みの有無、便通の状態などから、ある程度原因を推測することができますが、正確な診断のためには肛門科医専門医による適切な検査が必要です。逆に、大腸カメラだけでは出血の原因検索を行うことはできず、肛門鏡も大腸内視鏡検査も扱う肛門科受診を行うことが重要です。

当院では、肛門疾患の診断から治療まで一貫して行っています。鎮静剤を使用した苦痛の少ない大腸内視鏡検査や、日帰り手術にも対応しており、患者さんの負担を最小限に抑えた治療を提供しています。

肛門出血でお悩みの方は、ぜひ一度当院にご相談ください。経験豊富な肛門科医専門医が、あなたの症状に合わせた最適な診断・治療を提案いたします。

肛門の健康は、生活の質に大きく影響します。早期発見・早期治療で、快適な日常生活を取り戻しましょう。

詳しい情報や診療予約については、辻仲つくば 胃と大腸内視鏡・肛門外科クリニックのウェブサイトをご覧ください。経験豊富な専門医が、あなたの肛門の健康をサポートいたします。


【作成・監修】
辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科クリニック
院長 森田 洋平
 ・日本消化器内視鏡学会専門医

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