【医師監修】14100人のアンケート調査から分かった5つの胃内視鏡検査への不安。つくばの内視鏡専門医が答えます。|辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科クリニック|茨城県つくば市の大腸・肛門外科 消化器内科 内視鏡検査

〒305-0032 茨城県つくば市竹園1-4-1 南3パークビル2階
つくば駅から徒歩5分の大腸・肛門外科 消化器内科 内視鏡検査

トピックス TOPICS

診療時間
9:00~11:30
14:00~16:30

休診日:日曜、祝日
※予約がなくても外来診察をいたしますが、予約していただかない場合は、受付も含めて大幅にお待たせしてしまうことがあります。
※診察医師の希望がある場合は、担当医表をご確認のうえ電話でご予約ください。予約がない場合は、医師の希望をお受けできないことがあります。
※午前・午後とも初診を受け付けております。
※NEWSにて担当医表のご案内をしております。

【医師監修】14100人のアンケート調査から分かった5つの胃内視鏡検査への不安。つくばの内視鏡専門医が答えます。


辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科クリニック院長の森田です。
胃内視鏡検査は、胃の病気の早期発見に非常に重要な検査です。
しかし、「苦しい」「痛い」といったイメージから、検査をためらってしまう方も少なくありません。
実際に、オリンパス社が2024年に行った14,100人を対象とした最新のアンケート調査でも、多くの方が胃内視鏡検査に対して様々な不安を感じていることが明らかになっています。
このブログ記事では、アンケート調査で明らかになった胃内視鏡検査への主な不安を一つひとつ丁寧に紐解き、その不安を解消する方法について、専門医が詳しく解説します。
当院では、患者様が安心して検査を受けられるよう、無痛内視鏡検査やAI活用など様々な工夫を凝らしています。
検査の必要性を感じながらも一歩踏み出せずにいる30代〜60代の健康意識が高い方々へ、検査への疑問や不安を解消し、安心して検査を受けていただくための一助となれば幸いです。



1. 「胃カメラがスムーズに喉を通るのか、苦しいのではないか」という不安の解消法

胃内視鏡検査を受ける際、最も多くの方が抱える不安が「胃カメラが喉を通る際の苦痛」ではないでしょうか。14,100人のアンケート調査でも、実に39.1%の方がこの不安を挙げています。特に過去に胃内視鏡検査の経験がない方では43.8%と、その不安はより顕著です。

1-1. なぜ胃カメラは苦しいと感じるのか?そのメカニズム

胃カメラ検査で「苦しい」と感じる主な原因は、内視鏡が喉を通る際の嘔吐反射です。
これは、異物が喉に触れることで体が異物を排出しようとする自然な防御反応であり、多くの人が経験するものです。
また、内視鏡が食道や胃を通過する際に、圧迫感や違和感を覚えることも苦痛に繋がることがあります。
特に若い方は反射が強く、かなり苦しく感じる方が多いです。

1-2. 当院が実践する「無痛」内視鏡検査への取り組み

当院では、患者様に安心して検査を受けていただくために、徹底した「無痛」への取り組みを行っています。

  • 鎮静剤の使用: 検査前に鎮静剤を使用することで、ウトウトとした状態で検査を受けていただけます。これにより、嘔吐反射を抑え、喉を通る際の不快感をほとんど感じることなく、リラックスして検査を受けることが可能です。鎮静剤の量や種類は、患者様の状態やご希望に合わせて専門医が適切に判断し、調整します。
  • 経鼻内視鏡の選択肢: 経口内視鏡が苦手な方には、鼻から挿入する経鼻内視鏡も選択肢としてご提案しています。経鼻内視鏡は、舌の付け根に触れにくいため、嘔吐反射が起こりにくいという特徴があります。会話も可能なため、検査中に医師とコミュニケーションを取りたい方にも適しています。

運転などの兼ね合いで鎮静剤を使えないという方以外は、基本的には鎮静剤を用いるほうがよいと個人的には考えています。
経鼻内視鏡検査は、口からの検査よりも楽かもしれませんが、全く苦痛ではないという方は限られていると感じます。

1-3. 超個人的な内視鏡の苦痛への思い

不安にするために言っているわけでは全くありませんが、私自身、24歳で初めて内視鏡検査を行った後に、上司から「自分が検査するんであれば、検査の苦しさを経験したほうがよい」と言われて内視鏡検査を受けました。(今はこれが許される行為なのかは不明ですが、当時は一般的でした。研修医同士でやるという時代もあったようなので、それよりは人道的でした。)
その時の衝撃は今でも忘れられません。
つまり、今でものどに違和感を感じるイメージが残っています。
私が医者でなければ、絶対に内視鏡を引き抜いたと確信しています。
それ以来、鎮静剤は使わなくても問題ないという医者を信用しないことにしています。
鎮静剤を使用しなくても辛くない人がいるという意見には同意しますが、だから鎮静剤がなくてもよいというのは明確に間違っています。
わたしは、鎮静剤を使わない検査を受けてくれている方には感謝しながら検査を行っています。
それぐらいつらいです。
この部分が不安で胃内視鏡検査を受けることをためらう方がいるのであれば、鎮静剤を使うことを強く推奨します。
ほとんど方は、これから検査をするのだと思ったら終わっていたとおっしゃいます。
鎮静剤を使わない方について、これを対策と言ってよいかはわかりませんが、先程述べたように、こんなにつらい検査を受けてくれてありがたい、健康について不安なんだなと考えながら検査を行うようにしています。
オエッとしてしまうことについて苛立ちを隠せない医者も多いと思いますので、そのような態度にならないように気をつけています。
もちろん、鎮静剤を使う方に、鎮静剤使って検査してやっているというつもりは全くなく、すべての診療行為について、普通に人間としてリスペクトして検査を行っています。


2. 「検査中に嘔吐反射等が起こってつらいのではないか」という懸念の解消法

胃内視鏡検査における二番目に多い不安は、「検査中の嘔吐反射」です。アンケート調査では36.8%の方がこの不安を抱えており、特に過去に内視鏡検査の経験がない方では41.7%と、高い割合を占めています。嘔吐反射は、検査をためらう大きな要因の一つと言えるでしょう。

嘔吐反射は、喉の奥にある咽頭反射が刺激されることで起こります。胃カメラが喉を通る際、この反射が強く出てしまうと、患者様は吐き気やえづきを感じ、非常に苦痛を伴います。したがって、基本的には一つ目と同じ原因による不安と思われます。

やはり、鎮静剤などの活用が重要であると考えられます。
当院では、90%以上の患者さんが鎮静剤を用いた内視鏡検査を選択しています。
鎮静剤を使った内視鏡検査が通常の内視鏡検査と認識される日が待ち遠しいです。

3. 「検査中ののどや鼻を傷つけたり痛みがあるのではないか」という不安への対応

胃内視鏡検査における3番目の不安として、20.8%の方が「検査中ののどや鼻を傷つけたり痛みがあるのではないか」と回答しています。特に過去に内視鏡検査経験がない方では24.9%と、その不安は高まります。

3-1. 粘膜損傷のリスク

内視鏡検査は、体内に医療機器を挿入する医療行為であるため、そういった粘膜損傷のリスクが全くリスクがないわけではありません。
したがって、懸念としてあがっている、のどや鼻を傷つけたり痛みがあるのではないか?という疑問はもっともだと思います。
実際、2016年の日本消化器がん検診学会からの報告では、胃内視鏡検査による鼻出血や粘膜裂傷の合併症は10万人あたり、78人であり、胃内視鏡の合併症のほとんどはのどや鼻の損傷と言えます。
経鼻内視鏡と経口内視鏡との区別がなされていないので難しいところですが、経鼻内視鏡での鼻出血はかなり高頻度におきますが、ほとんどは押さえれば止まります。
のどの損傷については、肉眼的に問題があるものはほとんどないと思いますが、稀に披裂軟骨脱臼など、喉頭の軟骨の脱臼も報告されます。

3-2. 当院での対策

鼻出血について:
当院でも経鼻内視鏡検査を行っています。
通常使用しているような前処置である、点鼻薬、潤滑剤、局所麻酔などを行っていますが、鼻出血は比較的よくおこります。
鼻からの内視鏡検査については、その時の鼻のむくみ具合などにより、入ったり入らなかったり、痛みの具合が変わったりすることもあるので、以前入った場合でも鼻から内視鏡が入らないことがあります。
粘膜裂傷などにならないように、無理をして挿入しないようにしています。
この場合は、口からの挿入に切り替えることになります。
鎮静剤を用いて鼻からの検査を希望した場合に、口からに切り替えることが難しいことが多いため(当院の鎮静剤は他と異なり、本当に寝てしまうので)、鎮静剤を使う場合は口からの検査をおすすめしています(鎮静剤を用いた場合も鼻からの検査も選択はできます)。

のどの損傷について:
個人的には披裂軟骨脱臼というレベルの損傷は経験していません(そのような合併症のときに私に相談にいらっしゃっていないだけで、知らないところでそのような合併症をおこしているのかもしれませんが)。
しかしながら、検査後にのどが痛いとおっしゃる方は一定数いらっしゃいます。
そのような場合でも基本的には鎮痛薬を用いれば数日で改善します。


2016年日本消化器がん検診学会より


4. 「X線バリウム・内視鏡検査のどちらが自分に適しているのかよく分からない」という疑問の解決

胃の検査には、バリウム検査と内視鏡検査の2種類があり、どちらが自分に適しているのか迷う方も少なくありません。アンケート調査では19.4%の方がこの疑問を抱えており、特に過去に内視鏡検査経験がない方では26.5%と、高い関心が見られます。

 

4-1. バリウム検査と内視鏡検査、それぞれの特性と限界

胃の検査には、X線バリウム検査と胃内視鏡検査の二つの主要な方法があります。それぞれの検査には特性があり、得意なことと不得意なことがあります。

X線バリウム検査(胃X線検査)
  • メリット: 検査時間が比較的短く、内視鏡を挿入する苦痛がないため、手軽に受けやすいと感じる方がいらっしゃいます。

  • デメリット: バリウムを飲んで撮影するため、胃の形状を大まかに把握することはできますが、粘膜の表面を直接観察することはできません。そのため、微細な病変や粘膜の色調変化、炎症の有無などを正確に診断することが困難です。特に、ピロリ菌除菌後の方や、ピロリ菌に感染したことがない方(ピロリ菌未感染者)の胃がんは、胃炎を伴わない平坦なタイプや、ごく早期の病変が多く、バリウム検査では発見が非常に難しいことが指摘されています。これらの胃がんは、通常のバリウム検査では見落とされやすく、内視鏡でしか見つけられないことがほとんどです。病変の組織を採取して詳しく調べる「生検」ができないため、精密な診断が必要な場合は、結局内視鏡検査が必要になります。放射線被ばくも伴い、検査後に下剤の服用が必要です。また、ピロリ菌感染を疑う萎縮性胃炎を指摘された場合にも、胃内視鏡検査を行わないとピロリ菌検査が行えない点や食道がほとんど観察できない点も課題です。

胃内視鏡検査(胃カメラ)
  • メリット: 細いスコープを挿入し、胃の内部の粘膜を医師が直接、詳細に観察できる点が最大のメリットです。これにより、早期の胃がんや食道がん、胃潰瘍、胃炎、ポリープなどの微細な病変を高い精度で発見できます。疑わしい病変があれば、その場で組織を採取し、病理検査によって確定診断が可能です。また、一部のポリープはその場で切除することもできます。当院では、最新のAI技術を搭載した内視鏡システムを導入しており、通常の内視鏡検査では見落とされがちな微細な病変や、色の変化をAIがリアルタイムで検出し、医師に提示することで、胃がんの早期発見率を飛躍的に向上させています。

  • デメリット: 内視鏡を挿入する際の苦痛を伴う場合があります(当院では無痛化に注力しています)。

4-2. 個人的なおすすめ

個人的には、当院のような鎮静剤を適切に用いる施設で検査を行うのであれば、バリウム検査を行うメリットはほとんどないと考えています。
胃内視鏡検査が一般的ではなかった時代において、効率よく胃の検査を行う必要があった時代にはバリウム検査には価値があったと思いますが、食道がんの検出力、早期胃がんの検出力など根本の部分で、バリウム検査は胃内視鏡検査に及ばず、統計上も胃癌による死亡率抑制効果が低いことが示されています。
特に食道の観察については、バリウム検査ではほとんど観察することができません。
また、バリウム検査では8.5%の確率で要精査となり、内視鏡検査が必要になりますが、その中で胃癌が見つかる可能性はわずかに2%しかなく、結局は胃内視鏡検査を前提とした検査です。
バリウムによる便秘で当院に受診する方も多いです。
痛みの少ない胃内視鏡検査が可能な現在では、胃内視鏡検査を行うことを私としてはお勧めします。
運転などで鎮静剤使用をためらうケースもあると思いますが、当院の場合は基本的には6時間後から運転可能としているため、午前中に胃内視鏡検査を行い、昼食をとって、少し休んで近隣の商業施設で買い物して帰宅するなどで、現実的には運転での移動は可能と思われます。

当院での鎮静剤使用後の運転制限について詳細

5. 「検査中に食道や胃を傷つけたり、痛みが出るのではないか」という心配への対策

胃内視鏡検査へ不安について、18.2%の方が「検査中に食道や胃を傷つけたり、痛みが出るのではないか」と回答しています。
これは3番目の不安とも関連が深く、内視鏡検査に対する根本的な安全性への懸念を示唆しています。
実際には胃がん検診のデータでは死亡数は0となっており、胃内視鏡検査は比較的安全な検査と言えます。

5-1. 内視鏡検査における重大な合併症のリスク

食道や胃を傷つける(穿孔)などの重大な合併症は極めて稀ですが、このような不安を抱くことは当然のことです。
しかしながら、先程の胃がん検診のデータによると穿孔例は1例もなく、通常は起こり得ない合併症と考えてよいと思います。
もちろん、可能性がゼロとは言いませんが、過度な心配で検査をしないことの弊害のほうが大きいといえるでしょう。
また、胃や食道の粘膜が多少傷ついたぐらいでは痛みが出ることはありません。
痛みを感じる神経がそのレベルには存在しないためです。
特に胃については、かなり厚いので、何かがおこることはほとんどありません。
一方で、検査で空気をいれることでお腹がはったり、内視鏡で胃壁が押される感じがつらいというのは、鎮静剤を使わない場合必ずおこる状態です。
この点において、経鼻内視鏡でも経口内視鏡でも違いはまったくないと言えます。

5-2. 当院の対応

個人的には、胃や食道が傷ついて後遺症が残るであったり、痛みの原因となるといった経験がないため、どのような状態でそうなるのかが想定しがたいので、答えづらいところです。
病変を認めて、組織を採取する処置(生検)を行った場合に、出血のリスクが増えるとは思うので、不要な組織採取を抑えるのは重要だと考えています。
胃がん検診マニュアルでは15%程度の生検率を目指すように記載されていますので、その程度の生検率になるように、不要な組織採取がないように心がけています。
また、検査終了時に空気を吸うなどでお腹の張り感が残らないように気をつけています。
最も重要なのは鎮静剤の仕様の有無だと思います。
痛みは記憶と関連することが多いため、そもそも検査自体で痛かった記憶がないようにするということが重要です。
当院で鎮静剤を用いると、ほとんどのかたは「これから検査すると思った」と仰ることが多いです。
それぐらい痛みの記憶もないので、鎮静剤を用いることでこれらの不安も解消されるように思います。

 

6. まとめ

胃内視鏡検査は、胃がんをはじめとする様々な病気の早期発見に不可欠な検査です。
「苦しい」「痛い」といった不安から検査をためらっていた方も、当院の「無痛」内視鏡検査と専門医による丁寧な検査で、安心して受けていただける環境を整えています。
特に、個人的な経験からものどが辛いというのは非常に強く共感します。
また、近年のピロリ菌感染率や除菌率の変化に伴う胃がんの種類の変化なども考えると、バリウムが適する人はほとんどいません。
そのようなことから、私のおすすめは鎮静剤を用いた口からの内視鏡検査です。
なおかつ、当院と同じ方法での鎮静による検査です。

当院は、つくば駅からアクセスしやすい好立地にあり、日帰りでの検査が可能です。お忙しい方でも、仕事帰りや買い物のついでに気軽に立ち寄っていただけます。

つくば市をはじめ、土浦市、牛久市、つくばみらい市、常総市、石岡市、阿見町、守谷市、龍ケ崎市のみならず、茨城県外も含めて広い地域から多くの患者様が来院されています。胃の不調や健康診断で異常を指摘された方、胃がん検診をご希望の方は、ぜひ一度ご相談ください。

【作成・監修】 辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科クリニック 院長 森田 洋平(日本消化器内視鏡学会 専門医)


参考:
日本内視鏡学会 胃がん検診を受けようと思っていますが、バリウムと胃カメラ、どちらの方が良いですか? 
胃・大腸がん検診と内視鏡検査に関する意識調査白書2024
2016年日本消化器がん検診学会