
大腸がん検診は50代に推奨される理由〜検査方法と受診の重要性
大腸がんは日本人のがん死亡原因において、女性で1位、男性で2位と非常に高い位置を占めています。
特に40歳代から発症率が上昇し始め、50代になると罹患リスクが本格的に高まります。この年代は仕事や家庭、親の介護など人生で最も多忙な時期ですが、実は健康管理において最も重要な「検査のゴールデンタイム」でもあるのです。
今回は、なぜ50代に大腸がん検診が推奨されるのか、どのような検査方法があるのか、そして無症状でも定期検診が重要な理由について解説します。
目次
50代で大腸がんのリスクが高まる理由
大腸がんは40歳代から発症率が上昇し始め、年齢が高くなるほど罹患率が高くなる傾向があります。
日本では1年間に約15万人から16万人が大腸がんと診断されており、40歳を過ぎると年齢とともにがん死亡者数は増えていきます。近年では食生活の変化なども影響し、大腸がんの低年齢化の傾向も見られるため、決して他人事ではありません。
50代は、大腸がんのリスクが本格的に上がり始める年代です。この時期にこそ、ご自身の体を守る「投資」としての健康管理が必要になります。

大腸がんの多くは良性ポリープから進行する
大腸がんの多くは、「腺腫(せんしゅ)」という良性のポリープから時間をかけてがんへと進行します。
このポリープの段階、あるいはごく早期のがんの段階で見つけて切除できれば、体への負担が少ない治療で根治が可能です。つまり、40代、50代の時点で一度検査を受けることが、将来のがんリスクの芽を摘むために極めて重要なのです。
50代に推奨される大腸がん検査方法
大腸がん検診には、主に「便潜血検査免疫法」と「全大腸内視鏡検査」の2つの方法があります。
便潜血検査免疫法(推奨グレードA)
便潜血検査は、便中の血液を調べる検査です。便の表面を専用の器具で擦りとり、便中に含まれるヒトヘモグロビンを測定します。検査前の食事制限や薬剤制限は不要で、大腸がん検診として国際的に広く用いられています。
本邦では1992年より「便潜血検査免疫法(2日法)」によるがん検診が対策型検診として開始されています。便潜血検査による大腸がん検診により大腸がんの死亡が減少することが世界各国の複数のランダム化比較試験で示されており、現在使用されている便潜血検査免疫法の感度が以前より大幅に向上したことが明らかになっています。
対象年齢は男性、女性とも40歳以上で、毎年の検診が勧められています。身体への負担が少なく、来院せずに受けられる検査ですので、対象となった方は毎年欠かさず受けていただくことをお勧めします。

全大腸内視鏡検査(推奨グレードC)
全大腸内視鏡検査は肛門から内視鏡を挿入し、直腸から回盲部までを観察します。わが国では便潜血検査陽性者の精密検査として用いられており、検診としては人間ドックなどのオプション検査として導入されています。
全大腸内視鏡検査は腸管内を直接観察でき、治療も実施できます。がんが大腸粘膜の表面(粘膜内か粘膜下層の浅い部分)に留まっていれば内視鏡で完全に切除することが可能です。大腸内視鏡検査では診断から小病変の治療まで幅広く行えるため、大腸がんを疑う場合は第一選択となる検査です。
ただし、排便を促すための前処置として腸管洗浄剤や下剤を服用する必要があります。全大腸内視鏡検査は死亡率減少効果を示す科学的根拠はありますが、証拠の信頼性が低いことから、現状では対策型検診で実施しないことが推奨されています。
無症状でも定期検診が重要な理由
大腸ポリープや早期の大腸がんは、ほとんどの場合、血便や腹痛といった自覚症状がありません。
症状が出てからでは、進行がんとなっている可能性が高くなります。仕事や子育てが忙しく「まだ若いから大丈夫」と思っている方でも、症状のない40代・50代のうちに検査を受けることが、最も効果的な「がん予防」となります。

早期発見・早期治療による根治の可能性が高い
大腸がんの多くは、良性のポリープから時間をかけてがんへと進行します。このポリープの段階、あるいはごく早期のがんの段階で見つけて切除できれば、体への負担が少ない治療で根治が可能です。
つまり、40代、50代の時点で一度検査を受けることが、将来のがんリスクの芽を摘むために極めて重要です。大腸カメラは、がんを「早く見つける」検査ではなく、がんを「未然に防ぐ」検査なのです。
特に注意が必要な方
以下に当てはまる方は、リスクが高まるため特に注意が必要です。
- 自覚症状がある方
- ご家族に大腸がんの既往がある方
- 便潜血検査で陽性になった方
- 以前にポリープ切除を行った方
これらに該当する方は、より積極的に検査を受けることをお勧めします。
便潜血検査が陽性となった場合の対応
便潜血検査が陽性となった場合でも、まだ「大腸がんの可能性がある」という段階で大腸がんの診断が確定したわけではありません。
診断のため精密検査を受けていただく必要があります。精密検査には全大腸内視鏡検査、大腸CT検査があります。便潜血検査を定期的に受診し、陽性になった場合には必ず精密検査を受けることで、大腸がんによる死亡がさらに減少すると考えられます。

全大腸内視鏡検査の流れ
検査前日は、夕食まで摂っていただいて大丈夫ですが、繊維質の多い食事は避けるようにしましょう。前日の20時以降は固形物の摂取は避けていただきますが、水分(水、お茶、コーヒー(ミルクなし)、炭酸飲料など)は飲んでいただいて構いません。
検査当日の午前中に、腸管洗浄液および水分を約1.5L~2L飲んでいただき腸管の洗浄を行った後、午後から検査を行います。検査室では横向きに寝てもらい、内視鏡を肛門から大腸の一番奥の盲腸まで挿入し大腸全体を観察してきます。通常検査自体は20分程度で終わり、ほとんどの場合大きな苦痛はありませんが、軽い鎮静剤、鎮痛剤を使用しながらの検査も可能です。
大腸CT検査という選択肢
出来るだけ身体への負担を減らして検査したい方は大腸CT検査も選択肢となります。下剤を服用して前処置をした後、肛門からCTC専用の炭酸ガスをゆっくり注入し、大腸を膨らませた状態でCT(X線による全身の断層画像)を撮影します。
炭酸ガスは腸管から速やかに吸収されますので腹満感もすぐに改善します。身体への負担は少ないため、大腸がんスクリーニング検査として大腸内視鏡検査に抵抗のある方にも受けていただけますが、大腸に腫瘍が見つかった場合は病理検査で確定診断をつける必要があるため後日内視鏡検査を受けていただきます。
まとめ〜50代こそ大腸がん検診を受けるべき理由
50代は、大腸がんのリスクが本格的に上がり始める「検査のゴールデンタイム」です。
この時期にこそ、ご自身の体を守る「投資」としての健康管理が必要です。早期大腸がんは、自覚症状がありません。症状が出てからでは手遅れになる可能性があります。今、「まだ大丈夫」と先延ばしにすることが、数年後の後悔に繋がってしまうかもしれません。
大腸カメラは、がんを「早く見つける」検査ではなく、がんを「未然に防ぐ」検査です。1回の検査で、将来のがんを防げる可能性がある、それが大腸カメラです。
「怖い」「恥ずかしい」「つらそう」。そんな気持ちは、誰もが持っています。しかし、一度の検査で「がんになる芽」を摘み取り、安心して今後の人生をお過ごしになれるよう、私たちがそのお手伝いを全力でさせていただきます。
もし迷っている方がいらしたら、大切なご自身とご家族のために、勇気を出して一歩を踏み出してください。

【作成・監修】
辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科クリニック
院長 森田 洋平(日本消化器内視鏡学会 専門医、MPH(公衆衛生大学院))
MPHは予防医学、疫学、統計のスペシャリストの学位です。大腸がんの予防的なデータを実践するスペシャリストといえます。