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大腸カメラ検査前日の食事が検査の質を左右します
大腸カメラ検査を受ける際、前日の食事内容が検査の精度に大きく影響することをご存知でしょうか?
私は日本消化器内視鏡学会専門医として、これまで25,000件を超える大腸内視鏡検査を行ってきました。その経験から、前日の食事準備が不十分だと、腸内に残渣が残り、病変の発見率が著しく低下してしまうことを実感しています。特に大腸ポリープや早期がんの発見においては、腸内をきれいな状態にしておくことが極めて重要なのです。
実際、米国消化器病学会が2024年に改定したガイドラインでも、大腸内視鏡検査の質を決める重要な因子として「大腸がどの程度きれいになっているか」が明記されています。検査することが目的ではなく、検査により病変を見つけて治療することが目的である以上、検査の準備をしっかり行うことが不可欠です。
この記事では、大腸カメラ検査前日に何を食べるべきか、何を避けるべきかについて、専門医の立場から詳しくご説明します。
なぜ前日の食事制限が必要なのか
大腸カメラ検査前に食事制限が必要な理由は明確です。
腸内に便や食べかすが残っていると、内視鏡のカメラで腸内を観察する際に視界が悪くなり、小さなポリープや早期がんを見落としてしまう可能性が高まります。また、残渣が多いと検査時間が長引き、患者さんの負担も増えてしまうのです。

私の臨床経験からも、前日の食事準備がしっかりできている患者さんは、検査がスムーズに進み、より精度の高い検査結果が得られることが多いです。特に大腸がんの約86%は、ポリープの段階で切除することで予防できるとされています。そのためには、微細なポリープも見逃さない高精度な検査が必要なのです。
検査前日の食事で最も重要なのは「低残渣食」と呼ばれる、腸にカスを残しにくい食事を心がけることです。消化されずに残った食物が大腸内に留まってしまうと、内視鏡のレンズが食べ物によって汚れたり、視界を妨げたりすることがあります。
前日に食べて良いもの〜消化に良い食材の選び方
検査前日には、消化が良く腸内に残りにくい食材を選ぶことが大切です。
主食におすすめの食材
白米のおかゆや食パン、うどんなどの消化の良い炭水化物が適しています。白米は日本人の胃腸に最も適した食材の一つです。特におかゆにすることで消化吸収がさらに良くなります。パンを選ぶ場合は、食物繊維の少ない食パンが適しています。
そばやラーメン、パスタは消化に時間がかかるため避けましょう。
おかずにおすすめの食材
卵料理(ゆで卵、スクランブルエッグ)、白身魚(たら、かれいなど)、鶏ささみなどの脂の少ない部位、絹ごし豆腐、じゃがいもやにんじん(よく煮込んだもの)などが適しています。
これらの食材は消化が良く、腸内に残りにくいという特徴があります。調理法としては、油を使わずに茹でる、蒸す、軽く煮るなどの方法がおすすめです。味付けは塩やだし、少量のしょうゆなど、薄味にすることも大切です。

スープ類のおすすめ
具を細かくしたコンソメスープや、具なし(または細かく刻んだ豆腐やにんじんなど)の味噌汁も良いでしょう。水分も多く摂れるので、腸内環境を整えるのに役立ちます。
ただし、海藻やきのこ、豆類などの具材は避け、シンプルな具材で作ることが重要です。
前日に避けるべき食材〜残渣を残しやすい食品
検査の精度を高めるために、以下の食材は前日から避ける必要があります。
食物繊維の多い食品
野菜類(特に葉物野菜、根菜の皮)、海藻類(わかめ、ひじき、昆布など)、きのこ類全般、こんにゃく、豆類(納豆、枝豆など)は、消化されずに腸内に残りやすいため避けましょう。
普段健康に良いとされる食物繊維ですが、大腸内視鏡検査前には少量でも消化しないため要注意です。
種や皮のある食べ物
果物の種(スイカ、メロン、イチゴ、キウイなど)、トマトの種、ごま、ナッツ類などは腸内に残りやすいため避けてください。バナナやリンゴを食べる場合は、皮を完全に除去する必要があります。
脂っこい食べ物や揚げ物
脂質は消化に時間がかかります。揚げ物、天ぷら、フライ、唐揚げ、脂身の多い肉(牛バラ肉、サーロイン肉、ベーコン、ホルモンなど)は避けましょう。
肉や魚を食べる場合は、脂肪分の少ない白身魚や鶏ささみなどの淡白なものを選ぶことが大切です。

乳製品
牛乳、ヨーグルト、チーズ、バター、クリームなどの乳製品は、腸内に被膜を作り、検査の精度を下げる可能性があるため避けましょう。
検査3日前からの準備〜当日の準備がご不安な方へ
検査の時の下剤や準備がとても心配な方については検査前日だけでなく、3日前からの準備をご提案します。
便秘がちな方や、以前の検査で野菜や種が残っていた方は、検査の3日前から食物繊維の多い食品を控えることをおすすめします。脂肪分の多い食品や油っぽい食事も、3日前から控えることで、腸内の清潔度が向上します。
検査3日前の食事ポイント
脂肪分の多い食品や油っぽい食事を控えましょう。高繊維の食品(野菜の皮、果物の種、穀物の外皮)を避けましょう。肉や魚の皮、筋などの固い部分を取り除きましょう。アルコールやカフェインの過度な摂取も控えることが望ましいです。
ただし、完全に絶食する必要はありません。消化の良い食材を選んで、通常量を食べていただいて問題ありません。
前日の具体的な食事メニュー例
実際にどのような食事を摂れば良いのか、具体例をご紹介します。
朝食の例
白米のおかゆ、ゆで卵、白身魚の塩焼き、具なし味噌汁などがおすすめです。パン派の方は、食パン(バターやジャムは控えめに)、スクランブルエッグ、コンソメスープなどが良いでしょう。
昼食の例
うどん(具は少なめ)、白米と鶏ささみの蒸し物、豆腐の味噌汁などが適しています。消化の良い炭水化物とタンパク質を中心に、シンプルな調理法で準備しましょう。
夕食の例
検査前日の夕食は20時までに済ませてください。白米のおかゆ、白身魚の煮付け、絹ごし豆腐、よく煮込んだにんじんなどが理想的です。
当院では、検査食もご用意しておりますので、食材選びに悩む方はぜひご利用ください。基本的には検査食を使われる方が多いです。

飲み物について〜水分補給の重要性
検査前日の水分補給は非常に重要です。
飲んで良い飲み物
水、お茶、紅茶(ミルクなどを含まない)、スポーツドリンクは自由にお飲みいただけます。大腸カメラ検査では、腸内をきれいにしておく必要があるため、積極的に水分を摂ってください。
前日の20時以降も、水やお茶、スポーツドリンクは飲んでいただいて構いません。
避けるべき飲み物
アルコール類は前日から控えてください。牛乳、ヨーグルト飲料、果肉入りジュース、野菜ジュース、スムージーは避けましょう。コーヒーについては、ミルクや砂糖を加えずにブラックで飲む分には問題ありませんが、前日は控えめにすることをおすすめします。
検査当日の注意点
検査当日の朝は、何も食べずにご来院ください。
水やお茶、スポーツドリンクは検査開始の2時間前まではお飲みいただけます。ただし、アルコールは厳禁です。少量でも検査に影響があります。
下剤の服用について
当院では、患者さんの体質やご希望に合わせて数種類の下剤をご用意しております。院内にはプライバシーに配慮した下剤服用スペースを完備しており、検査開始時間も柔軟に対応しています。
下剤服用中は、排便を促すために歩いていただくので、楽な服装、歩きやすい靴でご来院ください。
お薬について
内服している薬のある方は、通常通りに服用していただいて構いません。ただし、インスリンをはじめとする糖尿病治療に対する薬は、検査当日朝の内服・使用を中止してください。詳しくは事前の診察時にご説明いたします。
辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科の特徴
当院では、患者さんの負担を最小限に抑えた大腸内視鏡検査を実施しています。
鎮静剤を使用することで、半分眠ったようなぼんやりとした状態で、リラックスしたまま検査を受けられます。検査後は専門のリカバリールームでしっかりと休んでからお帰りいただけます。
高精度な検査技術
当院では、光の波長を変えて腸粘膜の表面や色調がはっきり見える「画像強調」を導入しています。また、最新のAIシステムを導入したことで、これまで見つけるのが難しかった微細な早期がんや炎症、その他の病変なども、より高い精度で発見できるようになりました。
無送気軸保持短縮法と呼ばれる検査方法を採用し、腸粘膜への負担や痛みの軽減に努めております。この方法は、大腸の走行を邪魔することなくチューブが挿入できる検査方法であり、安全性が高く、患者さんの苦痛が少なく済みます。
日帰りポリープ切除
検査時にポリープが見つかった場合は、その場で日帰りポリープ切除も可能です。ポリープのない状態を作ることで、大腸がんを約86%予防することが可能とされています。
お仕事などが忙しくて通院が難しい方や、負担の少ない検査をご希望の方はお気軽に当院までご相談ください。
まとめ〜安心して検査を受けるために
大腸カメラ検査前日の食事は、検査の精度を大きく左右する重要な準備です。
消化の良い食材を選び、食物繊維の多い食品や脂っこい食べ物を避けることで、腸内をきれいな状態に保つことができます。白米のおかゆ、うどん、白身魚、卵、豆腐などの低残渣食を中心に、シンプルな調理法で準備しましょう。
前回の検査などの経緯や便秘症状が強く、検査準備がご不安な方については、検査3日前から準備を始めることで、より精度の高い検査が可能になります。水分補給も忘れずに、積極的に水やお茶を飲んでください。
当院では、経験豊富な日本消化器内視鏡学会専門医が検査を担当し、鎮静剤を用いた苦痛の少ない内視鏡検査を実施しています。女性医師も在籍しており、患者さんの体質や希望に合わせて選べる下剤もご用意しております。
つくば駅から徒歩5分という便利な立地で、つくば市内だけでなく、つくばエクスプレス沿線や茨城県全域から多くの患者さんが来院されています。大腸カメラ検査をご希望の方は、ぜひ一度当院までご相談ください。早期発見・早期治療が、あなたの健康を守ります。
