痛みのない血便は危険?専門医が教える正しい対処法|辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科クリニック|茨城県つくば市の大腸・肛門外科 消化器内科 内視鏡検査

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痛みのない血便は危険?専門医が教える正しい対処法

1.血便を見つけたときの正しい考え方

トイレで血を見つけると、誰でも不安になるものです。「痔だから大丈夫」と自己判断してしまう方も多いですが、それは危険な考え方かもしれません。血便には様々な原因があり、中には早期発見・早期治療が重要な疾患が隠れていることもあります。

私は消化器内視鏡専門医として多くの患者さんを診てきましたが、血便を放置したために治療が遅れてしまうケースを何度も目にしてきました。特に痛みのない血便は要注意です。

血便というと、多くの方は「痛み」を伴うものだと想像されるかもしれません。しかし、実際には痛みを伴わない血便も存在します。痛くない血便は、内側のいぼ痔(内痔核)など比較的軽度の疾患によることが多いですが、中には大腸がんやポリープ、潰瘍性大腸炎など、早期発見・早期治療が重要な疾患が隠れているケースも少なくありません。

「痛くないから大丈夫」「そのうち治るだろう」といった自己判断は非常に危険です。むしろ痛くない血便のほうが、大腸がんなどからの出血である可能性が高まります。

2.血便の種類と考えられる原因疾患

血便は色や状態によって、考えられる疾患が異なります。まずは血便の種類を理解しましょう。

鮮血便は、鮮やかな赤い色の血が便に付着しているもので、痔、切れ痔、直腸ポリープ、直腸がんなどが考えられます。一方、暗赤色便は、暗い赤色あるいは黒っぽい色の血が便に混ざっているもので、大腸がん、大腸ポリープ、潰瘍性大腸炎、大腸憩室出血などが考えられます。

痛みのない血便の原因となる主な疾患には、以下のようなものがあります。

痔(内痔核・裂肛)

血便の最も多い原因は痔です。痔には大きく分けて「いぼ痔」と「切れ痔」があります。

内痔核の主な症状は出血で、基本的に痛みはありません。排便時に鮮やかな赤い色の血がトイレットペーパーや便器に付着する程度のことが多いです。内痔核は時間の経過とともに大きくなることもあり、場合によって肛門から脱出することもあります。通常、痛みは伴いません。

一方、切れ痔(裂肛)は肛門が裂けた状態で、鋭い痛みと紙につくくらいの真っ赤な出血が特徴です。ときには便器が真っ赤になるような出血になることもあり、びっくりされる方も多いです。便が硬くて切れ痔になったり、下痢の負担により切れ痔になる場合もあるので、軟膏だけでなく、便を軟らかくする排便コントロールも必要になります。切れると聞くと必ず痛いと思われがちですが、必ずしも痛くないことも多いです。

また、正確には痔とはちょっと違うのですが、血栓性外痔核と呼ばれる、肛門の周りの皮膚に血豆ができてしまうことがあります。これが破裂することで多量に出血することがあります。

大腸ポリープ・大腸がん

大腸ポリープは大腸の粘膜にできる突起物の総称で、出血していても痛みを感じることは少ないです。目に見える出血をする大腸ポリープは、大腸がん一歩手前の大きなポリープであるかもしれません 。この段階でも痛みを伴わない血便になります。

大腸がんは早期には自覚症状がないことが多く、ある程度進行すると血便が出ることがあります。特に肛門に近い直腸がんでは痔の出血と見分けがつかないほど真っ赤な血が出ます。逆に肛門から遠い盲腸などのがんでは、真っ赤な出血よりも、便の中に血の塊が混ざり込んでいるような見た目になったり、便全体が少し赤みがかっている程度で気付きにくくなります。

炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)

潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患も血便の原因となります。これらは腸に原因不明の炎症が起こる病気で、血便や下痢、残便感などの症状が現れます。若年層に多く見られ、慢性的に症状が続くことが特徴です。

3.痛みのない血便は要注意!

血便を見つけたとき、特に注意が必要なのは痛みを伴わない血便です。なぜなら、痛みがないために軽視されがちですが、実はより深刻な病気のサインである可能性があるからです。

痛みを伴わない血便の代表的な原因は内痔核ですが、大腸ポリープや大腸がんも痛みを伴わないことが多いのです。特に直腸がんは肛門に近いため、痔からの出血と勘違いされやすく、その見分けは専門医でなければ難しいことがあります。

私の臨床経験では、「痔だと思って放置していたら大腸がんだった」というケースを何度も見てきました。特にガイドラインを参考に、50歳以上の方で痛みのない血便がある場合は、一度専門医による検査を受けることをお勧めします。若い方でも不安がある方はご相談してください。

実際には、ガイドラインと異なり、世界的に、若年層(特に40歳未満)での大腸がん発症が増えていることが報告されています。大腸内視鏡検査へのアクセスが限られているイギリスでは、進行がんとして見つかるケースが多く、社会問題として取り上げられています。若いからといって大腸がんを否定できない事実があるのです。このように、ガイドラインは基本的に50歳以上を重視していますが、近年の若年発症の増加傾向は十分反映されていない部分もあります。

報告によると、大腸がんは早期に発見できれば、ステージIの5年相対生存率は約98%と非常に高く、治療後は大腸がんを発症していない人とほぼ同じように生活できることが期待されます。一方で、大腸を超えてがん細胞が広がった進行例(Stage IV など)では、生存率は約23%にまで下がってしまいます。

あなたは「ちょっとした血便くらいで病院に行くのは大げさでは?」と思われるかもしれません。しかし、命に関わる可能性のある病気の早期発見のチャンスを逃してしまうリスクを考えると、一度の検査で安心を得る価値は十分にあるのです。

大腸憩室出血という可能性も

痛みのない血便の原因として、近年増加しているのが大腸憩室出血です。大腸憩室とは、大腸の壁の一部が外側に小さな袋状に突出したもので、加齢や慢性的な便秘により腸内の圧力が高まると憩室ができやすくなります。

大腸憩室出血の特徴は、突然の血便(鮮やかな赤色の出血)であり、痛みをほとんど伴わずいきなり出血が起こる点です。腹痛などの前触れがなく、トイレの水が真っ赤に染まって初めて気づくケースもあります。

多くの場合この出血は自然に止まりますが、一度止まったように見えても再び出血することがあり、実際に約3割の患者さんは1年以内に再出血を起こすとのデータがあります。まれにですが、大量出血して血圧が下がりショック状態に陥ることもあり、緊急の処置が必要になるケースも報告されています。

4.血便を見つけたときの正しい対処法

血便を見つけたとき、どのように対処すべきでしょうか。まずは冷静に状況を確認し、適切な行動をとることが重要です。

緊急受診が必要なケース

以下のような症状がある場合は、緊急で医療機関を受診してください。

  • 大量の出血がある(トイレが真っ赤に染まるなど)
  • 出血とともに強い腹痛がある
  • 出血に加えて、めまい、立ちくらみ、冷や汗、動悸などがある
  • 黒い血便(タール便)が出る

これらの症状は、大腸憩室出血や虚血性大腸炎、上部消化管出血など、緊急性の高い疾患の可能性があります。特に大量出血は命に関わることもあるため、迷わず救急車を呼ぶか、緊急外来を受診してください。

早めに受診すべきケース

緊急ではなくても、以下のような場合は早めに医療機関を受診することをお勧めします。

  • 痛みのない血便が続く
  • 50歳以上で初めて血便を認めた
  • 便潜血検査で陽性と言われた
  • 血便に加えて、便通の変化(便が細くなる、便秘と下痢を繰り返すなど)がある
  • 原因不明の体重減少や貧血がある

これらの症状は大腸がんなどの可能性もあるため、消化器内科や肛門外科、大腸肛門科などの専門医を受診することが望ましいです。

自己対処できるケース

以下のような場合は、まず自己対処を試みても良いでしょう。

  • 排便時の痛みを伴う少量の出血で、明らかに肛門からの出血と分かる場合(切れ痔の可能性)
  • 過去に痔と診断されたことがあり、同じような症状が出ている場合

切れ痔(裂肛)の場合、硬い便により肛門の皮ふが限界以上に伸ばされ裂けてしまう傷ができます。この場合は、食事や生活習慣の改善、便通のコントロールが基本的な対処法となります。

肛門周囲を清潔に保つ、下痢・便秘を起こさないようにする、患部周辺を温めるなどの対処を行い、4〜5日で症状が改善することが多いです。しかし、症状が続く場合や悪化する場合は、医療機関を受診してください。

5.血便の検査・診断方法

血便の原因を特定するためには、適切な検査が必要です。どのような検査が行われるのか見ていきましょう。

問診・視診・触診

まず医師は、血便の状態(色、量、頻度など)や、他の症状(腹痛、排便習慣の変化など)について詳しく質問します。また、肛門の視診や触診を行い、痔などの肛門疾患がないかを確認します。

肛門の診察は恥ずかしいと感じる方も多いですが、適切な診断のためには重要な検査です。専門医はこのような診察を日常的に行っていますので、安心して受診してください。女性の方は女性医師の診察を希望することもできます。

内視鏡検査

血便の原因を特定するためには、内視鏡検査が最も確実な方法です。大腸内視鏡検査(大腸カメラ)では、肛門から細いカメラを挿入し、大腸全体を観察します。ポリープや炎症、がんなどの病変を直接確認することができます。

「大腸内視鏡は痛い」というイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、現在では鎮静剤を使用した苦痛の少ない検査が一般的です。私たちのクリニックでも鎮静剤を使用した検査を行っており、多くの患者さんは「思ったより楽だった」と言われます。

また、上部消化管からの出血が疑われる場合は、胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)も行われることがあります。

その他の検査

状況に応じて、以下のような検査が行われることもあります。

  • 血液検査:貧血の有無や炎症反応などを調べます
  • 便検査:便潜血検査や感染症の有無を調べます
  • CT検査:腫瘍や炎症の範囲を調べます
  • 注腸X線検査:バリウムを大腸に注入してX線撮影を行い、大腸の形や病変を調べます

これらの検査を組み合わせることで、血便の原因を正確に診断することができます。

6.血便の原因別治療法

血便の原因が特定できたら、それに応じた適切な治療を行います。主な疾患の治療法を見ていきましょう。

痔(内痔核・外痔核・裂肛)の治療

内痔核の治療は、軽症であれば生活習慣の改善や薬物療法(坐薬や軟膏)で対応します。症状が強い場合や薬物療法で改善しない場合は、ゴム輪結紮術や硬化療法などの日帰り手術、あるいは入院での手術治療を行います。

切れ痔(裂肛)の治療は、まず便を柔らかくする薬や痛み止め、軟膏などの薬物療法を行います。慢性化している場合や、薬物療法で改善しない場合は、肛門の括約筋を切る手術(側方皮下内括約筋切開術)などを行うことがあります。

大腸ポリープ・大腸がんの治療

大腸ポリープは、内視鏡検査で発見されたその場で切除することが多いです。大きさや形状によっては、別日に処置を行うこともあります。

大腸がんの治療は、がんの進行度(ステージ)によって異なります。早期がんであれば内視鏡的切除が可能ですが、進行がんの場合は手術、抗がん剤治療、放射線治療などを組み合わせて治療を行います。

炎症性腸疾患の治療

潰瘍性大腸炎やクローン病などの炎症性腸疾患は、完全に治すことは難しいですが、薬物療法で炎症をコントロールすることができます。5-ASA製剤、ステロイド、免疫調節薬、生物学的製剤などを使用します。症状が重い場合は入院治療が必要になることもあります。

大腸憩室出血の治療

大腸憩室出血は多くの場合、自然に止血します。出血が続く場合は、内視鏡的止血術や血管造影による止血術、手術などを行うことがあります。緊急で内視鏡検査が必要になることもあります。

また、再発予防のために食物繊維を多く含む食事や十分な水分摂取を心がけ、便秘を予防することが重要です。

7.血便予防のための生活習慣

血便の原因となる疾患を予防するためには、日常生活での心がけが重要です。以下のポイントを意識して生活習慣を改善しましょう。

食生活の改善

食物繊維を多く含む食品(野菜、果物、全粒穀物など)を積極的に摂取しましょう。食物繊維は便のかさを増し、腸の働きを整えるのに役立ちます。また、水分を十分に摂ることも大切です。

一方で、辛い食べ物や刺激物、アルコールの過剰摂取は控えましょう。これらは腸を刺激し、症状を悪化させることがあります。

排便習慣の改善

便意を感じたらなるべく我慢せず、トイレに行きましょう。また、トイレでいきむことは肛門に負担をかけるため、力まずリラックスして排便することを心がけましょう。

排便後は、肛門周囲を清潔に保つことも重要です。トイレットペーパーでゴシゴシこするのではなく、やさしく押さえるようにしましょう。可能であれば、ウォシュレットや温水で洗浄するとより清潔に保てます。

定期的な健康診断

40歳以上の方は、年に1回は便潜血検査を含む健康診断を受けることをお勧めします。便潜血検査は、目に見えない微量の血液も検出できるため、早期の大腸がん発見に役立ちます。

また、50歳以上の方や、大腸がんの家族歴がある方は、定期的な大腸内視鏡検査も検討してください。

適度な運動

適度な運動は腸の働きを活発にし、便秘の予防に役立ちます。ウォーキングや水泳など、自分に合った運動を継続的に行いましょう。

8.まとめ:血便を見つけたら専門医に相談を

血便は痔だけでなく、様々な疾患が原因となる可能性があります。特に痛みのない血便は、大腸がんなどの重大な病気のサインかもしれません。

血便を見つけたら、自己判断せずに専門医に相談することが重要です。早期発見・早期治療が可能な病気も多く、適切な対応で健康を守ることができます。

当院では、鎮静剤を使用した苦痛の少ない内視鏡検査や、専門的な肛門診療を行っています。血便でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

健康は何よりも大切な財産です。少しでも気になる症状があれば、恥ずかしがらずに医療機関を受診しましょう。

詳しい情報や診療予約については、辻仲つくば 胃と大腸内視鏡・肛門外科クリニックのウェブサイトをご覧ください。

【作成・監修】
辻仲つくば胃と大腸内視鏡・肛門外科クリニック
院長 森田 洋平(日本消化器内視鏡学会 専門医、MPH(公衆衛生大学院))

MPHは予防医学、疫学、統計のスペシャリストの学位です。大腸がんの予防的なデータを実践するスペシャリストといえます。
【参考文献】
アルフレッサ ファーマ株式会社. 大腸がん通信 No.1 大腸がんってどんな病気?
ステージ別の5年相対生存率(ステージI:98.8%、ステージIV:23.3%)
https://www.alfresa-pharma.co.jp/general/daichogan/common/pdf/daichogan_01.pdf